第367話 【深層地帯探索開始・1】


 深層地帯の攻略をはじめて、一時間程が経過した。

 以前までなら一時間もすれば、一層は確実に攻略出来ていたが流石にそんな事は出来なくなっていた。

 まあ、遅くなってる理由の一つには攻略メインではなく、探索メインに切り替えているというのも一つある。


「ジン。薬はどんな感じだ? そろそろ、切れる頃合いだろ?」


「さっきの戦闘が終わった時に切れたな、使ってみた感想は使い勝手は良いとは思う。魔法使いは重宝する薬になるだろうな、一度飲めば一時間は持続するから特に違和感なく戦えた」


「そうか、効果に関しては特に意見とかは無いか?」


「回復速度が速い分、魔力がそんな無い人にはあまり向かないとは思う。事前にある程度のレベルの魔法使い向けだと説明をしないと、薬の効果を感じられないとは思うな」


 そう俺はレンの薬を飲んでみた感想を言うと、レンは「ありがとう。参考になる」と言った。


「そう言えば、薬を飲んでから違和感とかは無いか? 俺の時は無かったけど」


「うん。大丈夫だな、特に何も感じないな。ただ効果が切れた瞬間は、少し違和感を感じたな。やっぱり、回復速度が変わってるからそれが終わった瞬間はどうしても違和感を感じてしまった」


「まあ、そこはな……改善できそうなら、してみるよ。徐々に効果が切れるタイプの薬とかなら、そういうのは起こらないからな」


 レンは俺の感想を聞くと、手帳にメモをしていた。

 その後、素材採取が出来そうな場所へとやって来て、俺達はレンの指示に従って素材の採取を行った。


「ふぅ~、魔物と戦うより採取の方が疲れるね~」


「丁寧な作業はレイは苦手だからな、特にそう感じるんだろう」


「昔からレイは落ち着きがないからな……暇なら、別にクロエと近くを狩りしててもいいぞ? 採取は俺とジンだけでも大丈夫そうだし」


 そうレンが言うと、レイは「ううん。手伝う」とレンの提案を拒否した。


「だって、魔物と戦う時レン君は手伝うのに、採取の時に手伝わないのは不公平だからね。ちゃんと、そこは苦手でも手伝うよ」


「……成長したな、昔は家の手伝い一つしたくないって言ってたのに」


 レンはレイの言葉に、若干感動しつつそう言うと、レイは「茶化さないでよ!」と怒っていた。

 レン達は双子で普段はあまり絡む様子も無いが、こういうふとした時は揶揄い合ったりして仲の良さを偶に見せる。


「レイちゃん達見てると、本当に兄妹っていいなって思うよ」


「……そういいものでもないぞ? レイは特に昔っから、外ではしゃぎたいタイプだったから、双子だからって親も俺に任せっきりだったからな」


「確かに外で遊びたいって思ってレン君を連れまわしてたけど、レン君がずっと家に引きこもってるから、お母さん達から外に出してあげてねって私が言われてたんだよ?」


「だからといって、天気が悪い日も連れまわすのかおかしいだろ? 何度、雨の日に外に連れまわされて風邪を引いた事か……」


 レンは昔の事を思い出しながらそう言うと、レイは「それは、ごめんなさい」と反省した様子で謝罪した。


「まあ、でも今も一緒に居るって事はなんだかんだ二人は仲が良いって事だよな、それは良い事だと思うぞ?」


「仲は良いとは俺も思うよ。家族の中で一番、信頼はしてるからな」


「それは私もだよ~。冒険者したいって言った時もレン君、嫌々ながらも結局付いて来てくれたしね」


 レイはそう笑顔で言い、二人の仲の良さを再確認した俺達だった。

 その後、採取も終わり探索を再開した俺達は、歩きながら話題は先程の家族の話が続いていた。


「クロエって、一人っ子って話だったけど親戚とかはいなかったのか?」


「う~ん、小さい頃にはもうこっちの大陸に来てたし、お父さん達からそんな話は聞いた事無いかな? 英雄になって、国に居辛くなって出たって話を聞いてから親戚とかそういう話は聞かないようにしてたから」


「そうなのか、獣人族って家族が多いイメージだから、てっきりいるのかと思ってたよ」


 まあ、でも確かに幼少期から国を出て大陸さえも違っていたら、親戚が居たとしても会う事はほぼ無かっただろうな。

 そう俺は思い、悪い事を聞いてしまったと思ったが、クロエは特に気にしてる様子は無かった為、これ以上の言及はしないでおいた。


「——魔物だ。皆、気を付けて」


 俺達は話ながらも周りを警戒しており、近くに魔物が現れたら会話を止めて戦闘態勢に入った。

 そして出て来た魔物と戦いを始めた俺達は、それまでの緩い雰囲気から一転して集中モードへと切り替えて戦闘を行った。

 戦闘終了後は周囲の警戒しながら魔物の死体を回収を行い、再びそれまで通りの緩い会話へと戻り迷宮の先へと進んでいった。

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