第405話 【イリス・1】


 あの後、イリスに俺達が泊ってる宿の場所を教えると、丁度今日が更新日だった為、リカルドの宿に移る事になった。


「へ~、お前等にあんな可愛い妹分が居たんだな」


 リカルドはイリスを連れてくると、俺達の知り合い用として残していた部屋にイリスを連れて行き、契約をする事にした。

 そしてイリスはクロエとレイと一緒に日用品を買う為、買い物に出掛けて行き、俺とレンは宿に残る事にした。


「さっき聞いたが一人で鉄級って事は、かなり才能があるみたいだな」


「才能もそうだけど、努力も凄いからな。元々、イリスはただの村娘だからな」


「そうなのか? それであそこまで成長したって事は、誰かさん達の教え方が上手かったのかもしれないな」


 リカルドはニヤッと笑みを浮かべながら言うと、一緒に留守番をしてるレンが「イリスは勉強熱心だったってのもあるだろうな」と言った。


「ただの村娘って言っても、イリスの場合は今の環境を変えたいって気持ちがあった。俺達もそれには気付いていたから、旅の日程をずらしてイリスに最低限の戦い方や必要な知識を教えて別れたんだ」


「まあ、孤児って言ったらその後の人生は、自分でどうにかしないといけないからな……俺もこういう仕事柄何人か元孤児の奴は何人か見た事があるけど、どれだけ努力したかによって生活はかなり違うからな……」


 その後、リカルドは夕食の仕込みに行き俺とレンは、クロエ達が帰ってくるまでは自分達の部屋で休む事にした。

 そうして2時間程して、夕食の時間になるとクロエ達は戻って来た。

 元は日用品を買いに行くという予定だったが、帰って来たイリスの服は出掛けた際と変わっていたから服屋にも見に行っていたんだなと察した。


「おかえり、イリス。どうだった買い物は楽しかったか?」


「はい、ただいまですジンお兄さま。少し前から王都で活動してましたけど、私の知らないお店とかにクロエお姉さまとレイお姉さまに連れて行ってもらいました」


 嬉しそうにそう報告したイリスは、少し遅れて降りて来たレンにも「ただいまですレンお兄さま」と挨拶をして、俺達は一緒に食堂に向かった。

 食堂には既にルークさんや姉さん達が居て、イリスを紹介すると〝ジン達の妹分〟と認識して、直ぐに打ち解けていた。


「ジン君達にこんな可愛い弟子が居たんだね」


「弟子って程、沢山は教えてないけど、まあ近い存在ではあるよ。俺達が唯一、自分達から教えたのがイリスだからね」


 姉さんからの言葉にそう答えると、他の人と喋っていたイリスが「私って、お兄さま達の弟子じゃないんですか!?」と驚いた顔をした。

 その言葉に俺も含めクロエ達も首を傾げ、どっちだろうという反応をした。

 そんな反応をした俺達に、イリスは悲し気な表情をしたので俺達は慌てて「イリスは俺達の弟子だよ」と言うと、イリスは笑みを取り戻した。


「昨日、弟子の事を話してたけどいつの間にかレンだけじゃなくて、俺達にも弟子が居たみたいだな」


「イリスちゃんなら私達の中に入っても、今の空気を壊す事は無いからね」


「……レイに至っては、あれだからな」


 レンの視線の先では、改めて弟子となったイリスと嬉しそうにはしゃいでるレイが居た。


「……でも、俺達の弟子というならイリスにはもっと強くなってもらわないといけないな」


「確かにな、今でも十分強いけどもっと強くなってもらわないとな……」


「ジン君、レン君。怖い顔してるよ……でも、その意見には私も賛成かな」


 そう俺とレンが言うと、遠くに言っていたイリスがビクッと反応すると、周りをキョロキョロと慌てた様子で見ていた。

 そんなイリスを俺達は笑みを浮かべて見ており、今後どういう風に育てようかと俺は頭の中で考え始めた。

 その後、イリスとの再会を祝して、昼間聞けなかったイリスの冒険話や、俺達の冒険話をして夜遅くまで俺達は楽しんだ。

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