第1章 特別です 04

チャナの一言で場の空気がまた変わる。

ティアと1号は話の趣旨がまだ掴めていない。


「リエル様。もう一度確認だけど、本当にやるのかい?やるんだね?」

「ん。決定事項。」

「期間は決めているの?決めているんだね?」

「1000年くらい?」


溜息をつくチャナとは裏腹にリエルは微かに嬉しそうにしている。


「リエル様。チャナ様。私達にも説明して下さいませんか?」


ティアも横で頷く。

チャナがどこから説明しようかと一考していると、リエルが大きく息を吸い、

今までとは違う人物かと思う程饒舌じょうぜつに説明を始めた。


「私が管理しているいくつもの世界に文明の差はあれど、変わらず発生するものがある。それは『家族』。

たまにイラギュラーはあるが、どの生物においても、配偶者を有し、子供を産み育て、いつの間にか『家族』をつくる。

最初からそうだったし、世界はそういうものだと思っていた。

対照的に私は生まれた時から1人だった…。

やるべきことは初めから理解していた。1人でも特に困ることはなかった。

けれどもいつの日かチャナが現れ、同じ立場のものに初めて出会った。

その時初めて疑問を抱いた。

同列の者が存在するならば、私の『家族』が存在するのではないか。

居てもおかしくはないのではないか。

チャナは私の『家族』ではない。

他の女神の存在していることをチャナから聞いた。わざわざ会ったりもした。

が、それらもまた『家族』ではなかった。

女神という立場の私が…『完全なる一』として存在していた私が、疑問を抱え

『不完全な存在』となった。私はそれがとても嬉しく思えた。

ここで初めて自分にも感情があることに気付いた。

『不完全』となった私はそれから多くの疑問を抱くようになった。

世界で暮らす同列の者達は、生きていく中で、他者の心に触れ寄り添い、肌で感じ、愛を育む。

その者達が築き上げた『家族』との生活のどれもが、とても満ちたりていて、

ひどく幸福のように見えた。羨ましいとさえ感じた。

それから私は『私の家族』を追い求めるようになった。

私も恋をして、愛を育み『家族』を得たい。私も幸せなんだと実感したい。」


一息に説明をすると、何事もなかったかのようにティーカップに手を伸ばす。

ティアと1号は困ったように顔を見合わせ、黙ったままだ。

チャナはリエルの説明に呆れてはいるが優しい顔をしていた。


「それじゃあ説明になってるようでなってないんじゃないかな?なってないね?1号は理解できたのかい?理解できてないね?」

「リエル様は、『家族』という集合に興味を持ち、実際に体験し幸福という感情を理解したいというこですよね?それが何故ティアと繋がるのかわかりませんが。」

「んーそうかな?そうだね?じゃあ、そこはボクが説明しようかな?説明するね?」

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