第419話 【試験結果・3】
試験を終えた翌日、今日まで迷宮探索は休みなので俺は朝早くから試験後の噂についてハンゾウの所へと来ていた。
「まあ、荒れてはいないか……」
「ちゃんと審査していたみたいだからな、騒ぐ奴は自分の能力を過信してる奴等ばかりで、早々にそういう奴等は周りから無視されて、そこまで大きな騒ぎとはなってない」
昨日の出来事だから、そんなに早く騒ぎになるものではないかも知れないが、大抵俺達の事となると翌日には騒ぎになってる事が多い。
だが今回の試験については、良い感じに収まってるみたいだった。
「今回に関しては、そこまで大きな騒ぎにはならないと俺も思ってる。大多数の人間が満足していたからな、特に戦闘系の方は自分達の実力も確認してもらえたからこれからの修行に活かせると張り切ってる奴も多いみたいだぞ」
「そうなのか? まあ、俺達に直接かかわりは無いけど良い事に繋がったなら、それはそれでよかったな……」
面倒な事をしたのに何も良い事が無かったら嫌だなと思っていたが、そんな形で良い事が起こってるならそれはそれで良いだろう。
「まあ、だが問題なのもあるといえばあるな……昨日、お前から連絡を貰って直ぐに手配したがレンの薬を卸してもらえなくなった商会がギルドに抗議に向かったらしい。宿にも行ったらしいが、そこは事前に城から兵士が送られていたからお前等と会う事は無いようにしていたみたいだ」
「だから朝から、街に兵士が多かったのか……普段と違ってて違和感を感じてたが、国が動いてたのか」
「レン、というよりお前等は国にとっても大事な冒険者だからな、連絡を貰って、直ぐに手配をしたんだろうよ」
ハンゾウからそう聞いた俺は、また後日姫様の所に寄ってお礼を言いに行こうとそう考えた。
「……それより、俺はお前達の試験の試験者に驚いたぞ。まさか、あのアンセルが参加するとは思ってなかった。お前等、あいつと知り合いなのか?」
「既に知ってると思えが、アンジュさん経由だよ。詳しくは俺も話せないが、アンジュさんとアンセルは一緒に迷宮を潜っててそれで俺の事を知ったらしい」
「アンジユか、確かに迷宮で何度か見かけたと部下達が言っていたな……まあ、アンセルの事は調べられないし、考えるのは止めよう」
いつもなら直ぐに部下を呼んで調べさせるハンゾウだが、相手がアンセルだと分かっている為、諦めるようだった。
「お前がすんなり諦めるって、本当にアンセルは情報の入手が難しいんだな」
「難しい上に、何をしてくるか分からないからな。悪魔を使役してるジンの情報を取り扱った方が楽だと思ってる」
「それはそれで言いたい事はあるが……」
そう言いながら俺は他にも何か情報が無いか聞き、全て聞き終えてからハンゾウの店を出た。
店を出た後、俺は転移で宿に戻ってくると、宿の受付に一人の大柄の男が立っていた。
「ジンさん、昨日振りです!」
「来たのか、カシム」
「はい。ジンさんから弟子には出来ないけど、アドバイスはしてやると言われたので!」
昨日、試験では落としたがお疲れ様会をやった帰りにこの熊人族の大男カシムと偶々会った。
「弟子には出来ないが歴も俺の方が上だし、冒険者の先輩としてアドバイスはしてやる」
その時、浮かれ気分だった俺はその時の気分でこんな事を言った。
正直、今思えばその時の気分で言ったことだったが、こいつにも何かしらの才能は感じてる。
「ジンが居ないから知り合いか分からなかったが、その感じだと本当に知り合いみたいだな」
「ああ、弟子では無いが……冒険者の後輩として、色々と教えてやることにしたんだ」
「弟子の次は後輩か、なんだかんだ人の面倒を見るのが好きだな」
「好きではない、ただ才能を埋もれさせるのは勿体ないと思っただけだ」
そうリカルドの言葉に言い返すと、隣で聞いていたカシムは「ジンさんに才能があるって思われてる!?」と驚いていた。
それからカシムは宿の空いてる部屋を契約して、クロエ達に挨拶をした。
「よろしく、カシム君」
「よろしく……まあ、面倒事は起こすなよ」
「へ~、昨日ジン君が誘ってたけど本当に来たんだ。よろしくね~」
「はい。よろしくお願いします!」
クロエとレンはカシムの事を様子見しており、レイだけが楽しそうに迎え入れていた。
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