第335話 【片付け代行人・3】


 ゴミ処理の事を悩みながら迎えた神聖国の掃除最終日、俺と師匠は一緒に首都へとやって来た。


「……酷いとは考えてましたけど、かなりヤバいですね」


「そうね。最後の鬱憤を晴らす為に、盛大に暴れたみたいね……」


 首都の被害状況はかなり酷く、俺達が襲撃した際はまだ建物とかは無事だったが帰り際にそれらもぶち壊され、かなりごちゃごちゃしていた。

 更にその倒壊した建物の下に、俺達が倒した人達の死体がそのままだったりしていて、臭いもかなりきつい状況だった。


「師匠。取り合えずは、正門の方から徐々に片付けて行きましょうか」


「そうね。私は右側を担当するから、弟子ちゃんは左側をお願いね」


「はい。頑張りましょう」


 そう言って俺達は、最後の砦である首都の整備を始めた。

 作業開始から一時間程、俺はまだ自分の持ち場の全体の3割くらいしか進めていなかった。

 その理由の最大の一つは、首都の建物は大きすぎてゴミが他の街よりも多いせいだ。


「無駄に大きい建物とか見栄で作っていたってのは聞いてたけど、それがこんな風に俺の邪魔をしてくるとはな……」


 既に潰した神聖国に対して、俺は愚痴を言いながらも作業を続けた。

 その後、愚痴を言いながら作業を進めた俺は昼過ぎ位にようやく、自分の持ち場が終わり一息ついた。


「……あれ? 師匠はまだ終わってないのかな?」


 自分の持ち場が終わり、ふと師匠の方を見ると全体の8割までは片付けが終わってるが、そこで止まっていた。

 何かあったのかな? と思い師匠の方へと、俺は転移で向かった。


「師匠。俺の方は終わりましたけど、何かあったんですか?」


「あら、もう終わったの? ちょっとある物を見つけちゃって、それの対処をしていたの」


 そう師匠が言うと、足元の魔法陣みたいな物が砕け散った。


「もしかして、今のって悪魔召喚のですか?」


「ええ、そうみたいね。上手く隠していたみたいで、首都で亡くなった人の魂を吸い込んでベルロスみたいにこっちに来ようとしていたから、魔法陣を消してたのよ」


「そうだったんですね。全く気づきませんでしたよ……吸い取られた魂ってどうなりましたか?」


「大丈夫よ。向こうに持っていかれた分は、ちゃんと取り返したから召喚に応じようとした悪魔の力は上がってはいないから、安心していいわよ」


 師匠の言葉を聞き、俺は「流石、師匠ですね」と言って残り街の整備を一緒に行った。

 そうして無事に首都も綺麗に片付けた俺達は、報告の前に師匠と二人でお疲れ様会としてロブの店へと行き、一緒に食事をする事にした。


「こうして師匠と食堂で二人でご飯を食べるのって初めてですね」


「確かにそうね。師弟関係なのにこういった交流は一切なかったわね……弟子ちゃんはこういうのもっとしたいと思うのかしら?」


「そうですね。師匠の好きな物とか知らないので、師匠が暇な時は一緒に食事に行って師匠の冒険話とか聞きたいですね」


「ふふっ、私の冒険話が気になるのね。神聖国って面倒な相手もいなくなったし、暇な時はまたご飯に食べにでも来ましょうか」


 そう師匠と約束をした俺は、その日は師匠と二人の魔女が喧嘩した時の話を聞き、色んな意味で壮大で凄い楽しい話を聞かせた貰った。

 そして食事を終えた俺は師匠と別れて、王城へと向かい正面から姫様の部屋へと向かった。


「……ジンが来たって事は、もう神聖国の整備は終わったのかしら?」


「街の部分は終わりました。ただ道に関しては、竜人国がどのように使うかで整備しようと思い手はつけません。まあ、ある程度は馬車が通れるように整地はしてますが道と呼べる程では無いですね」


「それにしても早すぎるわね。結局、ジンが一人でやったのかしら?」


「いえ、師匠に手伝ってもらって半分は師匠にやってもらいました」


 俺一人じゃないと言うと、姫様は「放浪の魔女が手伝ったって、それだけでも凄いわね……」と師匠が手伝った事に驚いていた。


「取り合えず明日、竜人国へと行き色々と話してこようと思います」


「ええ、分かったわ。また何かあったら、報告をして頂戴」


「はい。それでは、俺は報告が終わったので帰りますね」


 報告に来ただけなので、俺は帰ろうとすると姫様から「ちょっと、待って」と呼び止められた。


「その明日の話し合いにだけど、この国からも使者を連れて行って欲しいのだけど良いかしら?」


「別にいいですけど、竜人国の土地となった場所の話し合いですが何かあるんですか?」


「ええ、今後の事も考えてデュルド王国は兵士の強化をする事にしたの、それでその訓練相手に竜人国にしてもらう事になったから、それの話し合いに使者を送る事になったのよ。それで、ジンが竜人国に行くなら一緒に連れて行って欲しいと思ったのよ」


「成程、分かりました。それじゃ、明日の朝、宿の方にその使者の方を送ってくだされば一緒に連れて行きますね」


 俺の言葉に姫様は「ええ、頼んだわね」と言って、今度こそ俺は宿へと帰宅した。

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