第366話 【深層地帯攻略準備・3】


 装備を渡した後、俺はふと店での事を思い出してクロエ達にルバトさんと会ったか聞いた。


「ルバトさんなら、よく住宅街の公園で冒険者の人達と一緒に訓練してるのよく見かけるよ」


「うん。ルバトさんって、ガフカ家の人なのに冒険者の人と気さくに話してて凄く溶け込んでるよね」


「マジで? 普通に気づかなかったな……」


 クロエ達の話を聞いて、俺はルバトさんが普通に冒険者達と交流してる事に驚いた。


「この間も商店街からの帰りに会ったけど、楽しそうに冒険者の人達と会話してたよ」


「そうなのか、もし暇な時があったら会いに行ってみようかな」


「住宅街の運動が出来る公園に居るから、会うならそこで待ってたら会えると思うよ」


 そうクロエに教えて貰った俺は、今度時間がある時にでも会いに行こうと考えた。

 その後、クロエ達と別れた俺は明日からの攻略の為、【異空間ボックス】の整理をする事にした。

 薬の数や必要なアイテムの数の確認を部屋でしていると、レンが部屋にやってきた。


「ジン、今良いか?」


「大丈夫だよ。どうかした?」


「新しい薬が出来たから、渡そうと思ってな」


「へ~、レンの新薬か。今回はどうな薬を作ったんだ?」


 そう俺は聞くと、レンは新しい薬について説明してくれた。

 新薬の名前は〝魔力回復速度増加薬〟といって、大気中から吸収する魔力の速度を上げ、自信の魔力回復速度を上げると言う薬だった。

 効果時間は大体一時間で、回復速度もかなり早いとレンから聞いた。


「似たような薬はあるけど、これはまた違うんだな」


「似てはいるけど違う。まあ、使ってみないと使えるものか分からないから、明日からの攻略の時にでも使ってみて感想を教えて欲しい。一応、安全な薬だから安心して飲んでくれ」


「レンの作った薬だから、そこは心配してないから大丈夫だよ。それに毒だったとしても、俺にはほぼ効かないからな」


 今まで特に活躍はしてないけど、【状態異常耐性】のスキル持ちである俺は、ほぼ毒は効かない体質となっている。


「この薬は他の物と同時に使う事は出来るのか?」


「そこはまだ検証してないから、今回の攻略ではジンが魔法を使う役割だから色々と感じた事を教えて欲しいと思ってな」


「成程、まだ完全に完成したって訳じゃないのか……分かった。その実験に付き合うよ。俺もレンの新薬は楽しみにしてたからな」


 そう俺は言って薬を受け取り、明日の楽しみが一つ増えてルンルン気分で整理の続きをやった。

 その日はなるべく、早めに休む事にした俺達は翌朝、いつもより早い時間帯に朝食を食べる為にリビングに集まった。

 そして朝食を食べる前に俺は、皆に調子は良いか確認をした。


「バッチリだよ」


「楽しみでちょっと寝るのが遅くなったけど、万全だよ!」


「俺も昨日は流石に早めに寝たから、特に悪い所は無い」


 三人共そう答え、万全の状態で俺達は深層地帯の攻略に迎えそうだった。

 それから俺達は朝食を食べ、装備に着替えて再びリビングに集まり、家を出て71層へと向かった。


「ん~、楽しみ~。どんな魔物が出てくるのかな~、クロエちゃん頑張ろうね!」


「うん。レイちゃん頑張ろうね」


 クロエ達はずっと楽しみにしていたからか、嬉しそうにそう言いながら歩いていた。

 そんな二人の後ろを俺とレンは、陣形の話をしながら付いていき、俺達は遂に71層へと足を踏み入れた。


「お~、魔力の感じが70層までと違うね!」


「こんな場所で育つ素材はどんな物があるか、楽しみだ……」


 レイとレンが言ったように、71層からは一気に大気中の魔力濃度が上がったように感じた。

 感知能力の高い、俺とクロエは特にそれを感じ取っていた。


「ジン君、ここから先の魔物は本当に強そうだね」


「ああ、俺達でも油断してると危ないかも知れないな。これまでみたいに散歩気分だと危ないから、気を引き締めて行こう」


 そう俺は皆に言って、俺達は71層の探索を始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る