第343話 【温泉宿での休暇・3】


「新しい迷宮?」


 クロエ達は俺が話があると言って、迷宮という単語を出すと興味深々とした顔つきになった。

 そんなクロエ達に対して、ルークさんに教えて貰った迷宮の情報を伝えた。


「私達が知らない間に新しい迷宮が出来てたんだね」


「それも、デュルド王国にある迷宮の中でも上位クラスの大きさ……その迷宮に私達も挑戦するの?」


「そう思ってる。ただ俺達が戻った時に、まだ入れるかどうかだな。あまり迷宮に人が居ると、順番を待たないといけなくなるからな」


 新しく発見される迷宮は、出来立てという事もあり挑戦者がかなり多くなる。

 その為、俺達が休暇から戻ったタイミングでもし調査が終わって挑戦できるようになっていたら、俺達は順番待ちになってしまう。


「まあ、そうなったら仕方ないよね。迷宮には皆が来たいんだし」


「珍しいな、レイがそんな簡単に諦めるなんて何か裏があるのか?」


 レイの言葉に対して、レイの事を一番よく知っているレンは驚いた顔をしてレイを見ながらそう言った。

 そんなレンに対して、レイは「諦めたわけじゃないよ」と言って言葉を続けた。


「でもルールを守らないといけないからって、最近改めて思うようになっただけだよ。少しだけ、私も大人になったって事」


「あの、レイが成長したのか……家族として嬉しいな……」


 レンは笑顔を浮かべてそう言うと、レイは「なんでそんな笑顔で言うの!?」と怒っていいのか分からない様子でそう言った。


「あくまで予定として迷宮に行こうと考えてるとだけは頭に入れておいてくれ、迷宮に入れなかったらまた別の事を考えるよ。ドラゴン族から、いつか俺達と手合わせしたいと言われてるから、迷宮に行けなかったらドラゴン族と戦うのも有りだしな」


「ドラゴンと!? 私、そっちの方が気になる!」


「レイちゃん、流石にドラゴンさんと戦うのは無謀だと思うよ……」


「俺はそうなったら、行きたくないな」


 ドラゴン族から誘われてる事を伝えると、レイだけが乗り気で流石のクロエも乗り気のレイを引き留めようとしていた。

 レンに関しては嫌そうな顔で、絶対に行かないという顔をした。

 その後、話し合いは終わりにして解散した俺は、少しだけ宿の中を散策する事にした。


「あら、ジンが一人だなんて珍しいわね」


「ルル姉こそ、一人で居る所は珍しいですね。どうしたんですか?」


「朝風呂に皆で行ってたんだけど、私だけ先に出て来たのよ」


 そう言うルル姉は、少しだけ髪が濡れていた。


「それにしても、本当にこの宿は良い所ね。温泉も質が良いし、食事も凄く美味しいわ、老後はこの宿で過ごしたい気分ね」


「その気持ちは分かりますね。温泉もいいですけど、ここの雰囲気が凄くいいのは感じます。休暇に来て、良かったです」


「ヘレナには感謝しないといけないわね。こんな良い所の情報を見つけてくれて、溜まってた疲れが吹っ飛んだわ」


 ルル姉はそう言いながら、肩を回すと「あっ、そう言えば」と言って持っていたカバンの中をゴソゴソと何かを探し始めた。


「はい。これ、ジンが気になるかもって、前に神聖国に襲われた時に拾ったものなんだけど渡しそびれてたわ」


 そう言ってルル姉が出してきたのは、割れた石板に何やら文字が書かれた物だった。


「……この石板の文字って、もしかして古代文字?」


「みたいね。私も詳しく知らないけど、魔女を師匠に持つジンなら何か使い道を思いつくと思って拾っておいたのよ。どうせ、私が持ってても意味ないから貰ってくれるかしら?」


 そうして俺はルル姉から、古代文字が書かれた割れた石板を貰うと、ルル姉は「お昼寝しよ~」と言って去っていった。

 そして残された俺は石板の事は旅行から帰宅したら、師匠に聞こうと【異空間ボックス】に入れ、宿の散策を再開した。

 その後、お土産屋を発見した俺はそこでリカルドや姫様に渡す用のお土産を選び、特にそれ以外は興味が湧くところは無く部屋に戻る事にした。


「それでは、皆さままたの起こしをお待ちしておりますね」


「三日間、お世話になりました。雰囲気も凄く良くて、また絶対に来ますね」


 翌日、朝食の時間まで過ごした俺達は宿の人達に見送られる形で宿を出た。

 そして行きは旅行気分を味合う為に馬車で来たが、帰りは転移で一瞬で王都へと帰宅した俺達だった。

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