第224話 【悪魔の動き・3】
師匠のおかげで顔色は良くなったが、彼女は気絶してしまったようで俺と師匠は彼女が作った洞窟の中に入った。
「……流石にこのままこの子をそれに寝かすのは気が引けるわね」
彼女が寝ていたと思われるスペースは、大きな葉っぱを何枚か重ねただけだった。
それをみた師匠は、土魔法でベッドの形を作り異空間から毛布を取り出して彼女を寝かせた。
「師匠、さっき彼女の事をみて精神を保ってると言ってましたけど、悪魔から乗っ取られないように自我を保ってるんですか?」
「ええ、今も気絶してるようで頭の中で悪魔と戦ってると思うわ。遠くから見た時点で、この子に悪魔が憑いてるのは気付いてたけど、まさか一人で悪魔と戦ってるとは思わなかったわ」
ゲームだと確か、そんな事は無く心の支えを無くした彼女は直ぐに悪魔に肉体を奪われた筈だ。
「どうしますか師匠? 一応、戦うつもりで来ましたけど、耐えてる状況なら師匠ならどうにか出来たりするんですか?」
「……そうね。一応試してみようかしら」
そう言って師匠が魔法を使おうとすると、気絶していた彼女が目を開けて「何をしようとしてるの?」と口にした。
直ぐに起きるとは思わなかった俺達は驚き彼女を見ると、先程までの雰囲気と変わっている事に気付いた。
「貴女……もしかして、元々もう一つの魂が入り込んでいる子かしら?」
師匠がそう言うと、彼女は驚いた様子で師匠を見た。
「どうして分かったの?」
「魔力の性質が少し変わってるから気付けたのよ。それ以外は上手く偽装しているわね」
「あなた達何者なのよ……」
彼女は驚いた様子でそう言うと、自分の正体について教えてくれた。
別の魂の彼女は元々、この世界の住人で病弱だったらしい。
彼女とは家も近くで同い年という事で、よく部屋に遊びに来てもらって遊んでいた中だったらしい。
数年前、彼女は病に勝てずこの世を去る事になるのだが、自分以外に友達が居ない彼女の事を心配して見守っていると、彼女が変な者に獲りつかれてる事を知った。
そして彼女を守る為に自分も彼女に獲りつき、悪魔と戦っていたと彼女は言った。
「どうして、そこまでしたの?」
「彼女は私の唯一の親友なのよ」
別の魂の彼女はそう言うと、師匠は「友情って凄いわね」と感動していた。
その後、彼女の魂を奪おうとしてる悪魔の現状について話し合いを始めた。
「見た所、本体自体は悪魔世界にまだある状態ね。精神の中から悪魔の異物を抜き取れば、彼女を救う事は出来ると思うわ」
「それ本当なの!?」
「ええ……ただ貴女を残した状態で成功するかは分からないわ」
「構わないわ。私は彼女が無事にこれからも生活出来るなら、消えても良いわ。それに元々、私はこの世から消える存在だったもの」
別の魂の彼女がそう言うと、師匠は「分かったわ」と言って早速作業に取り掛かった。
そして師匠は何やら魔法陣の様な物を書くと、その中央に彼女に行くように指示をした。
「少し強い魔力が当たると思うけど、彼女自体は無事だから心配しなくてもいいからね」
「分かったわ」
そうして、彼女の肉体から悪魔の魔力を抜き取る作業が始まった。
作業開始直後、強い魔力の波動を感じて俺は仰け反るが師匠の作業を最後まで見ようと足に力を入れて、その様子を見守っていた。
作業を始めて数分、彼女の肉体から何やら黒い物体が出て来て、その黒い物体はそのまま掻き消えてしまった。
「ふ~、これで彼女の肉体に残ってた悪魔の異物は抜ききったわ。それじゃ、次はその悪魔を呼び出して力を封印しましょうか」
「へ?」
師匠はそう言うと、以前フィオロを呼び出した本を取り出すと、今回は相手の悪魔がどれなのか知っていたのでサッとページを捲ると呪文を口にした。
すると、目の前に赤髪赤目の長身でヒョロッとした男性が現れた。
「ま、マリアンナ! 何で俺を呼び出したんだ!?」
「あら、何でっておかしいじゃない? 彼女の肉体を奪おうしていたでしょ? 私との約束、忘れたのかしら?」
「ッ! しょ、しょうがないだろ! 悪魔世界にずっと居るの退屈だったんだよ! こっちなら、色んな種族が居て楽しめそうと思ったんだよ!」
フィオロとは違いその悪魔は反論すると、師匠はその悪魔の頭に踵落としを食らわせた。
「そんなにこの世界の事が気になるなら、フィオロと同じ様にしてあげるわ。それなら退屈しないでしょ?」
「なっ! それだけは、それだけはやめてくれ! 悪魔界最上位種までどれだけ時間をかけて強くなったと思ってるんだ!」
「知らないわよ。力が大切なら、退屈だからって理由でフィオロの時に通達した〝人間に憑りつくな〟って約束を破らなければ良かったじゃない」
師匠はそう言うと問答無用で、その悪魔の力をフィオロの時と同様に封印した。
そして力を封印されたた悪魔は、徐々に体内魔力が少なくなっていきフィオロの時よりも更に力を封印された。
その後、気絶したいた彼女が目を覚ますと、本来の性格の方が出て来て事情を説明した。
「あの子が私の事を守っていたの気付いてました。よく知らない間に移動してた時もあったので……」
彼女は無くなった友達の子が守っていたと教えると、涙を流しながらそう言った。
それから彼女がどうしてこんな山奥に居るのか聞くと、家族と一緒に居ると迷惑になると思い一人でこの山で暮らしていたといった。
もうその問題も無くなったので家族の所に送ろうか? と聞くと、お願いをされたので俺と師匠は彼女を家族の所に送る事にした。
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