第253話 【VS剣聖・2】
「それにしても、ユリウスさんどうしてあんな姫様に頼んでまでジン君と戦いたいんだろうね」
姫様の所で話を聞いた後、宿に戻って来て食事をしていると、ふとレイが先程の会話を思い出してそう言った。
「そうだよな、ついこの間戦ったばかりなのにここ最近、滅茶苦茶戦いたそうにしてるのが謎なんだよな……」
「もしかして、前の時にジン君に手加減されたのが悔しかったんじゃないかな? それで手加減無しの本気で戦いたいから、態々姫様にお願いしてジン君と戦かえる場所を用意したとか?」
う~ん、クロエのその予想が多分当たってそうだ。
手加減した相手に負けて、悔しくて再戦って筋が一番だろうな。
「でもジン君が本気で戦ったら、ユリウスさんが危ないとかよりも周りに被害が出るんじゃない?」
「う~ん、気を付けはするけど被害は出るだろうね。そこの所、どう考えてるのかは明日行かないと分からないな、レイには悪いけど少しの間だけ一人で兵士達を見ててくれるか?」
「いつも交代で見てるし、大丈夫だよ」
その後、今度レイにはお礼をすると約束をして話し合いは終わった。
それから数日後、姫様からユリウスの頼みを聞いて翌日に試合は次の俺の休みの日にしたいと言われ、特に予定も決めてなかった俺はその日でいいと伝えた。
そして戦う場所だが、王都だと騒ぎになるかもと言われ、少し前に魔王軍から取り返した土地で、まだ荒れてる状態の所があるからそこで戦うことになった。
「ジン君、戦いの申し出受けてくれてありがとう。姫様に頼ませる形になって申し訳ないけど、どうしてもジン君とはもう一度戦いたくてね」
「別に良いですよ。……ただまあ、次同じような事をしたら今後の関係を見直す事になるかもしれませんけどね」
そう注意するように言うと、ユリウスは改めて「うん、今回で最後にするよ」と反省した様子でそう言った。
「弟子ちゃん、結界はもう大丈夫よ。いつでもはじめてもいいわ」
「ありがとう師匠」
「ふふっ、この位良いわよ。弟子ちゃんの頼みだもの」
今回、荒れた土地で戦うことになったが流石にあまり被害を出したらその後が大変だろうと思い、俺とユリウスが戦う周りに結界を張って貰う様に師匠に頼んだ。
「あれが魔女。凄まじい魔力だね……」
ユリウスは勿論、俺とユリウスの戦いを見に来た姫様も師匠の存在に驚いていた。
まあ、師匠にあったら誰でもそう思うよな……宿の人達は今でこそ慣れたけど、最初の頃は師匠の存在に滅茶苦茶ビビっていた。
今では、一人の客としてリカルドも普通に接している。
「それでユリウスさん、本当に〝本気〟で戦って良いんですか?」
「うん、ジン君の今の強さを改めて知りたいんだ。それに私の力も試したくてね。今日はよろしく頼むよ」
ニコリと笑みを浮かべるユリウスに対し、俺は「こちらこそ、よろしくお願いします」と言葉を返した。
それから、試合の審判役は師匠に任せる事にした。
腕や足が無くなったとしても薬でどうにかなるだ、死んだら薬ではどうにもならない。
危ないと思ったら止めて下さいと師匠にお願いをして、俺とユリウスは準備運動を始めた。
「ジン、一応薬は準備してるけど、あんま無茶はするなよ? 腕が吹っ飛んだ友達とか見たくないからな」
「分かってる。気を付けはするけど、本気で戦うってなるとそうもいかないしな」
「ジン君頑張ってね。応援してるよ」
「ジン君頑張れ」
クロエ達にそう応援された俺は準備運動を終えて、試合の会場の方へと戻った。
先にそこに戻っていたユリウスは、目を閉じて瞑想をしていて俺が近くに来ると目を開き「それじゃ、やろうか」と剣を抜いた。
審判役の師匠は俺とユリウスが準備出来てるか確認すると、試合開始の合図を出した。
「ッ!」
試合開始の合図と共に、普段は優しいオーラを感じさせるユリウスの元から物凄い殺気を感じると、これまで見た事もない速度でユリウスが突っ込んできた。
この攻撃、下手に受けるとヤバイな。
「ハァッ!」
一瞬で判断した俺は受け止めるのではなく、受け流す構えをしてユリウスの初撃を受け流す事に成功した。
初撃を受け流されたユリウスは驚く事無く、それが決まらないと分かっていたのか体をグルンッと回転させもう攻撃を仕掛けて来た。
「本気なら、魔法もありですよね」
「ッ!」
攻撃の仕掛けようとしたユリウスに対し、俺はあえてそう言いながら魔法を放つとユリウスは一瞬だけ驚いて後ろに下がった。
その瞬間、俺は体勢を少し崩したユリウスに接近して攻撃を仕掛けた。
だがその攻撃はユリウスに届く事は無く、突如現れた土の壁に阻まれてしまった。
「はは、今までユリウスさんが模擬戦闘で魔法を使った事が無くて驚きましたよ」
「本当だったら〝剣聖〟の名に恥じない様に、剣だけで勝負したい所だけど……ジン君相手にそんな事も言ってられないからね。出せる物は全部出すつもりだよ」
真剣な目でそう言ったユリウスに対し、俺も「こちらもです。更に速度上げますよ」と言って、次は俺から攻撃を仕掛けた。
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