第269話 【貴族令嬢との模擬戦闘・3】
その後、俺達は姫様の部屋で待機をしてティアナ達が到着したら一緒に訓練場の方へと移動した。
そうしてまずは、連戦にならないようにとクロエとティアナの試合が始まった。
お互いに魔法使いとしての実力は高く、最初からかなり激しい攻防が始まった。
「二人の魔法凄いね。兵士同士の訓練で偶に魔法戦見るけど、あんなレベルの魔法戦は見ないよ」
「二人のレベルは国の中でもトップレベルですからね。特にティアナさんは、才能だけでも凄い人なのに努力も怠りませんからね。全属性の魔法の上、空間魔法も自在に扱える魔法使いは数少ないですから」
ノルフェン家の才能を色濃く受け継いだ上に、努力を怠らない努力家であるティアナが強くならない訳がないと昔から思っていた。
それから10分程、魔法戦を繰り広げた二人だったが時間切れとなり引き分けとなった。
「ティアナさん、凄いですね。前に戦った時から、また腕を上げましたよね」
「ふふっ、そう言ってくれると頑張った甲斐があったわ。ジン君達が頑張ってるのに王都でぬくぬくと生活出来なかったから、お父様とおじい様に頼んで迷宮に連れて行ってもらって修行してたのよ」
ティアナはそう言うと、流石に戦いで疲れたのか観客席である俺達の方へと来て、用意していた回復薬を飲みながら椅子に座った。
「それじゃ、次は私とジン君だね!」
ミリアーナは元気よくそう言うと、走って行き準備運動を始めた。
そんなミリアーナを見ながら俺も立ち上がり、念入りに体を動かした。
そうして俺はいつもなら刀だ戦うのだが、今回はミリアーナは魔法戦をしたいというご所望の為、刀は使わず魔法だけで戦う事にした。
「それではミリアーナさん、準備は良いですか?」
「いつでも良いよ! ジン君なら私の全力を受け止めてくれるから、最初から飛ばしていくからね!」
「はい。どんとこいです。それじゃあ、レイ。合図よろしく」
「了解! それじゃあ、二人共。準備は良い?」
レイはそう確認すると、俺とミリアーナは互いに頷くと俺達の顔を確認したレイが「試合開始!」と叫んだ。
試合開始早々、ミリアーナは魔力がかなり込められた火属性の魔法を数発放ってきた。
「甘いですよ!」
ミリアーナの奇襲に対して、俺は魔法を相殺させる為に水の魔法でミリアーナの魔法を消した。
それを目の当たりにしたミリアーナは「かなり、魔力込めたのにな……」と若干悔しそうな顔をしたが直ぐに新たな魔法を放ってきた。
「良いですね。前より魔法の威力も、魔法の捜査技術もかなり上がってますね。かなり修行したんじゃないですか?」
「皆に負けてられないから、修行の一環として冒険者になって、その時に仲良くなった冒険者の人達に、魔法の使い方を教わって色々と勉強もしてきたんだよ」
「そうだったんですね。だから以前とは違い、かなり実戦的な魔法なんですね」
前までは学園で学ぶ普通の魔法だったが、この期間の間にかなり実践向きの魔法へと様変わりしていた。
その後、かなりの数の魔法を放ったミリアーナは徐々に魔力が無くなって行った。
そして俺は、その隙をつき魔法をミリアーナに直撃させ、この試合は俺の勝利で終わった。
「あ~、負けた~。でも悔しくない! 前より、戦えてる感があったし! どうだったジン君?」
「以前からかなり成長したと思いますよ。特に実戦的な魔法を学んだ事で、威力と速度が以前とは段違いでした」
「えへへ~、頑張った甲斐があった~」
ミリアーナは俺が褒めるとそう嬉しそうに言い、レイの所にいって回復薬を飲みながら楽しそうに会話を始めた。
それから少しだけ休憩を挟んで、俺とティアナの勝負を始めた。
ティアナもミリアーナと同じく、刀を使わない純粋な魔法勝負を頼んできた。
「ジンさん、行きますね」
試合開始の合図をレイが言うと、間髪入れずにティアナはそういって一気に魔法を放ってきた。
ミリアーナとは違い、ティアナには【空間魔法】という魔法があり、その魔法を使った予測不可能な軌道の魔法が俺を襲った。
しかし、俺はその魔法を俺に直撃する前に全て相殺させ、俺は逆に転移を使いつつティアナへと魔法を放った。
「うわ~、【空間魔法】の使い手同士の戦いってこうなるんだ……」
「いつみてもジン君とティアナの戦いは凄いわね」
「転移を駆使した戦いなんて、普通はみれないですからね」
俺達の戦いを見てるクロエ達は、俺達の戦いを見ながらそう感想を言っていた。
皆の言葉を聞いていると、魔法戦をしていたティアナが魔法を撃つのを止めたので俺は「どうしましたか?」と聞いた。
「よそ見なんて、ジンさん試合に集中してください」
「あっ……すみません。失礼な行為でしたね。気を付けます」
ティアナからの指摘に俺は直ぐに謝罪をして、試合を再開させた。
再開後はクロエ達の言葉に耳を傾けず、ティアナとの勝負に集中した。
試合結果は俺の勝利で終わったが、ティアナは満足いく試合が出来たのか「ありがとうございました」とスッキリした顔でそう言った。
その後、暫く試合内容について話をしていると、城の敷地内から物凄い爆音が鳴った。
「今の音、何かあったんですかね?」
「ちょっとまってて」
姫様は直ぐに従者を呼ぶと、何があったのか聞いた。
そして爆音の正体を聞いた姫様は、なにやら頭を抱えて溜息を吐いた。
「どうしたんですか? 何か問題でも起きたんですか?」
「問題が起きたというより、再発したって言った方がいいかしらね……」
「再発……もしかして、勇者達ですか?」
そう俺が聞くと、姫様の愚痴を聞いていたティアナ達は「またなの?」と言って頭を抱えてる姫様を見た。
「最近は戦女同士で仲も良くなってると思ってたけど、少し見ないだけで再発なんて……本当にもう子供じゃないんだから、辞めて欲しいわ」
姫様が勇者達の愚痴を言うと、再び爆音になった。
それを聞いた姫様は「……ちょっと行ってくるわ」と言って、勇者達の方へと向かった。
「どうするジン君? 姫様だけで大丈夫かな?」
「まあ、今までも姫様が面倒見てたって言ってたし大丈夫だとは思うけど……」
「フィーちゃん、楽しみを取られてご機嫌ななめだったよね。今のフィーちゃんが行ったら、逆に勇者さん達が危ないんじゃないかな?」
俺の予想してる事をミリアーナが口にすると、クロエ達は「あっ……」と口にすると姫様が出て行った訓練場の入口の方を見た。
「……遠くから一応様子を見ておきましょうか。万が一の事が起こるかもしれませんので」
「そうですね。昔ほど、癇癪は起こさなくなったとはいえ姫様は楽しみを取られるのが一番機嫌が悪くなるから、もしもの事を考えて見張っておきましょう」
「フィーちゃん、暴れないでよ……」
そう俺達は姫様の事を心配に思いつつ、訓練場から出て爆音が鳴った方へと向かった。
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