第7話 試作の剣と、ユーリカリアのパーティー


 カインクムは、自分が作ろうとしている剣について、そのモニターとして頼む相手から、フォルボグを外すと、残ってくるのは、ユーリカリアのパーティーとなる。


 今日、ギルドで、冒険者の顔を一通り眺めてみたが、彼女達以上の腕の有りそうな冒険者は見当たらなかったのだ。




 ユーリカリアは、人種の居ないパーティーでは有るが、奴隷は居ないことと、ユーリカリアがドワーフだった事もあって、集まったメンバーは、エルフ2人、カメレオン系・ウサギ系・チーター系の亜人で、更には全員が女性なので、人属の居ない女性だけのメンバー構成になっている。


 その事もあって、フォルボグにセクハラまがいの対応をされる為、ユーリカリアのメンバー全員が、フォルボグを嫌っているのだった。


 ユーリカリアのパーティーは、エルフの副リーダーのウィルリーンが作ったパーティーであり、エルフとドワーフが結成したパーティーなので人属が入りたがらなかった事もあって、亜人が中心に構成されている。


 結成してから50年の月日が流れているので、何度かメンバーの出入りが合ったらしいが、帝国のギルドに活動拠点を登録した時は、ほぼ、今のメンバーだったと言われている。


 特に、このパーティーは、庶民からの依頼を優先して受けてくれる。


 たとえ一般的な依頼料より安い金額だったとしても、優先的に引き受けるようにする事から、人気の高いパーテイーとして帝国では有名になっている。




 リーダーのユーリカリアは、ドワーフの結婚相手が不男で年も離れており、村長の息子だった事を鼻にかけていた事が気に食わなくて、婚約が決まった時に村を出たと言われている。


 その逃亡中に、現在、副リーダーのウィルリーンと出会い、ウィルリーンから冒険者という仕事があると聞いて、村の追手から逃げつつ冒険者登録を行なって、ドワーフの国から脱出した。


 出会ったウィルリーンが魔法使いとして有能だったが、冒険者として一通りの武器の使い方に長けていた事で、ドワーフの国を出た後に、ウィルリーンに訓練され、冒険者の技を教えられて、その後の努力によって、一流の冒険者になれたのだ。




 ドワーフの国では、女子の出生率が低い。


 エルフの男性出生率程では無いが、女児が圧倒的に少ない種属である。


 その為、女児が誕生すると、女児の居る家同士で交換するように結婚させることが多い。


 しかし、場合によっては、生まれた子供が全て男児の家も有る。


 ユーリカリアの家も、ユーリカリアが産まれたことで、何処かの女児がいる家と婚約させるつもりだったのだが、ユーリカリアの住んでいた村の村長の家は男児しかおらず、最後の男児が誕生後、長く子供が出来ずにいたが、女児が生まれる前に夫人が亡くなってしまったので、困った村長はユーリカリアに目をつけた。


 村でも身分の高く無かったユーリカリアの父親と、ユーリカリアの当時の年齢が36歳(人なら18歳)と適齢期を迎えようとしていたので、自分の家に嫁がせる様、無理矢理に迫った。


 しかも、村長の長男の嫁として嫁ぐという事だった。


 村長の長男は、350歳(人なら45歳)と、年も離れていた。


 また、通常なら、娘が嫁ぐのではなく、娘の元に互いの男児を婿に入れるのが一般的なドワーフの常識から逸脱した話となったので、ユーリカリアの父親はその村長の依頼を断る。


 すると、村長は身分の低いユーリカリアの家族に対して強硬策に出た。


 そのため、父と兄弟は村長の手の者の闇討ちで殺されてしまった。


 そんな中ユーリカリアを不憫に思ったユーリカリアの母が、ユーリカリアを村から逃した。


 露頭に迷い、追手に迫られていたところにウィルリーンに助けられ、冒険者になって実力を上げれば生活できると教えられたので、ユーリカリアは、迷わず冒険者になった。




 出会った2人は、ドワーフの国の首都にあるギルドを目指して逃亡する。


 ギルドで無事に冒険者登録し、ウィルリーンの手持ちのお金でユーリカリアの装備を購入すると、ドワーフの国を出て北の王国を目指すことにした。


 その際に、ウィルリーンが、ユーリカリアに冒険者としての技術を教えることになる。


 武器について、ユーリカリアは、戦斧を選択したので、戦斧での戦い方を教えることになった。




 ウィルリーンのお金は、魔法を教えてもらった、元冒険者のお婆さんが装備と一緒に自分には不要だが、これからのお前に必要な物だと言って渡してくれたのだ。


 ただ、その際、渡してくれた師匠のお婆さんに言われた。


「このお金は生活費には絶対に使ってはならない。 人のために使いなさい」


 そう言って渡されたのだ。


 お婆さんは、そんなつもりではなく、そうでも言わなければ受け取らないと思ってそう言って渡したのだった。


 一般的に、お金は有れば使ってしまうもので、生活費に困れば少しだけ借りると言って、自分を納得させて、使うだろうと思って渡したのだろうが、ウィルリーンはお婆さんに言われた事を忠実に実行していた。


 ウィルリーンは、お婆さんが、ここまで見越して、お金を渡してくれたのだと思い、感謝して、ユーリカリアのギルドへの登録を行い装備を整えると、ドワーフの国を、2人で急いで出て、北の王国に向かったのだ。




 ウィルリーンは、母親の不遇な扱いに耐え、ユーリカリアは村長の弾圧から逃げ出した事から、人に対して強権を強いる人達を嫌っていることもあり、ルールすれすれとかマナー違反だが、ルールには触れなという手段を取らず、そういった事をするフォルボグのようなパーティーを毛嫌いしているのだ。


 ユーリカリアのパーティーは、その品性と女性だけという事と、2人のエルフの容姿も含めて、ユーリカリアのパーティーは、帝国内で人気のパーティーになっていた。

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