第418話 【試験結果・2】


 その後、俺が落ち込むとクロエ達から励まされ、何とか気持ちも切り替える事が出来た。

 そしてユリウスの番の時間は終わり、「また今度ゆっくり話そうね」とユリウスは言って去っていった。

 勿論、ユリウスも不合格で良いと言って出て行った。


「結局、ユリウスさんも弟子になるつもりは最初から無かったみたいだね」


「もしも次やるとしたら、見学者は見学者で別れさせよう。その方が俺達の負担も減るからな……」


 ほぼやる予定はない事だが俺はそう思いながら、次の試験者に部屋に入るように言って試験を続けた。

 そうして俺達は、第三試験に通過した試験者全員の試験を終えた。


「うん。結局、誰一人としていい奴は居なかったな」


「惜しい人は何人か居たけどね~。でも、イリスちゃんと比べたらそこまでって思う人ばっかりだった。こう考えると、イリスちゃんもイリスちゃんで凄い人材だよね」


「まあ、イリスはな……」


 正直、最初の弟子としてとったイリスの才能が高すぎて、今回の本気で弟子になろうとしている者達のレベルが低く見えた。

 その中でも割と良さそうな者もいたが、弟子にとりたいと思う程の者達では無かった。


「でも、一人だけジン君が悩んでる人が居たよね。ほら、獣人族の人」


「あ~、惜しい奴ではあったなって」


 レイが言ったのは試験開始前、俺にいちゃもんを付けて来た熊人族の男の事だろう。

 試験開始前の態度から、こいつは直ぐに落ちるだろうと思っていたが、本気で弟子になりたいのか思っていたよりも真面目に取り組んでいた。


「あの人、見た目によらず真面目だったもんね」


「最初にいちゃもん付けて来たのも、一番最初に来てそれからずっと待たされていたから、本来そこまで我慢できない性格で爆発したって謝ってたもんね」


「まあな、あんなガタイのいい男が頭を下げてきてちょっと驚いたよ」


 あの男は自分の面接の番になると、まず最初に俺達に向かって頭を下げて謝罪をした。

 正直、俺はあの場では他の試験者を脅す目的もあってあんな態度をとったが、そこまで怒ってなかったので謝罪を受け入れた。


「そもそも、あの男の戦い方は俺達の誰とも被ってないから教える事が出来ないんだよな、魔法は獣人だから使えないし、武器も体格にあった戦斧を使っててレイと武器自体は被ってたけど戦い方が全く違ったからな」


「うん。それに本人も言ってたけど、体を動かす方が得意だって言ってたもんね」


「体術は多少使えるけど、そこまで本格的に使っては無いからな……」


 性格もそこまで酷くないし、正直考えたけどどう教えるべきか分からない相手を弟子にとるのは駄目だなと思い不合格にした。

 その事は本人も伝えると、俺達に弟子にとっても良さそうと思われただけでも嬉しいと言って、寂し気ではあったがそのまま部屋を出て行った。

 それから俺達は試験を終えたので待機室に移動すると、先にレン達は終わっていたのか部屋で待っていた。


「ジンお兄さま、クロエお姉さま、レイお姉さま、お疲れ様です!」


「お待たせ、レン、イリス。そっちも終わってたみたいだな」


「数が少なかったからな、そっちは今終わったのか?」


「ああ、見学に来た人は直ぐに帰ってもらっていたけど、それ以外は色々と話を聞いたりして遅くなった。結局、一人も弟子には取らなかったけどな、レン達の方はどうだ?」


 そう聞くと、レンは「勿論、ゼロだ」と若干少し怒気を含んだ様子でそう言った。

 この感じは、何かあったみたいだな……詳しい内容を聞きたい所だけど、今はやめておこう。

 それから俺達は学園を貸してくれたお礼を学園長に言いに行き、手伝ってくれたルークさんや受付等をしてくれた姉さん達にお礼を言った。

 その後、ルークさんや姉さんと一緒に俺はお疲れ様会として、王都でも有名な食堂へと移動して、お金は俺達持ちで好きに食べてもらった。


「それで、レン。試験で何があったんだ?」


 お疲れ様会が終わった後、宿に戻ってきた俺はレンの部屋に行き何があったのか聞く事にした。


「勧誘だよ。弟子を選ぶ試験なのに、色んな所から来た奴等から勧誘話ばかりされてな、本当にうざかった」


「事前にそういうのは切った筈なんだけど、まだ残ってたのか……ごめんな、レン」


「いや、ジンが謝る事じゃない。ルールを無視して来た奴等のせいだ。一応、そいつらの事はイリスに頼んでメモしてもらっていたから、今度からそいつらが在籍してる商会やパーティーには薬を渡さない事にしたから、ジンも後で確認しておいてくれ」


 馬鹿な奴等だよな、レンの性格を知っていたら無理に勧誘なんてせずに上手く付き合えばいいのに……。

 そう俺は内心思いながら、それからレンの愚痴に付き合う事にした。

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