第345話 【噂の迷宮・2】


 そうして夕食後、シャワーを浴びた俺は皆を呼んで迷宮の事を話した。


「へ~、それじゃあ今までの迷宮とはかなり違った造りなんだね」


「ああ、それに迷宮にルールも存在するから他の迷宮以上に楽しめそうだぞ」


「それは今から楽しみだね! それに、このステータスを下げる部屋とか特に面白そう! 最近、これ言ったらあれだけどレベルが上がりすぎて普通の迷宮だと物足りないかもって思ってたんだよね」


 レイのその言葉に、クロエも「確かに、全力でやったら迷宮が壊れるか心配だったもんね」と言った。

 そんな二人の会話を聞いていたレンは、神の作る迷宮なら面白い素材が採れそうだと興味を示していた。


「レンもやる気になったみたいだし、本格的にこの迷宮に挑む準備をしようと思う。明日、ギルドに行って話を聞いてくるから、皆は迷宮探索の準備の方を頼めるか?」


 そう言うと、皆は返事をしてこの日は解散した。

 そして次の日、朝食を食べた俺はギルドへと向かいフィーネさんに迷宮について話を聞いた。


「ジンさん達も迷宮に挑むと思って、先にご予約しておきましたよ」


「本当ですか? ありがとうございます!」


 迷宮に挑みたいと言うと、フィーネさんは先に俺達の名で迷宮の挑戦者として予約をしてくれていた。


「旅行先でルークさんに迷宮の話をされた時、もう予約は取れないだろうと思ってましたが良かったです」


「今までのジンさん達の行動から、予測して動くのも私の仕事ですから」


 フィーネさんはそう笑みを浮かべながら言うと、迷宮の予約券を渡してくれた。

 その予約券には、第一探索者と書かれていて、一番最初に迷宮を探索する組と記載されていた。


「その券に書かれている通り、ジンさん達は第一探索者として迷宮に潜る事になってます。第一探索者は全部で5組で、ジンさん達の他にも冒険者の方が同じように探索する事になってます」


「そこは普通の迷宮と同じなんですね」


「はい。新しい迷宮で混雑するので、予約制を取り入れてますがその他は基本的に普通の迷宮と同じです。なので、探索速度が速いと先に迷宮のお宝も取れると思いますので頑張ってください」


 その後、フィーネさんから探索開始日を聞いた俺はギルドを出て、宿に戻る事にした。

 宿に戻って来たのは俺が一番最初だったみたいで、クロエ達はまだ帰って来てなかった。


「ジン、今日はギルドに迷宮の予約をしに行くって言って無かったか? こんなに早く帰って来て、予約できなかったのか?」


 部屋で待っていようと、二階に上がろうとすると食堂の方からルークさんが出てきてそんな事を聞かれた。


「いえ、もう予約は済ませてきました。と言いますか、予約されていたんですよね。ほらっ、俺達ってパートナー登録してるって言ってたじゃないですか? そのパートナーの方が先に予約してくれていたんですよね」


「……そう言えば、ジン達はパートナー登録をしてるって言ってたな」


「ルークさんこそ、迷宮の予約には行かなかったんですか?」


「俺は寝坊してな、エリス達が行ってるみたいだ」


 そう言えば、確かに朝食の時間にエリスさん達とは会ったけど、ルークさんとは顔を会わせなかったな。

 あの時点で、もうギルドに行ってるのかと思ってたけど寝坊だったのか。


「まだ旅行気分が残ってるみたいですね」


「まあな、久しぶりにあんなにゆっくりしたからな……まあ、もし予約とれたら迷宮でよろしくな」


「はい。ちなみに俺達は第一探索者なので、一緒に探索はかなり難しいと思いますけどね」


「予約も出来てて、更に第一探索者なのかよ。マジで俺達もパートナー登録しようかな……」


 ルークさんは俺の言葉に溜息を吐きながらそう言うと、エリスさん達の状況を見てくると言って宿から出て行った。

 そしてルークさんを見送った俺は、部屋に入り迷宮の資料を取り出した。


「神が作った迷宮だし、これまでの迷宮以上に対抗策を用意しておいた方がいいもんな……」


 そう考える俺はクロエ達が戻ってくるまでの時間、資料を見ながらルールに対する対抗策を考える事にした。

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