第205話 【拠点・2】
建物を購入してから俺達は、一旦拠点で使う物を買いそろえる為に次の日は皆で商業区へと行く事にした。
「まず最優先として、レンの研究道具だな。多分、そっち系ならシンシアの店に行けば揃ってると思うから、まずはシンシアの店に行こうか」
そうして俺達はシンシアに店へと向かい、シンシアに研究に使える道具を買いに来たというと、奥から色々盛って来てくれ。
レンはその道具を一つ一つ見て、自分が使う道具の選別を始めた。
「いきなり研究用の道具買いに来るって、もしかしてジン達とうとう拠点でも持つ事にしたの?」
「そうだよ。レンの身の安全を守る為にも、これ以上ギルドでの研究は続けられないと思ってな」
「そうなのね。なら丁度いいし、その拠点で使えそうな物がないかジン達も見ていく?」
そうシンシアから言われた俺達は、レンをここに残して拠点で使えそうな物をシンシアに見せて貰い選び始めた。
その後、一時間程滞在して必要な道具を選び終えた俺達は、シンシアにお礼を言って店を出た。
そしてシンシアの店では買えなかった必要な物を買い足しに商業区の店を回り、半日歩き回り大型家具以外の必要な物は大体買い揃える事が出来た。
「こんな風に皆で買い物って久しぶりで楽しかったね」
「うんうん、レン君ってこういう時はいつも研究があるからって言って抜けるけど、今日は自分の研究道具も買うから一緒に来てくれて楽しかった」
女子組のクロエとレイは、皆と買い物が出来て楽しかったと言ってるが男子組である俺とレンは疲れた表情で頷くしか出来なかった。
正直、俺の予想では半日も買い物に時間を費やすとは考えなかったが、クロエとレイが俺達を引っ張って色んな店に行くことになって結局、半日も連れまわされた。
行った事の無い店も開拓出来て、良かったと言えば良かったけど、それ以上に疲れた。
その為、宿に帰宅した俺は部屋に戻り夕食までのちょっとした時間すらもベッドに横になろうと思い、ベッドに横になった。
「なあ、ジン。お前達、宿を出て行くのか?」
「えっ?」
休憩して夕食を食べに下に行くと、ちょろっと出て来たリカルドからそう聞かれた。
なんでも俺達の話が聞こえて来て、俺達が宿を出て行くんじゃないかと心配に思ったらしい。
「いや、別に宿は出て行かない。その為に宿の近くの建物って選んだからな」
「そうなのか? でも宿を出ないのに何で家を購入したんだ?」
「家というか、あれだよ。レンの研究所をギルドから移そうと思ってな、それにクロエ達も自由に使える訓練場所が欲しいと言ってたから、それならパーティーの拠点を買うかってなったんだよ」
「そうだったのか、てっきりジン達もとうとう出て行くのかと思ってルリとアイラが悲しんでてな」
リカルドはそう言うと、俺達が出て行かない事にホッとした様子だった。
リカルドと俺達は、宿の店主と客という関係だが、冒険者を始めた時からずっと世話になっていて最早、ただの客と宿の店主という関係性ではない。
それは俺達だけではなく、昔からリカルドの店を利用しているルーク達も同じだ。
ちなみにルーク達は全員が料理が下手という理由から、自分達で家を購入しようとは考えていないと以前言っていた。
「正直、この宿が居心地がいいからな暫くはまだ居ると思うよ。まあ、これから俺達の仲間になる人が出てきたら、流石に宿のキャパ的にも拠点の方に住まわせるかもしれないけどな」
「まあ、元々こじんまりとした宿だったからな、今の様に沢山人が集まるとは思ってなかった。これもジンのおかげだけどな、大半がジンの仲間とジンの知り合いだからな」
「俺が来た時はほぼ俺だけだったしな、丁度ルークさん達が居ない時期に来たから」
「そうだったな……あれから、もう3年間か。随分と時が経つのは早いな」
リカルドはそう笑みを浮かべながら言うと、心配事だった俺達が出て行くかも知れないというのが違うと奥さん達に言いに行った。
その後、夕食の席でルリから宿を出て行くなら、事前に言うと約束をした。
「……そういや、最近フィオロはなにしてるんだ?」
「んっ、私はジンのお姉さん達と一緒に冒険者活動してるよ。あんた達みたいに私は有名人じゃないからね」
「そうなの姉さん?」
フィオロの言葉に俺は、一緒に食事をしているそう姉さんに聞いた。
「うん、私の方から誘ったの、偶にクロエちゃん達と一緒に行動してるの見てたけど、フィオロちゃんって基本的に一人でしょ? それなら私達と一緒に動かないって誘ったの」
「別に私は一人でも良かったけど、ヘレナ達がどうしてもって言うから仲間になってあげた」
フィオロは姉さんの言葉そう胸を張って言うと、姉さん達はそんなフィオロを見て「可愛い」と言ってフィオロは「可愛いっていうな!」と反論していた。
うん、これはあれだな姉さん達は妹分が出来て楽しんでるんだろうな、と俺は姉さん達に揶揄われてるフィオロを見てそう思った。
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