第33話 ジュネス達との付き合い方
ユーリカリアが、嬉しそうに、ジューネスティーン達と付き合いを深める事を考えていると、カインクムが、申し訳なさそうに話しかける。
「あのー、嬢ちゃん達には申し訳ないんだが、ここでジュネス達の話を聞いた事は、外では話さないで欲しいんだ」
何事かと思ってカインクムを見るメンバー達に、カインクムはさらに話を続けるのだった。
「詳しくは話せないんだが、色々とあって、秘密にしている事がある。 それに俺も知らない何かも、かなり多いみたいなんだ。 だから、ここで今話した内容は、外では話さないでくれないか。 それと、ジュネス達にも、ここでの話は内緒にしておいて欲しいんだ」
「……」
ユーリカリアのメンバー達は、何事かと思って、一瞬、黙っているが、ユーリカリアとウィルリーンは、納得したような顔をしている。
「ちょっとな、訳あって、あの連中は、ここには来てない事になっているんだ。 その代わり、嬢ちゃん達には便宜を払うからよろしく頼む」
お互いを見るメンバー達が、そのうち、ユーリカリアに視線を向けた。
全員が、リーダーに判断を委ねると目で訴えていた。
「まあ、そう言った事なら、内緒にしておくよ。 その方が、私らにメリットも多そうだしな」
ホッと一息つくカインクムに、ユーリカリアは、自分達は、自分達だと思ったのか、カインクムの話をしなければ、こっちはこっちで、なんとでもやっていこうと考えたようだ。
「でも、こっちがジュネス達と接触するのは問題無いな。 もちろん、ここでの話は一切しないと言う条件でだ」
「ああ、それで構わない」
カインクムも了承すると、ユーリカリアは、ウィルリーンに、話はついたと言った感じで見た。
「そう言う事だ。 今日の魔法紋や魔法の話は絶対にするな。 お前が、一番ボロを出しそうだからな」
「ちぇっ、信用されてないのね。 私から魔法の話なんてしないわ。 私からは絶対にね」
ウィルリーンがそう言うと、ユーリカリアはジト目で、ウィルリーンを見た。
「お前、相手に魔法の事、話させるように誘導するつもりだろう」
そこまで言うと、ユーリカリアは、にやけた顔をした。
「お前さんは、魔法の事もそうだが、カミュルイアンと親交を深めなくて良いのかな」
それを聞いて、頬を赤くするウィルリーンだった。
「あまり、シュレに魔法の話を迫ったら、カミュルイアンの相手は、竿姉妹のシェルリーンに任せるか」
そう言われて、慌てるウィルリーンが、赤くした顔のまま、ユーリカリアに向けた。
「それとこれとは話が違います」
「まあ、どっちを優先するか、考えておく事だな」
「もう」
ユーリカリアは、ウィルリーンに意地悪な話をしたのだが、それについては、カインクム以外は理解できたようだ。
何だか良く分からない話をしている2人に、カインクムは話をまとめることにしたようだ。
「まあ、そこまで、こっちもとやかくは言わない。 だけど、あっちの魔法の嬢ちゃん、変な喋り方してたし、中々、本質は話さないだろうな。 ぶっちゃけ、その嬢ちゃんの魔法の話はよくわからなかったが、ジュネスが間に入ってくれたから出来るようになったんだ。 何言ってるのか分からない魔法の嬢ちゃんよりジュネスに聞いた方が話は早いかもな」
カインクムが、シュレイノリアやジューネスティーン達の話をしたのだが、前回の夕食の際に一緒の席についていたのは、ユーリカリアとフェイルカミラだったので、他の4人のメンバー達には、そんなものなのか程度に思ったような表情をした。
そんな様子を気にすることもなく、カインクムは話を続けるのだった。
「多分、あのジュネスも、かなり魔法について詳しいと思うぞ。 まぁ、これから先はあんた達次第だ。 頑張ってくれ。 それと、あんた等の剣は、急いで作る予定だが、ジュネス達の依頼があってな、だが、まだ荷物が届いてないんだ。 だから、今の所は時間が有るので、直ぐに取り掛かるが、その荷物が届いたら、そっちを優先しなきゃならないんだ。 なるべく速く取り掛かるが、その時は遅れるかもしれない。 その辺は分かっていてくれ」
ジューネスティーン達とカインクムの間には、何らかの取り決めがある事をユーリカリア達は聞いても、そうなのかと思ったような表情をしたが、それは仕方がないだろうと納得したようでもあった。
