第464話 【仲間の戦い・4】


 二人の戦いはルークさんの方が若干優勢の状況のまま、10分程が経過した。

 序盤から【怪力】を使用しているレイは、既にかなり体力を消費している。

 そんなレイとは逆にルークさんは、ここまでレイの攻撃をかわして反撃するという戦い方でまだ余裕そうな表情だ。


「流石というべきか、やっぱり経験の差が出るな……」


「私達もかなり色んな戦いを乗り越えて来たと思うけど、ルークさん達に比べたらまだまだだもんね」


「目立つ功績は俺達の方が多いけど、ルークさん達は冒険者としての長年の実績があるからな」


 レイの様に怪力を持つ魔物も世界には居るから、そういう相手と戦ってきたルークさんはレイとの戦いでその経験を活かしてるんだろう。

 逆にレイはこれまで魔物相手には【怪力】で押し倒す事が出来ていたが、ルークさんにはそれが通用せず苦戦している。


「レイお姉さまが苦戦してる姿、初めて見ました。ジンお兄さま達は、お姉さまが苦戦してる事に驚きとかは無いんですか?」


「う~ん……そうだな、正直俺がこの大会に出る際に苦戦するかも知れないと思った相手は、ルークさんとエリスさんの二人なんだ。多分、これはクロエもそうだろ?」


「うん。私もそう思ってた。昔から知ってる人だから、強さも大体知ってるからね」


「お兄さま達でもそう感じる相手なんですか?」


 イリスは不思議そうな顔をして、そう聞き返してきた。

 正直、イリスからしたら疑問に思うかも知れないが、ルークさん達の事をよく知ってる俺達からしたらそう思うのも当然ではある。


「まず最初にルークさん達は、事故が多い冒険者という職業でこれまで大きな事故も無く、最初に組んだパーティーメンバーと白金級冒険者まで上り詰めてるんだ。その時点で、かなり数少ない人達なんだよ」


 冒険者は予測不可能な事故が多い職業で、急に魔物に襲われるなんて事も珍しくない。

 だがそんな急な場面でも、ルークさん達は慌てず対処して来たらしく、今まで大怪我を負う事無く冒険者として活動して来たと教えて貰った。

 その時点でやっぱりこの人達は強いんだなと、改めて認識したのを覚えている。


「この試合でもしレイが負けてとしても、俺達は驚きはしないが……レイがそう簡単に負けない事も俺達は知ってる」


 そう俺が言うと、会場で戦っているレイはルークさんと距離を取りピタッと立ち止まった。

 ここまで獣の如く、ルークさんに対して攻撃を続けていたレイがここで止まったという事は何かしようとしてるのだろう。


「レイちゃん、頑張れ!」


「レイお姉さま頑張ってください!」


「レイ、頑張れよ」


 何かしようとしてるレイに対し、俺達はそう応援の言葉を掛けた。

 それと同時にレイは全身に魔力を通わせ、そして大きな声で叫び声をあげた。

 その声にはレイの持つスキル【威圧】の効果が乗っており、その威圧は俺でさえ一瞬身震いする程の力を感じた。

 そして【威圧】は、しっかりとルークさんにも効いていた。


「——ッ!」


 一瞬出来たルークさんの隙、その瞬間を狙ったレイは自身の強化スキルを全て使い突っ込んだ。

 その速度は尋常じゃなく、スカイが本気を出した時と同等の素早さだと感じた。

 流石のルークさんはドラゴン族の素早さに匹敵するレイの攻撃を避ける事は出来ず、縦で何とか耐えた。

 しかし、レイの身体能力はスキルによって底上げされた状態。

 更にそこには速度も追加されて、並大抵の力ではレイの攻撃を受ける事は出来ない。


「ハァァッ!」


 レイはここで決めるしかないと感じたのか、残ってる魔力をかき集め更に力を上げた。

 そしてそんなレイの攻撃に徐々に押されるルークさんは、遂に足の限界が来て耐えきれず、壁に吹き飛ばされた。

 最後まで自分の戦い方を貫いたレイは、ルークさんを打ち負かし勝利を掴み取った。

 光景を見ていた観客は一瞬沈まりかえり、数秒経って歓声が巻き起こった。

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