第406話 【イリス・2】
翌日、本来であれば迷宮に戻る予定だったのだが、俺達はイリスと共にイリスの装備作りの為にリーザの店へと向かっていた。
「あ、あの本当に良いんですか? 昨日も沢山、お姉さま達に買ってもらったんですよ?」
「それなら尚の事、俺とレンはイリスに何も渡せてないからな、再開祝いとして受け取ってくれ」
鉄級まで一人で来れたイリスだが、金銭面はそこまで余裕はないみたいで装備もかなり使い込んでおり、若干壊れかけていたのを知った。
それを見た俺とレンは、イリスの新しい装備代金を二人で折半して払うと言って、イリスをリーザの所へと連れて行く事を決めた。
「へ~、その子がジン達の弟子なのね?」
「は、はい。初めまして、イリスです!」
「ふふっ、元気な子ね。それに見た感じ、シッカリと鍛えられてるわね。その辺の冒険者と比べても、この子の方が強そうね」
リーザがそう言うと、イリスは嬉しそうな顔を浮かべた。
そんなイリスをジッと見つめたリーザは、笑みを浮かべて「この子、気に入ったわ」と口にした。
「ジンが連れて来た相手だからって、最初は考えてたけど今度からは一人で来ても対応してあげるから、遠慮なく来て良いわよ」
「珍しいな、リーザが一目で気に入るなんて、良かったなイリス。ガフカの工房の主は気に入った相手じゃないと、依頼を受けない人達で王家相手でもそれは変わらないんだぞ」
「ええ!? そ、そんな凄い方に私は気に入られたんですか? ど、どうしてですか?」
オロオロとしたイリスはリーザに聞くと、リーザは「勘よ」とイリスの頭を撫でながらそう言った。
「さてと、お金はジン達か出すんでしょ? それなら、早速作業に入りましょう。お母さん、手伝ってくれる?」
「ええ、良いわよ。さっ、イリスちゃんこっちに来て頂戴」
リーザはそう言って、イリスを店の奥へと連れて行き俺達は店内で少し待つ事になった。
「そう言えば、昨日イリスちゃんを弟子って認めたけど、何かイリスちゃんに教えたりするの?」
「まあ、その予定ではある。イリスはまだ色んな事を吸収できる歳だから、取り合えず色んな事を教えて適性を調べようと思う。それで適性があった事を、それから重点的に教えようかなって考えてるよ」
「へ~、そうなんだ。それじゃあ、私はイリスちゃんに何教えたらいいかな?」
そうレイが聞くと、レンは「接近戦での戦い方でいいんじゃないか?」とレイに言った。
「この中で一番、レイが一番経験してるから戦い方もそうだけど、戦う時の気持ちとかも教えられるんじゃないか?」
「ん~……そうだね。それなら、私でも教えられるかも」
レンのアドバイスを聞いたレイはそう言うと、どんな事を教えようか楽しそうにクロエと話し始めた。
「ジンはイリスに何を教えるつもりなんだ?」
「ん~、クロエが魔法を教えるってのは聞いたし、レンは錬金術の事を教えるんだろ?」
「ああ、魔法に関してはクロエの方が色々と知ってる上に実戦経験も豊富だからな、ジンは剣術は教えないのか?」
「確かに剣術も教えようと思えば教えられるけど、実際に使って来たのは刀術だからな……イリスがそれに適性があるなら、教えてもいいかも知れないけど」
最初、冒険者としての心得とかでも教えようかと思っていたが、昨日話してみた感じそれについては十分理解していた。
それで魔法はクロエに取られ、前衛での戦い方もレイのが熟知してるから、俺自身何を教えるか迷っていた。
「それなら最初、刀に適性があるか調べたらどうだ? もしかしたら、イリスに適性があるかもしれないだろ? それに無かったとしても、ジンには他にも料理だったり、他にもスキルを沢山持ってるんだからそれらを教えたりしたらいいと思うよ」
「……料理は譲ってくれるのか?」
「譲も何も、最近はジンの方が沢山作ってるだろ? それに錬金術と並行して、料理を教えるのは難しいからな」
そうレンが言ったので、俺は何も教える事が無かったらイリスに料理を教えようと決めた。
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