第246話 【兵士の訓練・1】
次の日から俺考案の訓練を始めて兵士達は、一時間動いただけでもかなり疲労した様子だった。
190名の兵士にはまず体力がもっと必要だと思い、そこを重点的に上げる為の訓練を行った。
そして残りの10名には特別メニューとして、二人一組でレイと戦うという訓練をしている。
「あははは! そんなんじゃ、魔王軍相手に耐えられないよ!」
「ッ!」
訓練用とはいえ戦斧を振り回すレイの動きに、試験を乗り越えた兵士達はレイに一方的にやられていた。
流石の元冒険者達もレイの動きには苦戦しているようだが、元々盾持ちのドルフォスはレイの攻撃に10名の兵士の中で一番上手く耐えていた。
「よし、レイ。そろそろ休憩にしようか、皆さん一旦休憩ですのでゆっくりと体を休めてください」
兵士達は俺の言葉を聞くと、ドサッと地面に座り水をゴクゴクと飲み体を休めていた。
「レイ、どうだった兵士達の実力は?」
「思っていたより良いよ。ただ武器が剣ばっかりなのは気になるかな? ほらっ、冒険者とかだと剣に拘らず自分に合った武器を使うけど、兵士って決められた武器を使ってる人が多いみたい」
兵士の標準装備は剣と鎧、そして前線を張る物は盾を持ったり、後衛の兵士には剣を持たせず大盾を持たせたりとしていると聞いた。
別の武器は使わないのか姫様に聞いたら、武器を統一する事で訓練もしやすいようにしているらしいが、俺の所は特別にそのルールは無視してもいいと言われている。
「レイが見た感じ、どの人がそう感じた?」
俺はそう言いながらリストを出して、レイとどの人が武器に違和感を感じているのか話し合いをした。
その後、件の兵士達に各自好きな武器を使ってもいいから、もう一度レイと戦う様に指示を出すと、先程より良い動きをしていた。
「やっぱり慣れてる武器じゃないと、いい動きは出来ないな……王国の兵士のやりかたに文句は言わないけど、少し勿体ない気がするよな」
得意武器を伸ばした方がいいと思うんだけどなと俺は思いつつ、再び訓練を再開させた。
その後、訓練を終えた俺達はクロエ達と合流してお互いの兵士達がどんな感じか話し合いを行った。
「こっちは10名くらいいい感じの兵士が居て、かなり訓練も順調に進んでるけどクロエ達の方はどうだ?」
「私達の方もかなりいいと思うよ。こっちは武器の縛りとかが無い分、各々の得意な事を伸ばすだけだからね」
「攻撃系の魔法が得意じゃない兵士でも、俺みたいに支援系の魔法が得意って兵士もいたから、その人達の訓練が無事に進んだら一気に戦力は上がると思うぞ」
「へ~、それは楽しみだな。支援系の魔法は難しいし、何か手伝えることがあったら言ってくれよ」
レンにそう言って俺は、この後少し姫様の所に寄るけど皆はどうするか聞くと、先に宿に戻ると言ったので皆を宿に連れて帰り、俺は姫様の部屋に向かった。
「姫様、今良いですか?」
「ええ、良いわよ」
姫様からの許可を貰った俺は部屋の中に入ると、珍しく部屋にユリウスが居た。
「あっ、ユリウスさん来てたんですね」
「うん、ただ僕の話はもう終わったから大丈夫だよ。ジン君も兵士の事で話に来たの?」
「はい、前に武器について俺の所は変えてもいいと言われたので、今日の訓練で剣が合わない兵士には自分に合った武器を持つように許可を出したと報告に来たんです」
「態々、報告に来てくれたのね。別に良かったのに、それにジン達の所はジンに全て任せてるから、すきにしてもいいのよ。そうしてくれた方が、強くなって国の力になってくれそうだし」
姫様がそう言うと、ユリウスも「本当だったら、私もジン君の所に交ざりたいんだけどね」と笑みを浮かべながらそう言った。
「ユリウスは駄目よ。貴方も見る側の人間なんだから、剣聖なんだからそこは我慢しなさい」
「今回程、剣聖という名を持ってる事が嫌だとは思いませんでしたよ……ジン君、時間がある時でも良いから、また戦ってくれないかな?」
「まあ、暫くは兵士の訓練で城に通いますから、時間がある時であればいいですよ。ただお互いに時間が取れないと思いますけどね」
「……」
俺の言葉にユリウスは何やら考えだし、時間があったらいいんですねと言って部屋から去って行った。
「あの感じ、ユリウスならどうやってでも時間を作って来るわよ?」
「まあ、別に嫌だとは思いませんからいいんじゃないですかね。それに、ユリウスさんも偶には発散しないといけないですしね。訓練が始まってから、アンジュさんと会う時間が減ってますよね?」
「ええ、訓練の為にでユリウスも分かってはいるみたいだけど、いつまで我慢できるか分からないわね」
姫様はそう言うと深いため息を吐き、それから俺は兵士達の状況について他にも報告をしてから宿に帰宅した。
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