第333話 【片付け代行人・1】
元神聖国跡地の掃除をする事になった翌日、俺は早速現場へとやって来て作業に取り掛かる事にした。
まず最初に手を付けたのは、首都から離れた場所で元はただの村だった場所。
そこもドラゴン族の標的となり、ボロボロとなっていて家屋は全て燃え、石造りの家も破壊されていた。
「人自体は助けたけど、こういう光景も見るとちょっと申し訳ない気持ちになるな」
元々神聖国に住んでいただけの人達は、取り調べを行い特に怪しい点が無い人に関しては同盟国のいずれかの国に移住させている。
国に呆れ、国と共に死ぬんだろうと思っていた人達は今回の事で逆に解放され、殆どの人が嬉しそうにしていたと聞いた。
ただ中には、長年住んだ場所を強制的に移動させられてしまった事に対して悲しんでる人も居たとも聞いた。
「さてと、感傷に浸ってる場合じゃないし、さっさと作業を始めるか」
俺はそう意気込み、作業を始めた。
作業と言っても【空間魔法】を使い一か所に集め、【異空間ボックス】の中に入れて行った。
【異空間ボックス】に入れたゴミは、後でまた片付ける予定。
今はとにかく、作業効率を優先する事にした。
「よし、邪魔なゴミは無くなったな」
ゴミが無くなった村だった場所を見て、俺は【土属性魔法】で綺麗に整地した。
元々の地形は分からないが、ドラゴンの攻撃によってボコボコだった場所は俺の魔法で綺麗な土地へとたった数分で様変わりした。
「一か所整地するのに掛かった時間は大体、5分程度か……」
場所の広さでも変わってくると思うが、村程度の大きさならこの位で終わるという事が分かっただけでも良かった。
ただ一つ悪い事と言えば、この村の数倍首都は広いから今考えるだけでも少し嫌な気持ちになる。
「後はエルフ族の人に良い感じに自然感を出して貰ったら、ここは完成だから次の場所に行くとするか」
そう思い転移しようと思ったが、ふと俺は村の周りへと視線を向けた。
基本的に攻撃された場所は、人の住む場所ではあるが村に続く道の部分も大分ボコボコになっていた。
「……今はいいや、村とかの場所の掃除が終わってから道の整備をしよう。それに竜人国が訓練で使うとか言ってたから、このままの方が良いかもしれないからな」
俺は自分にそう言い聞かせて、ボコボコの道から目を逸らして次の場所へと向かった。
次の場所は最初の村に比べて、建物が少なくその分被害状況も少し低かった。
なので最初の村よりも少し早めに終わる事は出来たが、神聖国にはまだまだ沢山村や街の跡地はある。
「これ俺一人で出来る量じゃないな……師匠に一度、話してみるか」
一人じゃ時間を掛ければ、何とか出来るけど辛そうと思い俺は師匠に助けに求めに行った。
「良いわよ。弟子ちゃんが困ってるのに、師匠の私が助けてあげないのはおかしいもの」
「ありがとうございます! 本当に助かります」
俺の頼みに対して、師匠はそう言葉を返してくれた。
「森とかは隠れ里のエルフがやるんでしょ? それなら私達の仕事は、ゴミを集めて土地を整地するくらいよね?」
「はい。後は、道の整備もしようかなと思ってますが、そこに関しては竜人国の方と話し合って決めようと思うので、取り合えず今の目標としては神聖国の破壊された街の掃除ですね」
その後、俺は師匠と元神聖国の地図を開いて、持ち場の確認を行ってから再び俺は掃除へと向かった。
師匠が半分受け持ってくれた事で、俺は少し肩の荷が下りて気楽に掃除を進める事が出来た。
だがそれでも時間は刻刻と進み、気づけは陽が落ちそうな時間となっていた。
「何とか村とか街等、小さな所の整備は終わりましたね」
「そうね。後は首都と、神聖国の主要都市が残ってるわね。全部で10箇所だけど首都は他の所に比べて広いし、被害状況もかなり酷い所ね」
「はい。なので首都以外を一旦終わらせてから、首都を二人でやろうと考えてるんですが、良いですか?」
「そうね。その方が良さそうだから、その弟子ちゃんの案で行きましょうか」
そう師匠と話し合って決めた俺は、一旦今日はもう時間的にも遅いので明日また掃除をやりましょうと言って一緒に宿に帰宅した。
帰宅後は夕食を食べながら、クロエ達とどこまで進んだのかという話になり、もう大体の掃除が終わってると告げると驚いていた。
食後は真っ先に風呂を済ませ、部屋に入った俺はベッドに横になると、一日の疲れが溜まっていてすぐに眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます