第298話 【魔王討伐・2】


 魔王の技の中に一つに【魔王結界】という技があり、その技は結界内の魔力を自由に扱うとレンは言った。

 成程、あれが魔王結界の魔法陣なのか。

 俺はレンの話を聞いて、ゲームの事を思い出しながらそう思った。

 ゲームではあんな魔法陣を見なかったから分らなかったけど、あの結界は初めてプレイした時は相当苦しめられたな。


「って事は、あの中央の人影に見えたのって魔王だったのかな?」


「多分、でも魔王は魔王でも本体じゃないと思う。ナシャリー様から聞いたのはもう一つあって、魔王は一体自分とほぼ同じ分身体を作る事が出来るらしい。それでさっきの魔法陣の人影に見えたのは、分身体の魔王だと俺は思う」


 クロエの言葉にレンがそう答えると、魔王城の方から轟音が鳴った。

 魔法陣の効果として、範囲内の魔力を縛る効果だったり、かなり厄介なデバフを掛けられる魔法陣だった筈だ。

 その魔法陣を俺が壊した事で、激しい戦いが再開したのだろう。


「しかし、あんな凄い結界があったとはな気づくのが遅れてたら、中の勇者達も大変な事になってただろうな」


「そうだろうね。いつの間にか出来てたから、気づかないで待ってた方がおかしくないもんね」


「……気にはなるけど、外の警戒も必要だからな。無事に勇者達が戻ってくる事を祈ろう」


 そう俺は言って、勇者達が無事に魔王城から帰還するのを俺達は外で警戒しながら待つことにした。

 あれから少し経ち、もう一度巨大な魔法陣が作られそうになった。

 今度は空も警戒していたので、完成する前に俺は斬撃を飛ばして壊すと、魔王城の方から「クソガァァ!」と怒りの声が聞こえて来た。


「今のって魔王かな?」


「まあ、多分そうだろうね。折角の大技をジンが簡単に壊して、怒ってるんでしょ」


「いや、だってね~。あんな何も対策してないのが出て来たから、そりゃ壊すに決まってるじゃん?」


 レンの言葉にそう返すと、レイが「確かにあんな的みたいな技する方が悪いもんね」と俺の言葉にそうのってくれた。


「魔王の誤算は、外にこんな強い化け物が居るって事だろうな……」


 そんな俺達の事を見て、レンは溜息交じりにそんな事を言った。


「あれ? そう言えば、さっきの魔王の叫び声から魔王城の方から音しなくなったね。終わったのかな?」


「ん~? どうだろう。中で何か起きてるか、イマイチ分からないからな勇者達が戻ってくるまで、終わったかどうかは……」


 そう言おうとすると、魔王城の入口の方から人の集団が出て来たのが目に入った。

 先頭には勇者達が居て、姫様も無事の様だった。


「終わったみたいだね」


 俺の言葉にクロエ達は頷き、戻ってくる勇者達を俺達は出迎えた。

 その後、勇者、姫様、ユリウスと俺達で集まり、魔王との戦いについてどうだった聞いた。


「苦戦はしたわね。でも、何とか勝てたわ」


「魔王が死ぬ瞬間もちゃんと見たので、あれで生きてるという事は無いと思う」


 姫様とユリウスがそう言うと、勇者も続けて「ジンのおかげだね」と突然そんな事を言った。


「魔王の技、外からジンが壊してくれたんでしょ?」


「魔法陣の事なら俺が壊しましたけど、そんな勝ち負けを決めるような技だったんですか?」


「ええ、あれには苦労したわね。私達の魔力は制限される上に、視界を悪くする魔法とかも使われて、本当に危なかったわ」


「守る事は出来ても、攻撃に出る事が出来なくなってジリ貧状態になったんだよ。そんな時に、ジン君が魔法陣を壊してくれて魔王を追い詰める事が出来たんだよ」


 俺の言葉に姫様とユリウスはそう言い、俺が魔法陣を壊さなかったらまだ戦ってるか、負けていた可能性も高いと言った。

 ふむ、確かにヤバそうな結界だとは感じたけど、そこまで酷い状況だったのか早めに気づいてよかった。


「ジンが外に居てくれて、本当に良かったわ。居なかった時の事を考えると、ゾッとしちゃうもの」


「そうですね。僕もジン君が居なかったら、あの魔王に勝つことは厳しかったと思います。ジン君、本当にありがとう」


 そう勇者が俺にお礼を言うと、姫様達もお礼を言ってきた。

 その後、勇者一行は来た時と同じく転移を使わずに戻るらしく、俺達は先に王都に戻る事にした。


「あれ、ジン達じゃないか? もう魔王討伐は終わったのか?」


 王都に戻って来た俺達は、まずは汚れを落としたいと思い、リカルドの宿屋へと帰って来た。

 リカルドは俺達の姿を見ると、驚いた顔をして出迎えてくれた。


「うん、終わったよ。勇者達は行きと同じく、転移は使えないらしいから向こうで別れたんだ」


「成程な、という事は数日後には王都も騒がしくなりそうだな……先に仕込みでもやっておくか」


 リカルドはそう言うと、裏に戻り食材の仕込みへと向かった。

 そして俺達は各々、汚れを落として夕食までの時間はゆっくりと休む事にした。

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