第211話 【隠れ里のエルフ・2】
その後、俺達はここに居るエルフ達と共に行動する事にした。
人間と行動するのは嫌がられるかも知れないと思ったが、キールが居る事でそこに関しては大丈夫だった。
流石、族長の息子という偉い立場なだけあるな。
「やはりジンさん達に頼んで正解でした。後、ハンゾウ様はそこまで戦えたんですね」
移動中も偶に軍隊からはぐれた魔王軍と遭遇しては、俺達は各個撃破していった。
自分の身は自分で守ると言っていたハンゾウも動きが俊敏で、一瞬にして敵の背後をとって苦戦していなかった。
「俺の事、何だと思ってたんだ? こうみえても、大陸一の情報屋のトップだぞ?」
「ハンゾウ様が戦ってる姿、私が組織に入ってから始めてみましたよ」
「んっ? そうだっけ? まあ、基本的に部下がやる仕事は俺はしないからな」
ハンゾウの戦闘能力は作中でも高い方だから、強いとは思ってたけどあそこまで早い動きだと思ってなかった。
本気のクロエと同等クラスの速さって事は、ハンゾウもそれに近い身体能力を持ってるという事だろう。
「それで言うと俺はジン達の強さをちゃんと見れたのは、一番の収穫だな。なんだかんだいって、お前等を追うのこっちも大変だからな……速さには自信あるけど、転移は流石に卑怯だろ」
「卑怯っていうなら、ハンゾウ達も覚えたら良いだろ? 俺も3年前まで使えなかったんだし」
「3年でマスターしたのが、まずおかしいだろ……」
俺の言葉に対してハンゾウが呆れながらそう言うと、クロエ達がハンゾウの言葉に頷いていた。
「ジン君、3年で転移をマスターして遠距離も移動できるようになったの、仲間の私達でも凄いなって感じたもんね」
「それ以外も異常な点はあるけど、一番はそれだよな」
「ジン君の一番の凄いのは、習得難易度が難しいって言われてる空間魔法を習得してたった3年で遠距離の転移が使えるようになったところだよね」
そうクロエ達が言うと、話を聞いていたロアナが「ジンさんは転移が使えるんですか?」と聞いて来た。
「ええ、行った事のある場所なら何処にでも行ける位には使えます」
「それは凄いですね。魔法が得意なエルフ族でも、空間魔法が使える物は稀ですからね」
ロアナがそう言うと、他のエルフ族からも同じように称賛の声を掛けられた。
魔法と言えばエルフ族、そのエルフ族でも使い手が少ない空間魔法が使える俺はそれだけで凄い人と認められた感じだろう。
その後、どんな感じで空間魔法を使うのか質問をされたり、一気に俺はエルフ族との距離が縮まった。
「ジンさん、ハンゾウ様。もう直ぐ、里に到着します」
そうキールの言葉を聞いた俺達は、ようやく着いたかと思っていると、森の奥から爆音が鳴り響いた。
その音に俺達は驚き、音のする方へと行くと大勢のエルフ達が魔王軍と思わしき軍隊と戦闘をしていた。
すぐさま俺達は駆け寄ると、キールとロアナは戦っていたエルフに戦況を聞いた。
戦闘が始まったのはつい先ほどで、今の所は死者は出ていない。
しかし、魔王軍でも四天王と言われてる一人がやってきて、その四天王と族長と森の戦士の優秀な者達が戦っていて押されているという内容だった。
「四天王の一人……この魔力からすると、勇者が負けた水の四天王だろうな……」
その言葉を聞いていたクロエ達は、動揺して「ジン君……」と心配した様子で声を掛けた。
「大丈夫、心配しなくても四天王の一匹位俺達なら倒せる。まずはここに居るエルフ達の加勢に入ろう。キールさん、エルフ達に伝えて貰えますか?」
「はい、分かりました」
俺の頼みをキールは直ぐに聞き、ロアナと共にエルフ達に下がる様に命じた。
その際、森を少し壊す事になるかもしれないと伝えると、森の修復はエルフ族にとって簡単だと言われ、思う存分戦って下さいと言われた。
「よし、それじゃあ行くぞ皆!」
そうクロエ達に声を掛け、俺達は二度目の魔王軍との戦いを始めた。
森の破壊許可、それが下りた俺は影からリウスを呼び出した。
「リウス、今回は素材の事も気にしなくてもいいし、思う存分暴れて魔王軍を蹴散らしてこい!」
「グルァァァ!!」
俺の命令を聞いたリウスは体を大きくして、いつもの可愛らしい鳴き声から激しい雄叫びを上げた。
リウスの登場にエルフ族、魔王軍共に動きがピタリと止まった。
そして次の瞬間、リウスは竜王直伝のブレスを魔王軍に向けて放つと、一瞬にして数千体の魔王軍が消し飛び、森の殆どが消えた。
「良いぞ、リウス! もっとやっちまえ」
「グルル!」
前回、失敗してしまったリウスは俺から褒められると、尻尾をブゥンブゥンと振るって嬉しさを表現すると、魔王軍に向かって行った。
よし、この戦場はリウスが居れば圧勝だろう。
「クロエとレイはここでリウスと一緒に魔王軍の相手をしてくれ、俺はレンとハンゾウ、キールさんと一緒に四天王と戦ってる方に向かうから、こっちは任せた」
「了解!」
「気を付けてね」
それから俺はレンとハンゾウ、そしてキールと共に族長達が戦ってる森の奥へと向かった。
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