第305話 【王都の変化・2】


 その後、リーザの店へと到着した俺達だったが、店に入る前から異様な空気を感じ取っていた。


「……中に入ったら、なんか嫌な予感がするんだけど、俺の気のせいかな?」


「ううん、私も感じる。なんだかこの凄く嫌な予感がするね……」


 俺とクロエがそう言うと、レイは「私でもなんか感じるよ」と店を見ながらそう言った。

 しかし、ここで待っていても仕方ない為、俺達は店の中へと入る事にした。

 すると、そこで待っていたのは怒った様子のリーザと、リーザを宥めるガフカ家の姿、そして店の中が少し荒れていた光景が目に入った。


「……え~っと、どういう事ですかね?」


 事態を上手く理解できなかった俺がそう口にすると、リズさんがどうしてリーザが怒っているのか話してくれた。

 なんでも少し前に、自称銀級冒険者だと言う冒険者が店に来て、ガフカ家の噂を聞いていたらしく武器を作ってほしいと言ってきたらしい。

 リーザ的にその冒険者には作りたくないと感じて、無理だと伝えるとその冒険者は引き下がらずに何度もリーザに頼んできたらしい。

 それで頭に来たリーザは、何回言われても作らない! とはっきり言うと、その冒険者は態度を変え、店の棚を蹴り飛ばし。

 最後にその冒険者は唾を吐き捨てて、店から出て行ったらしい。

 そんな冒険者を相手にしたリーザは、頭に血が上り今にも暴れそうな感じで父親と祖父に押さえつけられている。


「あのゴミ野郎、ぶっ殺してやる」


「という訳で、リーザちゃんはこんな風になっちゃったの」


「いや、それならリーザがそうなるのも理解できますよ。そこまで酷い冒険者は、中々いませんよ」


 そう俺が言うと、クロエ達も「何その冒険者!」と怒っていた。

 そして俺はリーザの店を荒らした冒険者を探す為、リズさんに特徴を聞き店を出てギルドへと再び戻って来た。

 急遽戻ってきた俺達にフィーネさんは何かを察して、直ぐに部屋を用意してくれて、その部屋に移動した俺は何故戻って来たのか伝えた。


「そんな酷い冒険者が王都に居たんですね」


「はい。多分ですが、新しく来た冒険者だと思います。元々王都に居た人なら、リーザの性格を噂以上に知っていると思いますので」


「確かにそうですね……わかりました。ギルド側でも探す事にしますね。どうしますか? 店を荒らしたという事は、犯罪者で捕まえる事も出来ますが」


「外から来たという事は、自分が犯罪者で探されてると気づいたら元の場所に戻るだけで、捕まえるのが困難になりそうです。なので出来れば、ギルドには秘密裏に探って頂けると助かります」


 そうお願いをすると、フィーネさんは「分かりました」と言い、協力してくれる事になった。

 その後、俺達はギルドを出て俺は姫様の所にも協力申請をしに行くことにした。


「私達はどうしたらいいかな? 先に宿に戻っていたらいい?」


「……いや、皆には王都で名の知れた場所に向かってもらってそこに来てないか探ってほしい。クロエはシンシアの所に、レイはロブの食堂にいってくれ」


 そうクロエとレイに指示を出すと、レンは「俺はどうする?」と聞いてきた。


「レンはこういう調査は苦手だろ? 宿に戻って、リカルドにリーザの店で聞いた特徴の冒険者が宿に来てないか、聞いておいてくれ」


「了解」


 街の人に調査するというのはレンは苦手そうだと思い、宿に戻りリカルドに情報を聞く仕事をしてもらう事にした。

 そして各自、自分の持ち場の調査が終わったら宿の俺の部屋で集合と伝えて解散した。


「……リーザの店で暴れた冒険者が居る? それ、本当なの?」


「はい。荒れた痕跡もしっかりありましたし、リズさんが嘘をつく理由がありませんからね」


「怖い者知らずって本当に居るのね……」


 俺の話を聞いた姫様は、俺の事を見ながらそう言った。


「どうして、俺の事を見ながら言うんですか?」


「そりゃ、ジンを見てそう思ったからよ。ジンの事だから、その冒険者を徹底的に追い詰めるんでしょ?」


「はい。リーザの店を荒らしたのに、のうのうと生活はさせませんよ」


 自分でも分かるくらい、俺はリーザの店を荒らした冒険者に対して怒りを感じていた。

 そんな俺を見て、姫様はそんな事を言ったのだろう。


「わかったわ。その馬鹿な冒険者を捕まえるのに協力するわ」


「ありがとうございます。姫様」


 そう俺はお礼を言い、姫様にしてもらいたい事と冒険者の特徴を細かく伝えて俺は宿へと帰宅した。

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