11月10日
親友がいなくなる。
一番大事にしていた、一番今まで一緒にいた親友が。
美咲は前から体罰を受けていた。
養護施設に行くのだという。
私は離れたくない、と思った。
一緒にいたい。
でも離れたくなくても、私が離れなければ、美咲が今行かなければ、彼女はいづれ死んでしまうかもしれない。
そうなったらもっと悲しい。
だから笑顔でおくってあげなくてはいけない。
実は見てしまった。
美咲の日記を、ちょうど美咲がいなかったときに見てしまった。
たまたま彼女の部屋の本棚においてあって、このノートかわいいな、と思っただけだった。
それだけならまだよかったのだけれど、それが見てはいけないものだとはわからないまま、私はページをめくってしまった。
その日記は、苦痛の毎日で、楽しそうな毎日でもあった。
最初のほうは、とても楽しそうで、嬉しそうだった。
でも、ページを進めていくうちに段々と字に活気がなくなっていって、たまに血の跡が大量に残っているものもあった。
どうしてこんなに苦しかったのに、助けを求めていたのに、私は美咲に何もしてあげられなかったんだろう。
私は、
私は、息が苦しくて仕方がなかった。
彼女はたまに日記に詩を書いていた。
その詩は、とても美しくて、悲しくて、切なかった。
私はその日記が欲しくなった。
誰かに見せびらかすのではなく、その美しい日記を、詩を、私の手元に置いておきたい。
二度と会えなくなってしまうかもしれない前に。
美咲から、一枚の紙をもらった。
そこには、美咲のスマホの電話番号と、メッセージが書いてあった。
『愛してる、
いつまでも
ずっと忘れないよ』
冗談っぽい感じが、また美咲らしかった。
これからはたぶん、また独りぼっちに戻る。
頼る人がいなくなる。
唯一心が分かち合えて、相談していた人がいなくなる。
私はこれから誰に相談すればいいんだろう。
不安、だけど、頑張らなくてはいけない。
何を、と聞かれたら返答に困るけど。
日に日に増えていくあざを、私は見ていられなかった。
それでも美咲は笑顔だった。
私はその笑顔を見て元気をもらっていた。
だから私も、頑張らなくてはいけない。
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