第392話 【成果・3】


 そして一日を通して戦女達の様子を確認した姫様を含め、これからについての話し合いが行われた。

 その話し合いでは姫様から見た彼女達の評価が行われ、今でも十分貴族社会では通用するレベルと判断された。


「そこまででしょうか? まだ多少、動きがぎこちないとは思いますけど……」


「会話も偶に気を抜く時がありますよ?」


 姫様の判断に対して、フローラとティアナさんは自分の意見をそう言った。


「あの程度だったら、そこまで気にする人はいないわ。王家が主催のパーティーとかだと目立つかも知れないかもだけど、それ以外だと十分通用するし、後はそういう場に慣れて行けば徐々によくなると思うわ。後は、各家庭でそれ以上を目指す場合は家庭教師を付けたらいいわね」


「私もそう思うわ。授業で完璧を目指すのは無理があるもの、後は慣れて行けばいいと私も思うわ」


「貴族全員がレベルの高い礼儀作法が出来るって訳でもないし、あの程度なら十分良いと私も思うわね」


 そう姫様は言うと、これからの彼女達の教育に関しては各家庭に任せるようにすると決めた。

 若干不安そうなフローラとティアナさんだったが、レリーナさんとリネアさんはその意見に賛成していた。


「という事は姫様、再教育は終わりですか?」


「ええ、終わっても良いわね。帰ったら、お父様達に報告しておくわ」


 姫様の言葉にレリーナさん達は、笑顔を浮かべ「よろしくお願いします」と言った。

 その後、俺達は解散となり宿に帰宅した俺はリカルドに貴族の教育が終わった事を伝えた。


「ほ~、貴族の教育は終わったのか、という事はまた迷宮に挑むのか?」


「一応、そのつもりだけどその前に一旦、休暇を挟もうと思う。神様から、準備があるから多少は遅れても大丈夫って言われてるからな」


「神様とそこまで気軽に約束してるのか……それで、休暇どうするんだ?」


「まあ、レンは研究がしたいだろうから、このまま王都で過ごすと思う。旅に出たとしても、俺達なら直ぐに戻って来れるからな。だからもし、旅に出ても部屋はそのまま契約しておくつもりだ」


 そうリカルドに言った俺は、夕飯まで今日は少し時間があるので部屋で休もうと向かっていると、師匠部屋から出て来た師匠に声を掛けられた。


「弟子ちゃん、今良いかしら?」


「大丈夫ですけど、師匠がこっちに居るの珍しいですね」


「弟子ちゃんが用事から戻ってくるのを待ってたのよ」


「そうだったんですか、それでどうしたんですか?」


 態々、俺の事を待っていたと言った師匠に、俺はどんな用事で来たのか尋ねた。

 すると、師匠は一緒に空島に来て欲しいと言われ、俺は師匠と共に空島へと移動した。

 暫く空島に来ていなかったのもあるが、師匠の家とは別に何やら研究所みたいなのも出来ていた。

 そしてその中に俺は師匠に連れていかれると、中にはナシャリー様とレンが居た。


「あれ、レンもこっちに居たのか?」


「マリアンナ様に呼ばれてな、話を聞いたら興味が湧いて研究を止めてこっちに来たんだ」


「レンが興味を持つって相当だな……それで、何があったんですか?」


 レンが興味を沸いてこっちに来るという事は、相当の事だろうと思い師匠に視線を向けて尋ねた。


「話せば長くなるんだけど、弟子ちゃん達が魔法玉を取ってくる間、ナシャリーが他の研究をしていたのよね」


「研究と言っても、大がかりの事はしてなかったわ。でも、偶然が重なって作ろうと思っていた物が出来ちゃったのよ」


 そうナシャリー様は言うと、異空間に手を入れて小さな小箱を取り出した。

 そしてその中には、見覚えのある玉が入ってた。


「……これってもしかして、魔法玉ですか?」


「似てるけどこれは違うわ。見た目は似てるけど、魔力を溜め込むような物じゃなくて、放出した魔力を増幅させる効果を持つ玉なのよ」


「使用用途は似てますけど、膨大な魔力が貯蔵できる魔法玉とは違って即座に増幅されるって事ですか……凄い物を作りましたね」


 ナシャリー様が作成したアイテムを見て、俺はそう感想を零した。

 そしてそんな俺に対してナシャリー様は、その箱を閉じて俺に渡してきた。


「それはジン達に渡すわ。私には必要無いものだから」


「良いんですか?」


「ええ、魔法玉のお礼とは言わないけど、ジン達の役に立つならと思ってマリアンナにジンを呼んでもらったのよ」


「成程、ありがとうございます。ナシャリー様」


 そうお礼を言ってその箱を【異空間ボックス】に入れて、俺とレンは宿に帰宅した。

 

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