第369話 【深層地帯探索開始・3】
あの後、2度程玉持ちの魔物と遭遇したが、どちらも玉の確保に失敗してしまった。
2回目の戦闘の際は気にしすぎて魔物が再び割ってしまい、3度目は俺達の攻撃を受けて玉が壊れてしまった。
そして時間的にも昼食の時間になった為、俺達は攻略を中断して一度、迷宮の家に戻って来た。
「3回とも失敗しちゃったね~」
「取られそうになると、玉を割るって習性さえ無かったらな……一度目で取れたのは、本当に奇跡だったな」
「あの時は取ろうって意識は無かったからな」
食事をしながら俺達は反省会をして、どうやったらうまくとれるのか話し合った。
一度目の時は何も考えずに戦っていて、ふと気づいたら玉が落ちていた。
それなら次に見つけたら、一度目の時と同じく玉を意識せずに戦闘に集中して、もし割れたら別の作戦にしようという事になった。
「まあ、でも今思うのは今までの失敗の中に本物が入っていないで欲しいって事だな」
「見た感じ、全部同じ感じったし本物じゃない事を祈りたいよね」
「そうだね~、本物だったらちょっと悲しいよね」
「成功してたら、研究材料に使えてたと思うとそれだけでも悔しい……次こそ、成功させよう」
話し合いを終えた俺達は丁度、飯も食べ終わったので再び攻略に向かった。
玉持ちの魔物との戦闘に集中していた俺達だったが、攻略は順調で昼食を食べてから一時間程で74層へ到着した。
「お昼後から全く見なくなったね玉持ちの魔物」
「まあ、そもそもが出現率が低いんだろうな……ここまで沢山の魔物と戦ってきたけど、朝の時もなんだかんだ時間が空いてからようやく見つかってたしな」
「珍しいのに、あれだけ取るのが難しいってもしかしてかなりの貴重な物なのかな?」
そうレイが言うと、レンは「ここでしか手に入らないなら、相当な物だろうな」と言った。
「そもそも、俺達が今苦戦してるのは偽物の玉だがあれでも凄い魔力を感じてるから、本物はもっと貴重な物だと思う」
「確かにな、一度師匠に本物の玉を見せてもらったけど、凄い魔力を感じたからな」
「俺も見てみたかったな……なあ、ジン。本物を見てみたいから、偽物を見せに行ってその序に本物を見せてもらう事って出来ないか?」
「ん~、師匠ならお願いすれば見せてくれると思うし、取り合えず偽物だけ見せに行くのも有りだとは思う」
レンの頼みに対して俺はそう言い、取り合えず今日の目標の75層を突破したら、師匠の所に偽物を見せに行こうと言う事になった。
それから俺達は気を取り直して、探索を再開した。
「それにしても、ここらの素材は本当に採るのが難しいな……昔、リーザの所で採掘用の道具を作っておいて正解だったよ」
「確かに、これが無かったら普通の採掘道具じゃ、きつかっただろうな……」
「ジン君、レン君! 見つけたよ!」
再開して直ぐに俺とレンは、二人で鉱石を掘っていると見回りをしていたクロエ達が慌てた様子で戻って来た。
そしてその報告を聞くと、玉持ちの魔物を発見したと言われ、俺達は採掘を中断してクロエ達の案内で魔物達の所へと向かった。
「ほらっ、あの魔物が持ってるの玉だよね?」
「……間違いないな。皆、戦う準備は良いか?」
そう俺は声を掛けて、俺とレンはクロエ達の後方支援を行い玉持ちの魔物が居る魔物達と戦いを始めた。
魔物達は俺達の事に気づいておらず、奇襲する形で戦闘が始まった。
今回の魔物達はオーガが3体とオークが2体、そして武器持ちのスケルトンが5体と言う構成だった。
10体の魔物達だったが特に苦戦する事なく戦いは終わり、魔物達の死体を回収していると、地面に形を保ったままの玉をレイが見つけた。
「ジン君! あったよ!」
「気にしないで戦った方がよかったって事だな」
「まあ、でもこれで無事に二つ手に入ったな、俺の分も確保出来てよかったよ」
3度の失敗を経験していた為、駄目かと思っていた俺だったが無事に二つ手に入れる事が出来て安心した。
これで師匠の分とレンの研究材料分の確保が出来て、とりあえずは安心だ。
「それじゃ、後は今日の目標の75層の突破だけだな」
「そうだね。ボス戦楽しみだね。レイちゃん」
「うん! 玉持ちの魔物達との戦いでたまったストレスを早く発散したい!」
「俺は早く帰ってこの玉の研究をしたいけど、目標は目標だからな」
クロエとレイはやる気に満ちていて、レンは早く玉の研究をしたい様子だった。
その後、俺達は75層のボス部屋の前に到着して、装備の確認や体調に確認をして中へと入った。
「薄々、気づいてたけど70層からボスの種類も変えてきた感じだな」
70層のボスは赤いドラゴンだったが、75層のボスは青いドラゴンだった。
この感じだと、80層でまた違う色のドラゴンが出てきそうだな。
「俺としては有難いよ。ドラゴンの素材がこんな簡単に手に入るんだからね」
「まあ、本物の比べたら素材の価値は落ちるけど、それでも竜種の素材には変わらないからな」
そう俺はレンと話しながら、前方でドラゴンと戦ってるクロエ達の援護を行った。
ドラゴンがボスだと知ったクロエ達は物凄いやる気を見せて、楽しそうに二人は戦っている。
そんな二人の援護を俺達は後ろから行い、ドラゴンは徐々に追い詰められていった。
「グルォォォ!」
青いドラゴンは70層のドラゴンとは違い、魔法を積極的に使うタイプのドラゴンだった。
体の色と同じ、水魔法を思いに使っていたが俺とレンの魔法でその魔法は全て防ぎ、クロエ達の邪魔をさせなかった。
「レイちゃん、行くよ!」
「うん。やろうか、クロエちゃん!」
ドラゴンの体力も後僅かという所で、クロエ達は何やら事前に打ち合わせていたのか、互いに呼び合うとボスへと更に接近していった。
接近してくるクロエ達に対して、ドラゴンも近づかせないようにとブレスを放った。
そのブレスに対して、至近距離に居るクロエが魔法で弾くと、レイはドラゴンに向かってジャンプした。
それに合わせてクロエは魔法でレイを押し上げ、レイは天井スレスレまで上昇した。
「いっくよ~!」
天井スレスレまで上昇したレイは、その場でクルッと周り天井に足を付けると、笑いながらドラゴンに向かって突っ込んだ。
そんなレイの行動にドラゴンは驚き立ち尽くしており、ドラゴンは真面にその攻撃を食らってしまった。
元々体力の限界だったドラゴンは、攻撃を食らいそのまま倒れた。
「クロエちゃん、完璧な調整だったよ! ありがとね!」
「うん。練習の成果が出たね。成功して良かったよ」
そう笑い合うクロエ達に、俺とレンはさっきの攻撃について聞いた。
すると、以前から二人は一緒に前衛を任された時に使いたいコンボ技を磨いていたらしく、さっきの技もその一つだと言った。
「どうだった。ジン君、驚いた?」
「いや、まあ驚いたか驚いてないかって聞かれたら、普通に驚いたよ。まさか、ドラゴンに向かって突っ込むとは思わなかった」
そう俺が言うと、レイは「えへへ、ジン君も驚く技が出来てよかった~」と嬉しそうにそう言った。
それから俺達はドラゴンの死体を回収して、今日の攻略は終わりにして迷宮の家へと戻る事にした。
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