第339話 【温泉旅行・3】
その後、一回目の休憩時間となった俺達はその時間を使い、昼食の時間とした。
昼食は、俺とレンが二人で作る事になった。
「レンと一緒に料理を作る日が来るとはな……ってか、レンって最近料理はしてるのか?」
「してるよ。拠点に居る時は、自分で作ってるよ。気分転換になるんだよな、料理って」
レンはそう言いながら、手際よく作業を進めていて本当に料理をしていたんだなとその手つきを見てそう思った。
それから俺とレンの料理を皆に振舞うと、絶賛されながら皆は食べてくれた。
「久しぶりに人に振舞う料理を作ったけど、やっぱり人が食べてる姿を見るのも良いもんだな」
「まあ、これからの冒険では俺と交代で作れるからな、レンの負担も少しは減らせるよ」
「確かにジンの料理技術かなり上がってたな、久しぶりに見て驚いたよ」
「レンからそう言われると、嬉しいよ。頑張って来た甲斐があるな」
レンに褒められ、頑張って来て良かったと思いながら料理を食べた。
そして昼食を食べた後、直ぐに乗ると気分が悪くなると思って10分程食後の休憩をしてから、再び馬車に乗って移動を再開した。
その後、特に何事も無く俺達は目的地の温泉村へと到着した。
「お待ちしておりました。ご予約のジン様ですね。宿までご案内いたします」
村に到着すると、入口には宿の従業員らしい人物が待っていた。
「入口まで迎えに来てくれたんですね。ありがとうございます」
温泉村はその名の通り、一つの温泉宿を中心とした村。
この温泉村は知る人ぞ知る温泉で、貴族もお忍びで来る程の場所だと姉さんから聞いた。
俺は名前からもしかしてと思っていたが、この場所についてその思いが確信に変わった。
この温泉村、ゲームでも序盤から出てくる場所だな、改めて自分で見ると風情のある村だな。
「へ~、温泉村っていう名前だから沢山温泉のある宿があると思ってたけど、宿は一つだけなんだ」
「はい。小さな村ですので、宿は一つで十分なんです。温泉以外にこの地は時に何かある訳では無いですので、それなら体を癒す場として最大限おもてなしをしようというのが私達の代々受け継がれてきた考えなんです」
その言葉に俺は感心しながら、村の事を従業員の方に教えて貰いながら宿へと到着した。
そしてそのまま俺達は、今日から過ごす部屋まで案内してもらった。
また寝泊りする場所とは別で、折角の大所帯なら食事は一緒にしようと思って大部屋も一つ使う事にした。
金なら沢山あるからな、こういう時に使わないと生きてる内に使えるか分からない程に溜まっている。
「一度でも言ってみたいな、生涯かけても使えるか分からない金があるって……」
「いやいや、ルークさんもそれなりに稼いでいるじゃないですか? というか、冒険者としては俺よりも長い時間活躍してるんですから、お金なら沢山あるんじゃないですか?」
「……ジン。こいつは金遣いは荒いんだよ。パーティーの金には手は出してないから良いが、自分の取り分は基本的に直ぐ使ってる。最近になってようやく、貯金という概念を覚えたがまだ少ないんだよ」
ドルクさんからルークさんの事を教えて貰った俺は、その意外な性格に驚いていた。
「いやさ、ほらお金があると使いたくなってさ……この気持ち、分かるだろ?」
「ん~、必要な物は買うけど、それ以外は特に?」
「俺もジンと同じだな、研究費用が自分のだったら貯金は底をついてたと思うけど、研究費用はパーティー持ちだから、俺も特に使う事は無いし」
ルークさんの仲間を求める視線に対して、俺とレンがそう言うとルークさんはガックリと項垂れた。
「ジン達に関しては、逆に使った方が良いんじゃないか? 帝国に続いて神聖国も倒したんだから、国から相当なお金貰ったんじゃないか?」
「はい。かなり貰いましたね。なので、今回の費用は全額俺持ちですし、今度拠点の改装でもしようかなと思ってます。丁度、拠点の周りの家が空いたと情報が入ったので、買い取ってもっと広い家にしようかなと」
「はは、金のある人の考えは豪快だな……」
俺の考えを聞いたルークさんは、乾いた笑みを浮かべながらそう言った。
その後、俺達は宿が用意してくれた浴衣に着替えて、早速温泉に入りに向かった。
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