第31話 ジュネス達の技術


 ユーリカリアとウィルリーンが、ジューネスティーンから、カインクムが、色々、教えてもらった話を聞いていたフィルルカーシャが、何かを思い出したようだ。


 それに、さっき、試し斬りをさせてもらった、ヴィラレットの剣も、軽くて扱い易く、そして、切れ味が、今まで使った剣とは、圧倒的に違うことで、噂を思い出したのだ。


「そういえば、南の王国で、とてつもなく切れる剣を売っている店が有るって聞きました」


 それを聞いて、カインクムとフィルランカは、ドキッとしたようだ。


「何でも女性しか入ることの許されない店だとかで、男性が入って来ると凄い勢いで追い出される店だったとかで、その店の商品が欲しいなら、女性に頼めって言われている店だとか聞いたことがあります」


 フィルルカーシャは、気になっていた事を口にしてしまったのだが、カインクムもフィルランカも、表情を変えないようにと思っているのだが、引き攣った表情を直せずにいた。


 フィルルカーシャは、そんな2人の表情を気にする事なく話を進めるのだった。


「本当に斬れ味が違うって言ってましたから、機会が有ったら見に行ってみたいと思ってたんですけど、今日の試し斬りをさせてもらったら、もう、その店の剣も不要になってしまいましたね」


 フィルルカーシャが、そう言うと、思い当たる節があるカインクムが、横を向いて額に手を当てていた。


 座っているフィルランカも、誰のことか分かった様子で、引きつった笑顔をしているが、黙ったままでいた。


 そんな、フィルルカーシャの話に、フェイルカミラも、何かを思い出した様子で、噂話を聞いたことを話し始めるのだった。


「それ、私も聞いた事がある。 そこの鍛治職人って、なんか変な仮面というかマスクをかぶって、手袋や魔法職の帽子を被っているとか、どんなに暑い時でもそうしているとか、それで、絡んできた男達は、一瞬で殴り倒すとかで、男達から恐れられているとか。 その人が外を歩くと、男達が一斉に通りから引いていくらしいって聞いたわ。 店主の名前は、エルメアーナとかって言ったと思うわ」


 エルメアーナの名前が出てしまったことで、カインクムは、諦めたようだ。


 そのまま、ほったらかしていると、自分の娘の、とんでも無い噂を、黙って聞かなければならないと思ったようだ。


 カインクムが話に終止符を打つために口を挟む事にしたようだ。


「多分、その話の人物は、うちの娘だ」


 頭をかきながら、ぼやくようにカインクムが言うと、メンバー同士を見ていた目が、一斉に、カインクムに向いた。


 不味い事を言ってしまったと、フェイルカミラとフィルルカーシャが、口を押さえているので、カインクムは、全部を話しておいた方が良いと思ったのか、知っている事は、ユーリカリア達に話すことにしたようだ。


「その話も聞いた。 エルメアーナも、この剣の作り方を根掘り葉掘り聞いたらしい。 あいつの性格なら、聞いて直ぐに作った事だろうし、どうも、一緒にいる店長が、やり手の女性らしいから、かなり忙しいらしいぞ」


 カインクムの言葉にヴィラレットは自分が購入した剣を見た。


 それは、他のメンバー達にも伝染するようにヴィラレッとを見た。


 そんな中、ユーリカリアとウィルリーンだけは、何かを考えるような表情をしていた。


「それじゃあ、そのメチャクチャ切れるって、南の王国の剣もカインクムさんの剣も同じってことなのか」


 ユーリカリアが、額に手を当てながら、つぶやくように言った。


 ただ、フィルルカーシャとフェイルカミラは、親の前で、娘の変な噂話をしてしまったので、少し困ったような顔をしている。


 そんな2人にカインクムは、問題無いというように笑顔を向けたので、2人は、少し気が楽になったようだ。




 そこまで聞くと、ユーリカリアは、ヴィラレットの剣の外観から、ジューネスティーンの腰にあった剣に似ていたこと。


 そして、南の王国の、噂の斬れ味の鋭い剣の出どころが、カインクムの娘ということから、ジューネスティーンが絡んでいるだろうことが、ユーリカリアの頭の中で繋がったようだ。


(ジュネス達は、南の王国でギルドの高等学校を卒業した。 在学中にエルメアーナと接触していたと思って間違いなさそうだな。 それに、この前の話で、新人冒険者の世話をしたと言っていた。 刀も魔法も全ての出所は、ジュネスか、シュレかの違いだけけだ。 あのパーティーには、私達以上の能力があるってことだろう。)


 ユーリカリアの中で、ジューネスティーン達の顔が離れないようだ。


 ユーリカリアは、これから、ジューネスティーン達との付き合い方をどうするのかと考えると、かなり真剣な顔付きになってしまったようだ。


「これは、更に友好を深めておいた方が良さそうだな」


 ユーリカリアが考え込みながら呟くと、フィルルカーシャが声をかけてきた。


「リーダー、これを教えてくれたパーティーと、話をしてみたいですね。 かなり高度な技術や魔法を持っているわ。 それに、秘密にしていることはこれだけじゃ無いかもしれないし、見せてもらえたら、私達は、もっと強くなりそうですね。 一緒に行動するだけでも学ぶものは多いと思います。 どこのパーティーかわからないけど、友好を深めておいて損はないと思いませんか。」


「そうだな。 これは、私達にもチャンスなのかもしれないな。 また、夕食に誘う事にしよう」


 ユーリカリアは、これから先、ジューネスティーン達と、どう接していくか考えると、そこから引き出せる技術や情報が、かなり多いと思ったようだが、フィルルカーシャには、何でユーリカリアが、夕食に誘おうと言ったのか気になったようだ。


(何で、リーダーが、この誰だか分からない人たちを夕食に誘うことができるんだ?)


 フィルルカーシャは、まるで、この剣を考えた人も、カインクムに魔法を教えた人が、誰なのかわかっているようなので、それが不思議に思ったようだ。

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