第326話 【罰・2】


 首都の中には、数少ないが俺達と戦うと考えた者達が武器を持って集まっていた。

 一般人も中には居たが、彼らは俺達と戦うと決めて残った者達だ。

 慈悲なんてこれ以上は与えない、俺は指示を出して戦闘を始めた。

 だけど俺達の相手となるような者は一人も居らず、一分も掛らず数百人の人はその場で死んだ。


「い、命だけは……」


 中には辛うじて生き残った者も居たが、俺はそいつらを見逃す事はしなかった。


「何を言ってる。俺達と戦うと決めたのは、お前等だろ? もしかして、俺が優しく見えたか?」


「ヒッ——」


 一般人を見逃したのは、後処理をやりやすくするためだ。

 それ以外は無く、戦いをすると決めた者達に対して慈悲を与えるつもりは、今の俺には無い。


「師匠。こいつらの魂を使って、悪魔の召喚ってされる可能性はありますか?」


「ええ、だから先手を打っておいたわ。結界内での悪魔召喚を封印してるわ」


「流石、師匠ですね。ありがとうございます」


 その後、俺達はそのまま歩いて首都の中央まで向かう事にした。

 何故、態々歩いているのか? それは、神聖国の兵士を倒し為でもあるのと、中央に集めた者達に恐怖を感じて貰うためだ。

 俺達の力であれば、5分も掛らず神聖国を潰せる力はあるが、それではただ殺すだけで罰になってない。

 俺は神聖国には恐怖を感じつつ、苦しみながらこの世を去ってほしいと考えている。


「普段、優しい人が怒ると怖いって聞いた事があるけど、まさしくジン君がそうだよね……」


「うん。怒らしたら、駄目ってのが分かる」


「温厚な人程、溜めやすいって聞くからな……ジン。俺達に不満があったら、いつでも言ってくれよ」


「いや、皆に不満は無いよ……というか、俺そこまで怖い?」


 流石に皆からの印象が悪くなってそうで心配に思った俺は、そうクロエ達に聞いた。


「神聖国に来るまではまだ良かったけど、さっきの戦いの途中からジン君の顔から感情が消えてるから、ちょっと怖いかなって」


「えっ、マジで? ……多分、無意識にそうなってた。神聖国に入って、抑えてた怒りがまた出てきてるんだと思う」


 クロエ達の指摘で俺は、抑えていた怒りが表面に出てきている事に気付いて深呼吸をした。

 そして少しだけ冷静さを取り戻した俺は、「どうかな?」とクロエ達に聞いた。


「うん。少し普段のジン君に戻ったかな」


「まあ、ちょっとだけまだ怖いけどね」


 そう言われた俺は、感情のコントロールについて今後勉強する必要があるなと思いながら、先へと進んだ。

 それからも現れた兵士や武装した一般人に対して、俺達は容赦せず倒して進んで行き、遂に神聖国の上層部達を集めた建物へとやって来た。

 神聖国外に居るであろう神聖国の上層部に関しては、この場には集められなかった。

 しかし、結界内に居た上層部の者は師匠達の力で一般人を安全な場所に送るのとは逆に、この建物の中に転移で集めた。


「流石にこの先はちょっと色々とやりたいから、クロエ達には外でナシャリーさんとヘレナーザさんと一緒に待機しててほしいんだけど、いいかな?」


「……無理したら、駄目だよ?」


「大丈夫だよ。それじゃ、ヘレナーザさん、ナシャリーさん。皆をお願いします」


 俺はそう言って、クロエ達を建物の入口に置いて、俺は師匠と共に建物の中に入っていった。


「良かったの、クロエちゃん達を置いてきても?」


「はい。この後、俺は多分更に残虐になると思います。そんな姿をクロエ達には見せたくないですから、それに俺がおかしくなりかけたら、師匠が止めてくれると思いますからね」


「ふふっ、弟子ちゃんは本当に私の事を信頼してくれてるのね。ええ、分かったわ。どんな事をしてでも、弟子ちゃんが壊れないように私が守ってあげるわね」


 師匠からそう言われて数分後、俺達は上層部の者達を集めた部屋の前に着いた。

 俺はその部屋の前で深呼吸をすると、それまで抑えていた怒りのオーラを出しながら部屋の扉を開けて中に入った。


「こうして会うのは初めてだな、どうせ今から地獄に落ちる者達だけど挨拶はしておこう。俺は、ジン。お前等を地獄へと落とす為、ここまで来てやった。感謝するんだな」


 最大限相手を威圧しながらそう言うと、部屋の中に集められた者の大半は恐怖で震えていた。

 しかし、一部の武装している者は「この悪魔め!」と叫び、俺に向かって攻撃を仕掛けて来た。


「悪魔は、どっちだ」


「……え?」


 襲ってきた相手の両腕を俺は刀で切り落とすと、その光景を見ていた部屋の中に居た者達は更に恐怖を感じて泣き出す者も居た。


「どうして、俺がここにお前等を集めたのか分かってない様子だな。別に俺はお前達を生かそうなんて、一欠けらも思ってない。話し合いもしないつもりだ」


「な、ならばなぜ我らをこんな所に集めたんじゃ!」


「ほう。まだこの状況でそう言えるのか。集めた理由? そんなの決まっているだろ? お前等を恐怖のどん底に落とし、この世に生まれた事を後悔して殺す為に集めてやったんだよ」


 俺はそう言いながら、最初に襲ってきた相手に世界樹の葉で作った薬を投げかけると、切り落とされた両腕が再生した。


「この場において、お前らの生死の選択は俺が握ってる。心行くまで、絶望してくれよ」


 その言葉に更にこの場にいる者達は俺を恐れ、泣き叫び、逃げ出そうと窓や壁を叩くが壊れず。

 神聖国の上層部の者達はこの時から少しずつ、自分達がとんでもない化け物を敵に回してしまったと、ようやく理解し始めていた。


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