第225話 【悪魔の使い道・1】
無事に彼女を家族の元まで送り届けた後、俺と師匠は放置していた悪魔の所に戻った。
悪魔は自らの力を封印され、悪魔世界に帰る事も出来ず「これからどうしたら良いんだ……」と悲しんでいた。
それを見た俺と師匠は、何も出来ない様を確認してその場を離れようとした。
「いや、待て待て待て! ここは俺を連れて行くところだろ! フィオロの時と扱いが違い過ぎるだろ!」
「えっ、だってお前は実際に彼女の肉体を奪おうとしていただろ? フィオロはそれをする前に師匠に呼び出されたから、扱いが違うのも当然だろ?」
「あいつだってお前に魔力送ってただろ!? 俺と何が違うんだよ!」
「いや、お前は既に体を乗っ取ろうとしていただろ? 彼女が友達から守られてなかったから今頃、体を奪っていただろ?」
俺の言葉に男は「うっ」と図星を突かれ、言い返す事が出来なかった。
しかし、正直こいつを放置しておくのも気になるしな……結局、連れて行くしかないんだろうな。
「師匠、こいつどうしましょうか?」
「そうね……ああ、そう言えばこの悪魔。多才だって筈だから、ジンの買った家の召使にでもしたらどうかしら? ほら、掃除とかしてないと埃とかで家が汚れるでしょ?」
「なっ! 何で、俺がそんな雑用みたいな事をしなきゃいけないんだよ!」
師匠の提案に対して男は反論するが、確かに拠点の掃除は必要だなと俺も最近考えていた。
購入してからクロエ達と日にちを決めて交代で掃除をしているが、かなり広い建物だから掃除だけでも時間を使ってしまう。
だから使わない所はもうそのまま放置しておこうと話し合って、今じゃ埃だらけの部屋も沢山ある。
「その提案を受けるなら、一緒に連れて行ってもいいぞ」
「おかしいだろ……フィオロと扱いの差が激しすぎだろ、あいつと俺は同等の悪魔なんだぞ?」
「力の封印度合いで言えばフィオロの方が少し緩めだから、今の貴方とフィオロが戦ったら貴方はボコボコにやられるわよ」
「……」
男はその言葉を聞くと、もう反論する気持ちも無くなったのか「奴隷にでも、なんでもなってやるよ……」と言い魔法で反発しない様にしてもらい王都に帰還した。
王都に戻ってきた俺は宿に待機していたクロエ達を呼んで、無事に悪魔の問題が解決した事を報告した。
その際、宿にフィオロが丁度いて男を見ると「だっさ」と男を馬鹿にして笑っていた。
「おまっ! ふざけんなよフィオロ! お前の方が早くに人間に捕まってただろ!」
「そうだけど、あんたはどうせ乗っ取ってる途中に見つかってそうなってるんでしょ? って事は成功しそうな段階で捕まったって、凄くださいじゃん」
フィオロは盛大に男を馬鹿にすると、自分との魔力差を確認して「文句あるなら戦う?」と挑発をしていた。
フィオロとこの男の悪魔は仲が悪いみたいだな……ってか、そう言えば一切気にして無かったけどこの男の悪魔って名前知らないな。
「そういや、お前の名前なんて言うんだ?」
そうフィオロと言い合いをしてる中聞くと、男は不機嫌そうな顔で「レドラスだ」と名前を教えてくれた。
その後、師匠に今回の件についてお礼を言い、レドラスをフィオロとクロエ達に監視を頼み、姫様の所へと転移で向かった。
「えっと、それじゃあ何? ジンは、一国を潰せる程の力を持つ悪魔を師匠と二人で対処してきたの?」
「はい、なので魔王軍以外を気にする必要はなくなりました」
「……もうジンが魔王まで倒したらどうなの? そしたら勇者も辛い修行を止められると思うけど」
姫様は呆れた顔でそう言い、溜息を吐きながら頭を抱えた。
「魔王は聖剣を持つ勇者じゃないと倒せませんから、その役目はどんなにお願いされても無理ですね」
「それもそうね……四天王の一体を倒して、人類が恐れる悪魔を対処するって、公表すれば貴方は英雄になれるわよ?」
「正直、俺も仲間達もそんなのに興味が無いですからね」
そう言うともう一度姫様は溜息を吐いて、悪魔がどうなったのか詳しく説明を要求され、力を封印して監視するようにしたと伝えた。
「その封印が解ける心配はないの?」
「無いですね。それにもし封印が解けたとしてももう一度、封印するか討伐する事も可能ですから」
「頼もしいわね……分かったわ。取り敢えず、悪魔についてはジンに任せるわ。私達では管理出来そうにもないでしょうし」
その後、また何かあった報告してと言われて俺は宿へ帰宅した。
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