第204話 【拠点・1】
リコラさんに建物に件を伝えてから数日後、ギルドに呼び出された俺はいくつかの候補を見せられ、その中に目を引く建物があった。
「これ、いいと思うんだけど、皆はどう思う?」
「私はいいと思うよ」
「庭も広そうだし、建物自体も大きいからレン君の研究所も作れそうだね」
「場所もいい所だし、いいと思う」
その建物の場所は宿屋から約徒歩5分圏内、庭も広く、建物時代も2階建てで一階に広めの作業場があるという好条件の建物だ。
更に築年数もそんなに経ってなく、資料ではかなり綺麗な状態だと書かれていた。
「予算は気にしないと仰られていましたので、出来るだけ条件に合う物を探してきましたが、どうでしたか?」
「はい、自分達の気に入る建物もあって満足です」
その後、俺達は一番気に入った建物の契約をする為、リコラさんと一緒に不動産屋に移動した。
「初めまして、ホグロマ不動産王都店の店長をしております。ノエラと申します。本日は、当店のご利用ありがとうございます」
不動産屋の建物に入ると、その店の店長が態々出て来てそう挨拶をされた。
その挨拶に対して俺達も軽く挨拶を返し、何故か奥の部屋に通された。
「あの、何で奥の部屋なんですか?」
「貴族の方や冒険者でもランクの高い人は、特別室での話し合いをするようにしているんです。私共も気を付けてはいますが、何処に人の目があるか分かりませんから」
そう言って入った部屋の魔道具を起動すると、部屋に何かの膜みたいな物が張られた。
凄いな、流石王都一の不動産屋なだけあって、防音の魔道具を設置した部屋もあるのか。
それからノエラに俺達が気に入った建物の書類を渡して、この建物を購入検討していると伝えた。
するとノエラは直ぐに書類を取り出して、何かを確認すると「はい、こちらの建物でしたら直ぐにお渡しが可能です」と言った。
「えっ、そんな直ぐに引き渡しって出来るんですか?」
直ぐに引き渡しが出来ると聞いたクロエは、驚き気味にそう聞き返した。
正直、俺もクロエと同じでそんな直ぐに引き渡しは可能なのか? と疑問に感じていた。
「はい、私共はいつでもお客様に綺麗な状態で建物をお渡しできるように徹底しております」
ノエラはクロエの言葉に、笑みを浮かべてそう返事をした。
それから俺達は、この場で直ぐに決めても良かったのだが、ノエラから建物のご確認をされてからでも大丈夫ですよと言われたので、俺達は建物を見に行く事にした。
「ここになります。冒険者ギルドからも近いので、冒険者活動にはかなりいい物件ですよ」
「はい、その点も見てこちらの建物に決めようと思いました。……実物を見て改めて思いますけど、このあたりの家にしてはかなり広いですね」
「元々、こちらの建物はジン様方と同じ様にパーティーに職人を持つ冒険者の方が建てた物なのですが、パーティー内で喧嘩が起き解散する事になり売却される事になったんです」
成程な、だから庭も広く作られているし、建物の大きさから見たら不自然な間取りをしていたのか。
二階の殆どはほぼ同じ部屋が並んで作られているような形で、普通の人が建てた建物じゃないなとは資料を見た時から感じていた。
「一応、建物の間取りの変更も可能ですけど、その場合は引き渡すのに暫くお時間が要ります。どうしますか?」
「このままで大丈夫ですよ。それで中も見ても大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です」
その後、建物の中に入った俺達はそれぞれ自分達が気になる所を確認していった。
まず初めに確認したのは、拠点を持とうと思った一番の要因であるレンの研究所となる作業場の確認をする事にした。
その場所はかなり広く作られていて、作業がしやすい環境が整っていた。
「ここなら研究に集中できそうだな」
レンはその作業場を見てそう言い、俺達は次の場所に移動した。
次はこの建物で食事をするかもしれないから、調理場へと行く事にした。
「ここも割と広いな、調理スペースだけでこれだもんな」
「食べる場所は別であるからね。これだけ広かったら、料理の勉強もしやすいね」
「確かにな、いつまでもレンに料理を頼むのも悪いと思いつつ、自分達で料理を勉強する場所なかったから丁度いいな」
資料ではあまり気にしていなかった調理場の広さに、ここなら料理の勉強もしやすいなと俺とクロエは言った。
その後、建物の中を一通り見て回った俺達は、やはりここ以外には無いなと思い、不動産屋に戻り一括払いで建物を購入する事にした。
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