第1話 目覚め

 優しい光に誘われ、深い眠りから目を覚ました。ベッドの傍で見たことのない女性が1人立ってこちらを見ている。その人は大粒の涙を流しながら

「皇女様...。やっと..やっとお目覚めになられたのですね...」

と呟いた。

「...。おはよう。よく寝たわ。あなたは誰?」

と返事を返した。

「皇女様、記憶がないのですか?そんな、、、私は王女様にお仕えしているアマンダ・キンソンと申します。王女様は半年間眠り続けておられました。」

と答えた。


 ことの経緯はこうだ。

 半年前、お城で開かれたパーティーで飲んだシャンパンの中に毒が入っており口にした瞬間崩れ落ちるように倒れそのまま半年間眠り続けたままだったらしい。


アマンダは両親に目が覚めたことを報告すると言って部屋を出ていった。


その時、激しい目眩と共に吐血した。

一瞬ではあったがシャーロッテ・エリザベス・ブリジャートンの記憶が見えた。

それは幼い頃の記憶。

シャーロッテが1歳の時、腹違いの兄がシャーロッテをとてもとても可愛がっている様子だった。絵本を読み聞かせたり一緒に庭園でお散歩したりしていた。

「明るい笑顔ですごく可愛い」

そう心の中で呟いた。


コンコン

「王女様、失礼致します。アマンダです。王様、皇后様が参りました。」

返事をする間もなくドアが開き、入ってきた。

皇后はシャーロッテを見た瞬間に涙を流し抱きしめてくれた。しかし、王様は虫を見るような目つきで睨んできた。

シャーロッテの母、皇后は聡明で優しく、いつも侍従達にも気を配っているが、それに対して王様はシャーロッテのことをよく思っておらず、いつも空気のように扱うとアマンダ話してくれた。


「お父様、お母様、ご心配おかけして申し訳御座いません。もう大丈夫ですので心配なさらないでください。」

とシャーロッテは話した。皇后は

「本当にもう大丈夫?ゆっくり休んでくださいね。1週間後にシャーロッテの復活パーティーを開きましょう!」

と優しく微笑んでくれた。そして部屋を後にした。


「アマンダ。ごめんなさい。吐血してしまって...。このことは秘密にしておいて貰えますか?」

とこっそりと話した。アマンダは悲しそうな顔で分かりましたと承知してくれた。


それから数日後、食堂で王家一同が食事をする日が来た。この日の為に必死で家族関係を覚えた。朝目が覚めるとドレスに着替える。赤とシャンパンの色が綺麗なプリンセスタイプのドレスを身に纏い、鏡台の前に座る。何度見ても眩しすぎる美しさだ。綺麗に延びた少しウェーブのかかった金色に輝く髪、猫の目の水晶玉の様な透き通った紫とピンクのオッドアイ、スラッと通った鼻筋、陶器の様な白い肌。男女問わず見惚れてしまう美しさを持っている。準備ができ、部屋を後にした。

暫く廊下を歩くと大きな食卓の上にロウソクの付いた燭台と食器が並べられていた。シャーロッテ以外の王族は既に席に着いていた。

「遅れてしまい申し訳御座いません。皆様、ご機嫌よう。」

と教えてもらった通りに挨拶をした。すると

「ふん。目を覚ましたとは本当の事だったのね。良かったじゃない。」

と第2王妃“ケイト・シューヤ・ブリジャートン”が睨みながら発した。第2王妃の息子、第3王子“アレクサンドル・ティア・ブリジャートン”は優しく微笑んでくれた。皇后の息子、第1王子“チャーリー・シリウス・ブリジャートン”は明らかに面倒くさそうな顔をしていた。シャーロッテが席に着くと食事が始まった。対して期待はしていなかったが、第2王妃のケイトと第1王子のチャーリーはシャーロッテの事を嫌っているようだった。第3王子のアレクサンドルは記憶の中にあったシャーロッテを可愛がっていた人だと察した。

あっという間に食事が終わり、部屋に戻ると頭の中を整理した。


_____________________


城内はシャーロッテが目を覚ましたという話でもちきりだった。使用人は1週間後のパーティーの用意で大忙しだった。シャーロッテはそんな様子を部屋の大きな窓からボーッと眺めていた。

「元いた世界に未練とかないけど上手くシャーロッテのフリをして生活できるかな。」

と呟いた。この世界で生きていくにはシャーロッテとフリをして生活しなければ生き残れない。もし、シャーロッテじゃないとバレてしまえば魔女とされて火炙りの刑に処される。それはこの世界で目を覚まして直ぐにこの目で火炙りにされた人を見たのだから事実だ。何よりパーティーさえ上手く乗り切れば後の生活は安泰だ。

「やるかやらないかではなくやるしかないのだ。」

と心を奮い立たせた。


パーティー当日。

パーティー会場には既にたくさんの貴族が集結していた。

貴族達はそれぞれパーティーを楽しんでいた。賑やかな音楽にテーブルに並んだご馳走、会話を楽しんだ。しかし、そんな楽しい時間も束の間、侍従の声がホールに響き渡った。


「本日の主役であられるシャーロッテ・エリザベス・ブリジャートン、第1皇女様です。」

その声と共に黄金に光り輝く重く分厚い扉が開く。

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異世界転生したら嫌われ者の王女だった件について ここあたん @mei_shirayuki

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