第1章 特別です 08

「は〜い。お待たせ〜しました〜。」


声がしたと思うと、チャナの横に現れた黒髪の女性。


「ご用命に〜つき〜馳せ〜参じました〜」

「マモ?」

「チャナ〜お久しぶり〜ですね〜」

「呼ばれてきた…リエル様は考えてると言っていた…じゃあ…変換で…」


チャナはぶつぶつと考え込む。


「マモ。この子。」

「あらあら〜まぁまぁ〜流石〜リエル様ですね〜人類っぽいですね〜少し〜準備の〜お時間を〜下さい〜。」

「ん。」


チャナは考えをまとめ終えたのか、黙って様子を伺う。

1号はあっけに取られ泣き止み、ティアは女神がまた1柱増えたのだと、勝手に納得し、母の行動を見守る。


「1号。まずは謝罪。黙っていてごめんね。」


泣き止んだ1号の頬に触れる。


「でも1号も悪い。その考えは誤り。」

「え?」


言葉を発するという行為はリエルにとって何も意味を持たない。思考した段階で全てを理解してしまうのだから音として発せられようが、いまいが関係なかった。


「自分の考えは相手に伝わらない。言葉にしないと。」


これからは違うと、自分に言い聞かせるように。


「1号。私はあなたを置いて行くつもりはない。」


ティアの時は上手く出来なかった。これからはもっと難しい。


「私にはあなたが必要。」


相手の心に触れることを怖がってはいけない。

相手の考えがわからない中で、欲しい答えを導き出せるか。


「一緒に来て欲しい。」


今は精一杯言葉で伝えることしか出来ない。

けど、いつか…


「一緒に来てくれる?」


本当に寄り添えるように。

まずは大事な相手な思いを伝えることから始めよう。


「はい……はい……」


一度目は小さな声で。二度目は少し大きな声で。

1号は顔をくしゃくしゃにして答える。


「ん。また泣いてる。」


間違えた?と首を傾げるリエル。


「リエル様、嬉しくても涙は出るみたいだよ?みたいだね?ボクは泣いたことないけど。」


「難しい。」


リエルのお勉強にはまだまだ時間がかかりそうだが、1号についてはひと段落、と誰もが思う中、間伸びした声が告げる。


「は〜い。準備出来ました〜。リエル様〜その子をこちらに〜。」


「ん。1号、マモの側に。」


言われるがまま、1号を促す。


「お母様、一体何をなさるのですか?」


言わなかったっけ?と目で訴える。

ティアはフルフルと首を振り理解出来てないことをアピールする。


「1号。形が変わるけど大丈夫。」

「はい?」

「いきますよ〜。」


返事をするや否や炎の柱が1号を包み、1号は跡形も無く消えてしまった。

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世界の常識がない母が可愛すぎて誰にも嫁がせたくない Kano @kano2049

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