第306話 【王都の変化・3】
宿に帰宅後、クロエ達よりも先に帰宅した俺は先にレンと情報交換をする事にした。
「全員覚えてる訳では無いらしいが、リーザさんの店で聞いた特徴の冒険者は来てないって言われた。でも、それとは別の態度が悪い冒険者は来たと言ってた」
まずリカルドの店には件の冒険者は来てないらしいが、別の態度の悪い冒険者が来ていたらしい。
なんでもリカルドの宿は充実さに比べて値段が安いのに、更に値下げ交渉をして来たらしく、リカルドが断ると扉を蹴って出て行ったらしい。
他にもそれと似たような案件が数件あって、最近の王都は変わったなとリカルドも感じていたとレンはそう言った。
「俺達が気づくまで、色々と問題が起きてたみたいだな……」
「最近、ジン以外は休暇を貰って王都の様子の変化に気づくのが遅れてたからな、その間に起きたみたいだな」
「……確かに、あまりそういった所に目を向けてなかったな。世界が平和になった事で、馬鹿な行動する奴が増えたのかも知れないな」
「だとしても、王都でそんな馬鹿な行動する奴が現れるとはね……世間には知られないけど、勇者が居るって分かってるのにな」
レンの言葉通り、世間では王都にはまだ勇者が居る事になっている。
それだけではない、自分で言うのもあれだが俺の存在も世間には知られているし、ユリウスや戦女達も王都には暮らしている。
「もしかしたら、王都に集まってきた人の中に悪人も混じってるのかも知れないな……でなきゃ、こんな分かりやすい馬鹿な行動はしないだろ」
「だとしたら、誰がその首謀者かだよな……魔王軍って可能性は?」
「無い事は無いと思う。あの場に集まった魔王軍は、俺達が全部片づけたけど他の所で活動していた魔王軍に関して、俺達は手を下してないから生き残りが居る可能性は高いと思う」
レンとそんな話をしていると、丁度クロエ達が戻って来た。
そして、クロエ達の様子から何やら向こうでも何かあったみたいだと察した。
クロエ達の話を聞くと、リーザの店同様に他の店舗でも同じような冒険者が居たらしい。
そして、どれも違う冒険者みたいだ。
「……王都で何が起きてるんだ?」
「変だよね。魔王軍との戦いが終わって、直ぐにこんな事が起きるなんて」
「偶然とは思えないよ……」
クロエ達の言葉を聞いた俺は、同じ事を考えていた。
そしてクロエ達には、今日は宿で待機しておいてくれと頼み、ハンゾウの所へと向かった。
「そろそろ来る頃だと思ったよ。英雄さん」
「ハンゾウ。王都で何が起きてるんだ?」
「王都で、というより正しくはこの大陸でだな。お前や勇者の活躍は、多くの人々に生きる気力を与えた。それまで魔王軍に怯えて暮らすだけだった人達が、今じゃ笑顔を取り戻してる。皆が幸せ、そう考える人が殆どだ」
ハンゾウはそこで言葉を止めると、俺の顔をジッと見つめた。
「皆が幸せを感じると、不都合になる奴らが居る。それは誰かお前は分かるか?」
「……ッ! 神聖国か!?」
「流石、ジンだな。ご察しの通り、今王都や他の地域で起きてるちょっとした問題は、神聖国がやってる事だ。証拠となる物見せられないが、確かな情報だ」
「いや、神聖国なら辻褄が合う。世界が平和になって、一番不利益なのはあの国だからな」
神聖国フォルティニア。
この大陸に存在する国の中でも、最も神を信仰している国として知られている。
しかし、実際は内部の人間は腐った人間が多く、自分達に不利益が生じると裏から世界を混乱に貶めようとする者達だ。
ゲームの設定で書かれていて、神聖国という名は相応しくないだろとゲーマーの中では言われていた。
「だが動き出すには早すぎないか? まだ魔王が倒されて、そんなに経ってないぞ?」
「……何も魔王が倒されたから、あいつらは動き出したわけじゃない。この時代の英雄が当確を表した事で、不利益が生じるかもしれないと考えた神聖国は早く行動を移したに過ぎないんだ」
「……俺が活躍したから、先に先手を打たれたという事か」
自分の活躍でこうなるとは思ってなかったと、俺は少しだけ自分のせいかと悩んだ。
「言っておくがジンのせいでこうなった訳じゃないから、そこだけは間違うなよ? あの国は勇者が現れた時点で、既に用意を始めていたんだ。でなきゃ、こんなに早く行動に移せるわけないだろ」
ハンゾウは俺の気持ちを察してか、そう言ってきて俺はその言葉に少しだけ元気づけられた。
「それで、ジン。このまま黙ってる訳じゃないだろ? お前は俺の恩人だ。手伝える事があったら、何でも言え」
「……実力のある情報屋が、味方に付いてくれるのは有難いな。それじゃ、早速だがこの件に関してもっと情報を探ってほしいんだが頼めるか?」
「ああ、了解した。全力で神聖国について調べてやるよ」
その後、俺は店を出て調査が終わるまでの間、俺の方でも色々と動こうと宿に帰宅してクロエ達ともう一度話し合いをした。
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