第368話 【深層地帯探索開始・2】


 あの後、71層を攻略して更に72層まで攻略してから初日の探索を終え、迷宮の家へと戻って来た。

 一日の疲れもあった俺達は先に風呂に入り、汗と汚れを落としてから夕食を食べる事にした。


「深層地帯、思っていた以上に楽しい場所だったね!」


「うん。特に普段出る魔物が今まで以上に強くなってて、戦いが楽しかった」


 戦闘が好きなクロエとレイは、道中遭遇する魔物がそれなりに戦えて楽しそうに言った。


「俺も予想以上に素材が良い物ばかりで満足だな、これがまだ20層以上あると考えると楽しみでしかないな」


 レンもまた素材の状態が予想よりも上だったみたいで、普段はあまり見せない笑顔を浮かべて言った。


「俺も同じく戦闘もそれなりに楽しかったし、満足のいく迷宮の難易度だったな……ただまあ、あれを普通の冒険者がやるとなると少ししんどそうだなとは思ったな」


「そうだね~、勝てない事はないかもだけど、私達みたいに楽しみながら行くってのは難しそうだよね」


「ああ、遊戯神様多分上位層に合わせて深層地帯は難易度を変更してるみたいだな……銀級冒険者以上じゃないと、攻略は不可能に近いな」


 銀級冒険者、もしくはそれに近い能力を持っていないと深層地帯の攻略はかなり厳しいと俺は感じた。

 その俺の意見には、皆も同意見だった。


「でもそうなるのも仕方ないんじゃないかな? あまり弱くし過ぎても、私達やアンジュさん達みたいな上位層の冒険者が簡単に攻略したら、折角の神様の迷宮が簡単だって思われるし」


「それは分かるかも、50層以前のままだと多分もう攻略しててもおかしくないもんね」


 クロエの言葉にレイは頷きながらそう言い、俺もレイの言葉と同じく50層以前の難易度だと今頃攻略していたと思った。


「今の時代、魔王が現れて全体的に強くなってたってのもあるんじゃないか? ジンの渡した資料には、戦女の人達の戦力も書かれてたんじゃないか?」


「あ~、多分そうかもな……まあ、勇者もなんだかんだ凄い力を持ってるからな、今は何処で何をしてるか分からないけど」


「あれ、ジン君なら連絡とか取ってると思ってたけど、そうじゃないんだね」


「元々勇者と会わないようにしてた俺が、何で勇者と連絡をとるんだ? まあ、でもギルドや姫様とは取ってるんじゃないか?」


 正直、死亡フラグが消えた今は別になんとも思っては無いが、だからといって連絡を取るような中でもないしな。


「でも勇者の場合、多少は旅の経路とかは教えて貰ってるからある程度は知ってるけど、アスカ達以外の戦女の現状は知らないな。勇者を追って旅立ったとは聞いたけど、それ以降の情報は知らないからな」


「そう言えば、そんな人達も居たね。アスカさん達が真面だったけど、ヤバい戦女の人達も居たね」


「勇者さんが旅立つ前に旅だったんだよね。国も探してないの?」


「一応、捜索はしてるって聞いたけど、それ以降は特に気になっても無かったから聞いてないな……今度、姫様の所に行ったらちょっと聞いてみようかな?」


 話に出て少し気になった俺は、今度姫様の所に行ったら聞こうとそう考えた。

 その後、夕食の時間は攻略時のちょっとした反省会を行い、食べ終わったらそれぞれの部屋に戻り休む事にした。

 翌日、朝食を食べた俺達は準備をしてる際に俺は、昨日の夜に考えていた事を皆に伝えた。


「今日の目標は75層の攻略だけど、深層地帯を軽く見てると痛い目に合いそうだから、皆の体調面を見てから75層の攻略をするかどうかボス部屋の前で決めようと思うんだけど、良いかな?」


「うん。それで良いよ~」


「私もその案でいいと思うよ。無茶をしたら駄目だからね」


「俺も別に良いぞ」


 皆は俺の提案に対してそう返事をして、俺達は家を出て迷宮攻略へと向かった。

 攻略再開から直ぐに、俺達は魔物の集団と遭遇した。


「ジン君、あの魔物が持ってる物って」


「……ああ、前に見つけたやつと同じだな。もしかしたら、本物かも知れないから確実に取ろう」


 その魔物の集団の中には、師匠に頼まれた玉と似た物を持った上位個体のオークが居た。

 あれが偽物なのか本物なのかは置いておくとして、偽物だとしてもレンの研究材料に使える。

 その為、俺達はあの玉を確実に確保する動きで魔物達との戦闘を行った。


「ぐ、グルォォ!」


「なっ、あの魔物ッ!」


 慎重に戦闘をしていた俺達の前で、玉を持っているオークはその玉を地面に投げつけ粉々にした。

 その光景を見た俺は何をしてるんだ! と思ったが、粉々になった玉は玉を割ったオークに何やら吸収されてる様子だった。

 何かヤバい事が起こりそうだと思った俺は、オークに向かって全力で魔法を放った。


「グルォォ……」


 粉々になった玉を吸収していたオークは、俺の魔法をよける事は出来ずにそのまま直撃して倒れた。


「あ、危なかった。何が起こるか分からないけど、危険な事なのは間違いなかったな……」


「う、うん。私も凄く嫌な予感したよ」


「私も、気味が悪いっていうかなんか変な感じだったよね?」


「あの玉、色々と調べた方が良さそうだな……」


 その後、俺達は次に見つけたら最初から全力で玉を取り、研究の材料として入手しようと決めた。

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