第417話 【試験結果・1】


 レンが出て行った後、俺達は各自休憩を取って午後からの第三試験へと向かった。

 第三の試験は軽く面接を伝えているが、そこでは〝性格、素質、経歴〟全てを見て判断する事になっている。

 最終的には近接・魔法戦闘では〝俺、クロエ、レイ〟の三人が同時に良いと思えば弟子に取るという形だ。

 レンの方はイリスも手伝いに参加しているが、弟子にするかしないかレンが決める事になっている。


「ん~、ここから沢山人を見なきゃいけないのか~、レン君が言ってた通りもう少し人を減らせばよかったね」


「なんだかんだ実力はあるやつが揃ってたからな、中には見学気分も居るから、そういう人は直ぐに落とせば良いから、楽が出来る所は楽していこう」


 レイの心配事に対して俺はそう言って、早速面接会場に人を入れて試験を始めた。


「……疲れるな」


「こんなに人と話す事って今まで無かったから、精神的に疲れるね……」


「私は聞いてるだけだから、そこまでだけど二人は色々と質問とかしてるからね~」


 試験を始めて一時間程が経ち、大体20人程の試験者の面接を終えた。

 正直、ここまで良いと思える者は一人もおらず全員、不合格にして落としている。

 中にはそれに文句を言う者もいたが、イリスよりも全体的な能力値が低い者だったりで見向きも出来なかった。


「やっぱり、試験簡単すぎたかもな……」


 若干、脳裏にレンの言葉を思い浮かべながら俺はそう言い、次の試験者に入ってもらった。

 そして入って来た試験者は、この三人が知ってる人物だった。


「不合格です」


「ちょ、ちょっと! 少しは話をしようよ? 折角、試験通って来たんだからさ」


「見学に来た人は、これで帰っていきましたよ。アンジュさんも「次は勝つから」って言って、帰りましたよ。ユリウスさん」


 入って来た試験者は、アンジュと同じく見学気分でやって来たユリウスだ。


「いや、弟子になれないのは最初から分かってるから、少しくらいはお話しようよ? ほらっ、他の試験者相手につかれてるでしょ? 気分転換に良いと思うよ」


 そう提案してくるユリウスに対して、俺は溜息を吐きつつ、丁度聞きたい事もあったからと思いユリウスに話しかけた。


「それじゃ、一つ気になってましたけどアンセルさんをどうして連れて来たんですか?」


「あ~、アンセルはアンジュが連れて行くって言ったんだよ。迷宮でジン君達と会ってから、アンセルがジン君達の事を気にしてたからね。普段、人に興味を示さないアンセルが興味を抱いてたからアンジュも何か手助けをしたいと動いたみたいなんだよ」


「じゃあ、今回の件はユリウスさんは何も知らないんですか?」


「全くね。会場に着いて、アンセルが居る事に私も驚いたよ」


 そうユリウスは思い出すかのように言うと、アンセルの話は終わりにして、今回の弟子試験についてどうだったか聞いて来た。


「正直、今の所は時間の無駄だったかなと思いますね。試験をやったという前提を作る為だからといって、俺達の労力がかかり過ぎたなと思ってます」


「特にレン君は忙しそうだったもんね。普段から人の事なんて気にしてないのに、弟子にならない可能性のが高い人達の為に時間を使うって事で、始まる前から気分を悪くしてたし」


「でも、レン君にとっては良い経験だったと思うよ~。人との交流が最近は極端に減ってたから、人との会話の仕方とか思い出せたと思う」


「レンは、そこまでコミュニケーション能力が低いとは思わないけどな……多少、人の気持ちに鈍感な所はあるけど」


 そう俺が言うとクロエとレイ、そして何故かユリウスからも「ジン君は人の事言えないよ」と同時に言われた。


「ジン君って自分の事となると、鈍感なんだよ? 気付いてないでしょ~」


「凄く鈍感だよ」


「2年前からジン君の事は見てたけど、ジン君は鈍感だね」


 レイ、クロエ、ユリウスの順にそう言われた。

 人からこんなにも、鈍感だと思われてるとは初めて知った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る