第383話 【魔法玉・1】


 迷宮を攻略した次の日、俺は師匠の居る空島へと朝からやって来ていた。


「お願いしたのは私だけど、本当に持ってくるなんて弟子ちゃんはやっぱり凄いわね。相当、大変だったでしょ?」


「そうですね。やり方が分からない時は本当に苦労しましたが、やり方が分かってからは順調に集める事が出来ました」


「あら、そうなの? 全部でいくつ手に入れたの?」


 師匠は俺達がいくつ手に入れたのか気になったのか、そう尋ねて来たので俺は「師匠に渡したのを合わせて4つです」と言った。


「え、本当に!?」


「はい。色々と俺達の能力が噛み合った結果、それだけの数を集める事が出来たんです」


 俺はそう言うと、師匠はどんなやり方で取ったのか気になってそうだったので玉をどんな風に取ったのか伝えた。

 そのやり方には、流石の師匠も驚いていた。

 それから師匠は早速、魔法玉の研究の為にナシャリー様と話をするからと言ったので俺も王都へと戻って来た。

 その戻る際に俺は宿では無く、王城のいつもの転移してくる部屋に転移して来た。


「姫様、今大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫よ」


 部屋の中にいる姫様に入っても良いか確認を取り、俺は部屋の中に入った。

 部屋の中には部屋の主である姫様の他に、ユリウスと珍しい人物がいた。


「ユリウスさんはまた偶にいますけど、王子様が姫様の部屋に居るのは珍しいですね」


「ジンさんが迷宮を攻略したって聞いて、姉さんが今日ジンさんが来ることを教えてくれたので待ってたんです」


「教えたって、ユリウスに伝えていた所に居合わせて、盗み聞きしただけじゃない」


 笑顔で言った王子に対して、姫様は溜息交じりに真実を言った。

 それから姫様は、俺の方に顔を向けると「迷宮の話、聞かせてくれるかしら?」と言ったので、俺は姫様達に迷宮の話を始めた。


「100層のボスはやっぱり、凄かったんだね。僕も闘ってみたかったな~」


「ジンさん達凄いですね。ドラゴン相手にそんな余裕で勝てるなんて!」


「ジンの冒険話は本当に面白いわね。ドラゴン相手に全力を出さずに勝てるなんて、流石だわ」


 俺の話を聞いた姫様達は各々そう感想を言うと、王子が「ドラゴンの素材って見せる事って可能ですか?」と少し興奮気味にそう聞かれた。


「見せる分には構いませんよ」


 そう言って俺は、100層のボスである黒いドラゴンの角を出してテーブルの上に置いた。


「うわ~、これがドラゴンの角……凄い魔力を感じますね」


「凄いわね……下手したら、私達が戦った魔王と同程度の魔力を持ってるんじゃない?」


 姫様のその言葉に俺は、途中から迷宮の構造が変わって強さが変化した事を伝えた。


「神様に対して情報を渡すって、ジンは本当に凄い事をサラッとやるわね……」


 姫様は呆れた顔で、俺の事を見ながらそう言った。

 その後、角を【異空間ボックス】に入れて、話は師匠から頼まれていた魔法玉の話に変わった。


「そう言えば、ジン君に昨日伝え忘れてたんだけど、偽物の魔法玉だけど手に入れる事が出来たよ」


「えっ、本当ですか!?」


 魔法玉の話を始めると、ユリウスは近くの袋の中から偽物の魔法玉を取り出した。


「ありがとうございます。あの、玉の受け渡しですけど後ででも大丈夫ですか? 玉の価値はレンと決めるって話をしていたので、また後日レンと一緒にユリウスさんの所に来ますので」


「うん。分かった。それじゃ、玉はその時まで大事に保管しておくね」


 ユリウスさんは俺の言葉を聞くと、袋の中に玉を戻した。


「今のがジンが探してた玉なの?」


「はい。ですけど、今のは偽物の方です。本物も一応確保出来てるんですけど、レンの研究に使えると思うので迷宮内でユリウスさんに見つけたら買い取るって話をしてたんです」


「そうなのね。凄まじい魔力を持った玉だったわね……」


 姫様は魔法玉を見て玉の魔力に少し震えながらそう口にすると、姫様とは反対に王子は目をキラキラとさせて俺の事を見ていた。


「あれを魔物が持っていて、攻撃にも使って来てたんですよね? どんな攻撃をしてきてたんですか?」


「玉持ちの魔物は、接近戦を得意とする魔物と魔法を得意とする魔物の二種類居ました。接近戦の方は特に驚いた所は無かったんですけど、魔法使いの方はドラゴンが使う魔法とほぼ同程度の威力を持つ魔法を使ってましたね」


「という事は、あの玉を持つと魔法の威力があがるんですか?」


「そこはまだ調査してる段階です。今は、俺のパーティーメンバーが研究してます」


 俺の言葉に対して、王子は「どんな能力なのか分かったら、教えて欲しいです」とお願いされた。


「別にいいですよ。多分、玉の能力が分かったら姫様にも伝えに来ると思うので」


「はい! 姉さん、その時はちゃんと教えてくださいね!」


「はいはい、分かったわよ」


 王子の頼みに、姫様は溜息交じりにそう流す様に返事をした。

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