第247話 【兵士の訓練・2】


 それから数日間、俺達は兵士達の訓練を熱心に取り組み、初日から兵士達のレベルは大分上がって来ていた。

 元々試験で上位をとっていた兵士達は更に上の段階に上り、下の段階でつまっていた兵士達もこの数日間で精神的・肉体的にかなり成長している。

 特に成長してると感じるのは、俺とレイが見てる兵士の試験で下の方をとった兵士達だ。


「それでは皆さん、休憩の時間です」


「「はい!」」


 更にこの数日間で変わった点はもう一つあり、以前よりも統率がとれるようになっていた。

 数日前の段階では俺達の噂を聞いて凄い人だ的な感じだったが、この数日間で俺達の事を上司、上官の様に見られている感じがする。


「レイ、まだ大丈夫か? 朝からかなり飛ばしてるけど」


「大丈夫だよ~。私も最近、毎日兵士さん達と訓練してるからか、以前より動けるようになってるんだよね」


「それは良かった。取り敢えず、休憩後も頼むな。ちょっと、俺はクロエ達の方を見て来るヨ」


「うん、任せた~!」


 レイも休憩に行ったので、俺はクロエ達の訓練の方を見に行った。

 こちらもこの数日間でかなり成長していて、最初の頃に比べて魔法の威力が格段に上がっている。


「レン、そっちの様子はどうだ?」


「まあ、いい感じに訓練の成果が出て来てるとは思うぞ、ジン達の所みたいにこっちも試験をやって兵士を分けたけど、あそこの魔法使い達は他の兵士とはちょっとレベルが違う」


「へ~……確かに魔力のレベルが他の兵士とは違うな」


 レンに教えて貰った兵士達の方を見ると、確かに他の兵士に比べて魔力の質が高く、使ってる魔法のレベルも高い事が分かった。

 へ~、あそこの人達って確か普通の兵士の中の魔法使いだったけど、あの魔法のレベルは魔法騎士団レベル以上はありそうだな。


「武器に関して、リーザに頼めたら一番良かったんだけどな……」


 今回の兵士達の訓練をするという事で、武器や装備をリーザに頼もうと俺は話をしにいった。

 これまでクロエやレイ達の装備は作ってくれたが、それはあくまで俺の仲間だからで、今回は国の兵士達に対してだった。

 その為、リーザは「流石にジンの頼みでも無理」と、ハッキリと断られてしまった。

 まあ、今回に関しては俺もそこまで期待していなかったから、リーザの言葉を聞いて俺は謝罪をした。


「まあ、ジン以外のを作る気が本来無かったのに俺達の装備を作ってくれてるだけでも有難いからな」


「ああ、そうだよな。まあ、隠れ里のドワーフ族の人達が装備を作ってくれると言ってくれて、本当に助かったな」


「ドワーフ族はジンに感謝してたからな、快く受けてくれたのは良かったな」


 リーザに断られた俺は、駄目元でドワーフ族の所へ話にしにいった。

 その際、最初は兵士に装備を渡すのを嫌な顔をされたが、俺達が訓練を付けてる400名の兵士だけならという話で装備を作って呉れる事になった。

 ドワーフ族もリーザ同様の考えだったが、俺への恩を返すという想いで動いてくれた。


「今回に関して、姫様から滅茶苦茶感謝されたよ。あのドワーフ族達から装備を作ってくれる約束をしてくれるなんてってな」


「そりゃそうだろうな、魔剣を作れるドワーフ族に400人分の装備を作って貰えるなんて国としては有難いだろうな」


「ああ、ただ400の兵士だけって約束でユリウスや他の国の兵士には装備を作れないって言ったら、姫様はそれでも十分って言ってくれたんだけど話を一緒に聞いていたユリウスさんが滅茶苦茶落ち込んでいたな、ノヴェルさんも魔剣を貰った手前そこまで落ち込む事は無かったけど自分だけの装備を作って貰えないって知って少し落ち込んでいたな」


「アンドルさんも防具だけでも作ってくれないかな~って、言ってたよ。皆、やっぱり隠れ里の人達に装備作って貰いたいんだね」


 ドワーフ族との約束を聞いた人達の反応を思い出しながらレンにそう言うと、兵士達に魔法を教えていたクロエが戻って来た。


「お疲れ、クロエ。かなり魔力消費してるけど大丈夫か?」


「うん、この後はレン君と変わるからその間にちゃんと休憩するから大丈夫だよ」


 クロエはそう言いながら、シンシアの店で買ってる飴を取り出して口の中に入れて「休んでくるね~」と言って休憩所の方へと歩いて行った。


「ってか、レン達も交代制でやってるんだな、昨日までは一緒に見てるって言ってなかったか?」


「ジン達の話を聞いてて、こっちもそうした方がいいなって思ったんだよ。それで今日は試しに前半はクロエが見て、後半は俺が見る事になってる」


「へ~、レンは大丈夫なのか? 200人も兵士を同時に見れるのか?」


「自分でも心配だけで、やってみようとは思うよ。無理だったら、近くでクロエも見てるから協力してもらう予定だ」


 そう言ったレンに「そうか、まあ頑張れよ」と言って俺は自分の見る兵士達の所に戻り、兵士達を呼び訓練を再開させた。

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