第38話 ユーリカリア達の剣作り


 新たに作る剣について、カインクムは、メモをしておいた石板を確認した。



【ユーリカリアの剣】


 刃渡り 65センチ、刃幅 8センチ、柄 50センチ


【フェイルカミラの剣】


 刃渡り 90センチ、刃幅 3センチ、柄 40センチ


【シェルリーンの剣】


 刃渡り 70センチ、刃幅 4センチ、柄 25センチ


【ウィルリーンの剣】


 刃渡り 80センチ、刃幅 3センチ、柄 50センチ


【フィルルカーシャの剣】


 刃渡り 50センチ、刃幅 4センチ、柄 100センチ



 5人の依頼された剣のサイズを確認すると、それぞれの特徴が出ていた。


 ヴィラレットの剣については、ジュネスティーンの腰に付けていた剣を参考に作らせてもらったので、刃渡り 80センチ、刃幅 3センチ、柄 30センチとなっている。


(まあ、あれが、あったから、残りの連中は、自分の寸法に合わせてとか、自分なりに考えて寸法を出したのだろうな。 Aランクともなってくれば、一振りだけで、自分に合った寸法が、おおよそ、わかるのだろうな)


 カインクムは、石板に書かれた寸法を見つつ、どの剣から作ろうかと考えていた。


(昨日の様子からしたら、ユーリカリアの剣を先に仕上げる方がいいと思うんだがな)


 そう思いつつ、ユーリカリアの依頼の内容を確認する。


(刃幅8センチって、まあ、あの、ユーリカリアの腕もだが、男でもあんな筋肉質なのは、そうザラに居ないからな。 彼女なら、このサイズでも問題なく扱えるのだろうな。 だが、これは、様子を見てからにしたほうがいいだろう)


 カインクムは、5枚の石板を眺めている。


(ここは、ヴィラレットの剣と、ほぼ同じサイズのウィルリーンの剣から作ることにするか)


 そうと決まれば、次に作るのは、刃渡りが少し長めのフェイルカミラとなる。


 フェイルカミラの剣については、少し長めになることから、刃幅は、わずかに広げたほうが、良いだろうと商談の際に話をしている。


(ああ、他の連中は、刃幅が広いからな。 少し広めに作ってみて、刃幅が広がったことで、何か弊害が出ないか確認しておいた方がいいな)


 カインクムは、刃幅が広がったことで、製造上の問題が無いか確認をしつつ、作業を進めるつもりでいるのだ。


(そうなると、ユーリカリアには悪いが、ユーリカリアの剣が、一番最後になるな)


 カインクムは、表情を少し曇らせた。


 商談の際に、かなり、自分の剣を先に作れと言っていたことを思い出して、実際に作ってみたら、ユーリカリアの剣が一番最後になるとなってしまったと、本人が聞いたら、どう思うかと、その姿を想像して、カインクムは、表情を曇らせたのだ。


(これが、もう、数十本も、ジュネスの剣を作っていれば、ユーリカリアの剣を先に進めても良かったのだがな。 まだ、1本目ができた程度なんだ。 あれだって、偶然できたと言っても過言じゃないのだからな。 ここは、徐々に、サイズを変更していく必要があるだろう)


 カインクムは、自分自身、ジューネスティーンから教わった剣を、自分の頭の中で、今までの経験をもとに作ってしまったのだ。


 全てにおいてジューネスティーンの剣と同じものができたとは思ってない。


 本来であれば、ジューネスティーンの剣と自分の作った剣を比較して、それに見合った性能が出ているのかを確認する必要があるのだが、立場上、そう簡単にジューネスティーンと接触はできないのだ。


 そのためのユーリカリア達で、様々なデータを取るために、話をしたのだから、可能な限り、問題発生の芽は、減らしておきたいのだ。


 そうなると、完成しているヴィラレットの剣をベースに、その剣から枝分かれするように、徐々に変化をつけていくことで、剣の製作をスムーズに進めたいと考えたのだ。


「一番、剣には縁のなさそうな人の剣から、作ることになるな」


 カインクムは、一言呟くと、ウィルリーンのリクエストの書いてある石板を手に取った。




 カインクムは、ウィルリーンの剣を最初に作ると決めると、その後は、刃幅のほぼ同じで、少し長い、フェイルカミラのものを選択することになると思ったようだ。


 優先順位の基準が、刃幅となったら、ウィルリーンの後は、フェイルカミラとなる。


 その後は、刃幅が、1センチ広い4センチのものは、シェルリーンとフィルルカーシャの剣となるのだが、フィルルカーシャの剣は、柄が1メートルと長いので、後に回そうかと思っていたのだが、それは、柄の中に入る部分なので、後から補強することも可能なら、剣の部分は、ヴィラレットの剣と大差は無いなら、次に作るのは、刃渡りの短いフィルルカーシャの剣となる。


 それを作れば、シェルリーンの剣となり、最後にユーリカリアの刃幅8センチの剣となる。


 カインクムは、その刃幅の広さが気になったのだ。


(刃幅の広さは、焼き入れの際にどれだけ影響が出るか、分からないからな。 その前に刃幅4センチで、曲がりの様子を確認しておく。 その時の様子を確認しておいたら、刃幅の厚い剣でも、曲がりの方向性が見えてくるだろう。 いや、4センチと8センチでは、サイズが違いすぎるのか)


 3センチと4センチの刃幅なら、焼き入れの際の曲がり方に大きな影響は無いだろうと思われるのだ。


 多少、曲がりが弱い程度となるかと予測される。


 そう考えると、刃幅8センチとなったら、焼き入れの際に曲がり具合がどうなるのか気になったのだ。


(最初に実験をする必要があるのか)


 カインクムは、ユーリカリアの剣を作るとなったら、試す必要があるように思えた。


(いや、焼き入れの時に曲がることは曲がる。 その曲がり具合が、刃幅が広い分、曲がりにくい可能性があるのか。)


 カインクムは、少し考える。



(曲がり具合は、ダメだったら、もう一度、作り直してしまおう。 気に入らなかったら、その時は、店売りの剣として、販売してしまおう。 曲剣で刃幅8センチなら、直ぐに売れてしまうだろうな。)


 カインクムは、一般的な曲剣の刃幅だと思ったので、剣としては、直ぐに売れると思ったようだ。


 斬る剣というのは、叩くように使うのだ。


 ジューネスティーンのような細身の曲剣というのは、折れるという感覚があり、8センチ幅なら、一般的な曲剣と対して変わらないなら、一般的な冒険者でも、違和感なく買うことができると思えるのだ。


 だったら、ユーリカリアの剣を何本も作り直しても、その剣は直ぐに売ることは可能と思えるのだ。


 ならば、ユーリカリアの剣は、腰を据えて作っても良いと思たのだ。

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