「ああ、分かってる。 出来たら教えてくれれば構わない。 皆んなもそれで良いな」
そんな中、ユーリカリアが、全員の意見を代弁するように答えてくれたので、メンバー全員が、ユーリカリアの話に頷いた。
「これからも、よろしく頼みます」
そう言ってユーリカリアが立ち上がると、メンバーがそれに続いた。
「それじゃあ失礼する」
「ああ、頑張れよ」
「それと、私とウィルリーンは、ご主人より多分年上だ。 若く見てくれてありがとうな」
そう言うと、ユーリカリア達は店を出て行った。
ドアを締めると、テーブルのカップを片付けていたフィルランカが、カインクムに話しかけた。
「ジュネスさんと一緒にいた、男の子のエルフも隅におけないのね」
そう言ってフィルランカは含み笑いをした。
カインクムには、何の事かと思って、フィルランカを見た。
「どういうことだ?」
カインクムの返事を聞いて、フィルランカは、笑いを堪えるのが苦しそうだ。
「だって竿姉妹って言ってたわよ。 エルフの男性事情って噂に聞いたことがあるけど、男性出生率が低すぎて、私たちのように、一夫一妻なんてことになったら、大半の女性エルフは夫婦になれないのよ。 だから、エルフの男性は、何人もの女性エルフを、妻として関係を持たないといけないって聞いたわ。 それも1日に何人もと関係するなんて当たり前のようなのよ」
フィルランカは、面白そうな表情でカインクムの顔を見ていた。
「ほーっ、ジュネスのところのエルフのにいちゃんと、今のエルフの2人は、もう出来てるんか。 あのエルフのにいちゃんは、大人しそうだったけど、エルフはエルフってことだったのかもしれないな」
フィルランカに言われて、カインクムも納得したといったように答えた。
「そう、エルフの男性は、とても強いみたいよ」
フィルランカは、カインクムにねだるような様子で答えた。
「ふーん」
「……」
無言になる2人だったが、フィルランカが、艶っぽい表情をした。
「ねえ、そろそろエルメアーナの妹か弟が居ても構わないと思いませんか?」
「……」
カインクムは、顔を赤くして、無言になってしまった。
「ねえ、私にも子供が居てもおかしくは無いのよ」
「いや、俺には孫と同じだから」
フィルランカは、娘のエルメアーナと同じ歳なのだ。
フィルランカに子供ができたとすると、自分の娘と同じ歳なのだから、その子供となったら、カインクムからしたら、孫の世代になってしまうのだ。
そう考えると、カインクムは、フィルランカに子供ができる事は考えられなかったのだ。
だが、そんなカインクムを見て、フィルランカが、寂しそうな表情を見せた。
「なんで? 私が嫌いなの?」
フィルランカは、寂しそうな顔をしたまま、上目遣いにカインクムを見た。
「そっ、そういうわけじゃない。 こんな歳の離れた夫の子供を産んだと思ったら、お前の親御さんだって」
カインクムは、額に脂汗を流し、顔を赤くして、慌てながら、フィルランカに答えるのだが、フィルランカは、罠にかかった獲物を見るような表情をした。
「何を言ってるんです。 私は孤児院の出身です。 親は、顔も名前も知りません。 そんな事に気を使う必要はないんですよ」
そう言われて、カインクムは、孤児院出身だった事を思い出したようだ。
「そうか。 ……。 そうだったな」
そう言って、カインクムは、何かが、吹っ切れたような表情をした。
「ところで、夕飯はどうなってる」
フィルランカは、カインクムの表情が変わった事から、何かを期待したようだ。
もう、それ以上、自分の思いを言う事はなく、カインクムに満面の笑みを向けた。
「ちゃんと、準備できてます」
フィルランカは、とても優しい表情と声で、カインクムに答えた。
「じゃあ、夕飯にしてくれ。 今日の夜は長くなりそうだからな」
そう言うと、カインクムは、店の奥に行くと、カインクムの話を聞いたフィルランカは、一瞬、戸惑ったような表情をするが、直ぐに、頬を少し染めて、嬉しそうにカインクムの後を追って、奥に行くのであった。
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