第344話 【噂の迷宮・1】
旅行から帰宅した翌日、俺は朝食を食べた後に姫様の所へとお土産を渡しに行った。
「へ~、これがツケモノなの? 初めて見るわね」
「コリコリとした食感で美味しいですよ。皆、好きだって言ってかなり気に入ってましたから」
「そうなの? それなら、後でユリウス達と一緒に食べてみるわね。ありがとうジン」
姫様のお土産には、温泉宿で作られた木彫りのドラゴンの像と皆が気に入って食べていた漬物を渡す事にした。
姫様相手に漬物がお土産ってどうだろうと思ったが、クロエ達からは「良いと思うよ。姫様も好きになると思う」と言われて持ってきた。
実際姫様は、こういう珍しい食べ物とかも好きらしいから、さっきから興味津々といった顔で漬物を見ていた。
「そう言えば、姫様って新しい迷宮が出来た事って知ってますか?」
「知ってるわよ。【遊戯神の遊び場】でしょ?」
「えっ、なんですかその名前?」
「新しい迷宮の名前よ。何でも、これまでの迷宮とは違って入口に堂々と迷宮の名前と神様の像が建てられてたって話よ」
【遊戯神の遊び場】か、ゲームで似たような名前の迷宮は無かったし、この世界のオリジナルの迷宮という事かな?
それにしても、神が干渉した迷宮か……。
「取り合えず、私の方でも色々と調べてるけど分からない事の方が多いから、ジンも気になってるなら情報屋の所に行った方が良いわよ」
姫様にそう言われた俺は、確かになと思って迷宮の話はここではせず、温泉宿の事を姫様に話をした。
「魔女達でさえ、気に入る温泉宿ね。本当に効能が良いって事でしょうね」
「はい。レンが色々と調べてて、分かった事と言えば確かに効能が良くて入るだけでストレスの解消ゆ腰や肩の痛みを抜く効果があるみたいです」
「そうなの? 私も暇になったら、その温泉宿に泊りに行ってみようかしらね」
そう言った姫様に対して、俺は「良いと思いますよ」と言って、その時は昔見たいに護衛役として一緒に行きますねと言った。
その後、報告を兼ねたお土産渡しは終わったので、次はハンゾウの所へと向かった。
「ほ~、美味いなこれ? コリコリとした食感がたまらん。もっとないのか?」
「お土産を更に催促するな、欲しかったら温泉宿に買いに行け。それか、レンに金渡して漬物を作ってもらえ」
「ちぇっ、ちょっと冗談言っただけだろ……」
ハンゾウはお土産として渡した漬物を受け取ると、直ぐに口の中に入れてその食感に興奮していた。
そして更に量をねだって来たので、俺がそう言い返すと「冗談」と言って拗ねたように漬物の入った入れ物に蓋をした。
「それでお土産を渡しに来ただけじゃないんだろ? 迷宮の情報か?」
「ああ、姫様の所で迷宮に神が干渉しているみたいな事を聞いたけど、それは本当なのか?」
「本当だ。それも神々の中でも、人好きで知られる遊戯の神だな」
「……その遊戯の神についてだけど、俺はあんまり知らないんだけどそこら辺も含めて教えてくれないか?」
そう聞くと、ハンゾウは「良いぞ」と言って色々と説明してくれた。
まず、この世界には数多くの神々が居り、その中の一柱として〝遊戯の神〟という神が居る。
その神は名の通り〝遊び〟を司る神で、遊び場として時折迷宮を作る事があるらしい。
ちなみに遊戯神の作る迷宮は遊び心満載で作られる為か、本来の迷宮の神が作るよりも雰囲気が明るく作られるらしい。
「それと、普通の迷宮と遊戯神の作る迷宮では決定的な違いもあるんだ。それは、遊戯神の作る迷宮には迷宮内に様々なルールが存在するんだ」
「ルールが存在?」
「ああ、普通の迷宮はただ探索して下を目指すだけだろ? だけど遊戯神の作る迷宮は、遊び心で作られる迷宮だからか一層毎にルールが違ったりするんだ。これまで、遊戯神の作った迷宮であったルールは資料にまとめてるから、後で見たらいい」
そう言ってハンゾウは、遊戯神の迷宮内でこれまで存在したルールが載った資料を渡してくれた。
その量はかなりあり、これまでも遊戯神が作った迷宮は沢山あったんだなと思わされた。
「あれ、でもこれまで遊戯神の迷宮ってこんなにあったのか? 俺、今までそんな迷宮に行った事無いんだが」
「遊戯神の作る迷宮は、その迷宮が攻略されると消えるんだ」
「消える? 迷宮なのに消えるのか?」
「ああ、綺麗さっぱり無くなって迷宮が作られた場所は、元通り綺麗になるんだ」
ハンゾウの言葉に俺は益々その迷宮が気になり、宿に帰宅して俺は夕食の時間まで資料を読み続けた。
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