第280話 【黒色の悪魔・2】
「ハハハッ! こんな戦い初めてだぞ、ジン!」
戦いが始まり、激しい攻防が始まるとベルロスは嬉しそうな声でそう叫んだ。
ベルロスとは違い、俺は戦いに集中している。
魔法も剣技、どちらも技術が高いベルロスは近寄っても離れても厄介な相手。
師匠達との修行では死ぬ事はないと分かっていたから、多少の気持ちの余裕があった。
しかし、今回は油断したら死ぬというのが分かっていて、俺はずっと緊張感に包まれていた。
「ふぅ~、流石は悪魔の中でもトップの力の持ち主だな。修行後でここまで苦戦したのは、お前が初めてだよ」
「俺も同じ気持ちだよ。強くなってから、俺をこんな戦いを楽しませてくれたのはジンが初めてだ。魔女共は戦ってくれないからな、力の封印なんてセコイ事してくるだけだから会わないようにしてたが、お前とはずっと会いたかったぜ」
「俺は会いたくなかったがな」
ベルロスの言葉に俺はそう返し、刀に力を入れベルロスに切りかかった。
その攻撃に対してベルロスは、魔力で作られた剣で簡単に受け取るねと、ニヤッと笑みを浮かべた。
「そう連れない事をいうなよ。ずっと見守ってたんだからさ」
そう言いながらベルロスは、超至近距離から強力な魔法を俺に放ってきた。
直撃する瞬間、俺は転移で回避する事が出来たが、転移した先にベルロスは先回りして更に追加で攻撃を仕掛けてきた。
「ぐッ」
転移先にまで攻撃を仕掛けられた俺は、よけきる事が出来ず腕に傷を負った。
俺は怪我の痛みに耐えつつ、魔法を放ちベルロスから離れ回復薬を飲んで傷を回復させた。
たった少しの切り傷だとしても、ベルロスの能力には毒関連のスキルもある。
それらの事を考えたら、回復薬を出し惜しみせずに使うしかない。
「勘が良いな、今の攻撃には毒を付与してたのに直ぐに回復薬を飲むなんて……流石、俺の見込んだ人間なだけあるな!」
「ちっ、やっぱりかよ」
毒があるかもと警戒していた俺は、ガチで毒を付与されていた事に怒りを感じながらそう言葉を吐き捨てた。
そして、俺とベルロスの戦闘は激しさを増して行った。
あれから何時間経っただろうか、戦いの余波によりこの辺りの地形はボロボロとなり、遠くの方には王国の騎士団の姿も目に入った。
「ジン。やっぱりすごいな、この俺とこれだけの戦いを繰り広げられる人間が居るとは思わなかったぞ」
数時間の激闘の末、俺とベルロスは互いにかなり体力も魔力も無くなってきていた。
しかし、そんな状況でもベルロスは笑みを浮かべ戦いを楽しんでいた。
この戦闘狂の化け物は、いつになったら倒れるんだ……。
少なくともあいつも体力と魔力を消耗していて、無限に戦えれる訳ではないのだけが救いだ。
だが、そろそろ俺の気力の方が持ちそうに無くなってきた。
体力と魔力はアイテムでどうにか出来るが、既に頭がボーとしてきていつ倒れてもおかしくない状態だ。
「……ベルロス。そろそろ、終わりにしないか?」
「流石、ジンだな。俺も同じことを思っていた。まさか、ここまで人間のジンが耐えられるとは思わなかったが。そろそろ、楽しい時間は終わりにしよう」
俺の言葉に終始笑みを浮かべていたベルロスは、笑みを消して真剣な顔をしてこちらを見て来た。
「改めて名乗り直そう。我は魔界の最上位悪魔種の一人にして、黒の名を持つ悪魔。名はベルロス」
「冒険者、ジン」
互いにそう名乗りを終えると、地上に降り立ち一呼吸をおいた俺達は一気に接近して持ち込み刀と剣がぶつかり爆風が起きた。
ドラゴンの素材で出来た俺の愛刀は、ベルロスは魔力で出来た剣とぶつかると刀身に傷が入った。
ここまで持った方がすごい方だ……だが、あと少しだけ耐えてくれよ!
「ハァ! ベルロス。俺はお前に勝つ!」
「ハハッ、最後の最後で更に力を上げるんだな! 凄いぞ、ジン!」
搾りかす状態の俺は、体中から力を集め攻撃に全振りしてベルロスに攻撃を続けた。
その猛攻にベルロスは再び笑みを浮かべると、フラりと体が揺れ俺の刀が心臓へと刺さり、ベルロスは血反吐をドバッと吐いた。
「お前、最後……」
「いや、手は抜いてない。グホッ……俺も限界だったんだ。ハァハァ、俺を倒したんだ。誇っていいぞ、ジン」
血反吐を吐きながら、ベルロスは勝利した俺を褒めた。
そしてそのままベルロスは意識を失うと、パタリと地面に倒れてベルロスの体は灰のように消えた。
ベルロスの最後を見届けた俺は、勝利を確認して限界を過ぎていた俺は意識を失った。
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