第391話 【成果・2】
翌日、今日も再教育の授業の為に屋敷へと来ると、今日はそこに珍しい人物がいた。
「姫様、おはようございます。部屋以外でこうして姫様と会うのは、かなり久しぶりですね。今日来たのは、彼女達の様子見ですか?」
「おはよう。ええ、そうね。あの子達の様子を見に来たのと、これからについての話し合いの為に来たのよ」
予想通り姫様は戦女の様子見と今後についての為に来たようで、到着してから少し準備をすると一緒に戦女達が待つ部屋に向かった。
部屋に入るといつも通り彼女達は挨拶をしてきたが、一緒に入って来た姫様の顔を見ると驚いた顔をして固まった。
少し前までなら彼女達は自分達のした事なんて全く気にしてなかったが、今はその位は考えられる能力がある。
その為、旅の最中に姫様に対してかなり迷惑を掛けた事を思い出して、申し訳なさそうな顔をして彼女達は姫様に頭を下げた。
「……あなた達の誠意は今日一日見て、私自身で決めるわ。だから、いつも通りのあなた達を見せて頂戴」
それから姫様は部屋の後ろ側に付いて来て、一緒に彼女達の授業を見る事にした。
姫様が居る事が緊張しているのか、最初は少し普段通りでは無かった。
「緊張してるのかしら?」
「まあ、そうでしょうね。散々迷惑を掛けた相手が居るんですから、緊張もすると思いますよ」
姫様も彼女達が緊張してる事に気付いており、緊張が解けるまでは採点はしないと俺にだけ伝えた。
その後、午前の授業が終わるまでの間には彼女達の緊張は解け、普段通りの授業態度を姫様に見せる事が出来ていた。
それを見て姫様は特に表情などは変えずにいたが、待機室に戻ってくると姫様は「凄く変わっていたわね」と感想を言った。
「少し前までは国が抱える悩みの種だったのに、今じゃ普通の貴族令嬢と変わらない所まで成長していたわね」
「姫様の予想を上回って来た感じですか」
「ええ、正直もっと出来てない状態だと思っていたわ。ノルフェン家とルフィオス家、ジン達に任せて正解だったわ」
「私達だけの力じゃ、彼女達の再教育は難しかったですね。ジン君達が居たおかげで、私達の負担もかなり減りましたから」
姫様の言葉にレリーナさんはそう言うと、フローラは頷き「ジン君の脅しがかなり効いてました」と言った。
「その話聞いたわよ。普通のネックレスをヤバい代物だって思わせて脅したんでしょ? その話を聞いた時はそんなので彼女達がいう事を聞くの? って思ってたけど、かなり効いていたのね」
「ジン君、名演技でしたよ。元々、ジン君が挨拶の時に魔力で脅していたのでそれもあって信じたんだと思います」
フローラの言葉に姫様は「ジンの演技、見てみたかったわ」と残念そうに言った。
それから姫様は午後の授業も見ると言って、リネアさん達と一緒に待機室を出て行った。
「姫様、嬉しそうだったね」
「あれでも共に戦った仲間だから、情はあったんじゃないかな? あのままだと、最悪の場合辺境の修道院に閉じ込めるみたいな話も出てたって言ってたし」
「その話は本当よ。勇者に対しても迷惑を掛けていたし、他国にまで迷惑を掛け始めたら流石に許容できないって彼女達の家も判断して、今回の再教育が上手く行かなかったら最悪の場合はそうするって話が出ていたわ」
レリーナさんの言葉にやっぱりあの話は本当だったのかと思い、フローラも再教育が上手く行って良かったと安心していた。
「姫様のあの感じだと、もうこの再教育も終わりそうね。最初は本当に面倒だし断ればよかったって何度も後悔したけど、ジン君達のおかげで楽しい時間を過ごす事が出来たわ」
「俺も実際には貴族がどんな教育をされているのか目にした事がなかったので、貴重な時間でした。まあ、同じような事はしたくは無いですけどね」
「それは私も同じよ。流石に今回で懲りたから、次フローラから頼まれても絶対に断るように言うつもりよ」
レリーナさんのその言葉に対し、フローラは申し訳なさそうな顔で「ごめんなさい」とシュンッと縮こまって謝罪をした。
その後、俺達は午後組の授業が終わるまでの間、雑談をしながら姫様達が戻ってくるのを待つ事にした。
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