第170話 【竜王ヴェルド・2】


 その男性から疑われた俺は、何か師匠の弟子と証明できる物はあったかな?

 そう考えていると、その男性に対してスカイが「この人間はマリアンナの弟子だよ」といってくれた。


「スカイ様が言うのでしたら、本当の事のようですね。ようこそ、マリアンナ様のお弟子様」


「……スカイさん、もしかして竜王様ってあの人に嫌われてるんですか?」


「親父は色々と問題を起こしてるから、親父の信頼度はそこまで無いんだよ。まあ、ドラゴン族は力こそ正義の種族だから、親父が竜王なのは変わりないんだけどね」


 スカイからそう教えられた俺は、ドラゴン族も色々とあるんだなと思いながら、ヴェルド様に連れられる形で先へと進んだ。

 ドラゴン族の土地に来てから俺は、ビシビシと視線を感じていた。

 ここに人間が何故いるのかという視線とそしてもう一つは、俺が師匠の弟子という事を知ってるドラゴンからのなんでいるの? という視線だ。


「皆、ジンの事気になってるみたいだね」


「ああ、滅茶苦茶視線を感じるよ……というか、ヴェルド様は何処に連れて行こうとしてるんだ? 修行なら普通に外でも出来るのに、態々ドラゴン族の住む土地にまで移動して来たけど」


「う~ん……多分だけど、この世界で最も魔力が濃い場所でジンに修行させたいんだと思うよ。このドラゴン族の住む土地には、ある場所に魔力が溜まりやすい場所があるんだ。ここで生まれた幼いドラゴンは、そこで一定期間修行をする事で強いドラゴンとなるんだ」


 俺の疑問に対してスカイはそう答えると、ほらもう見えて来たよと言われたので前の方ほ見た。

 すると確かにそこは、これまで見て来た魔力の濃い場所とは比にならない程、魔力の溜まっている場所だった。


「ここは我らドラゴン族の神。竜神様の寝床とも言われてる場所で、新しく誕生したドラゴンはこの地で過ごし、強くなって外の世界を旅するんじゃ」


「……良いんですか? 俺にそんな場所を使わせても、俺はただの人間ですよ?」


「ただの人間には貸すわけがないであろう? お主がマリアンナの弟子じゃから、我はこの地を貸す事にしたんじゃ」


 ニカッと笑ったヴェルド様は、早速この地での過ごし方について教えてくれた。

 この地では魔力の回復速度と、肉体への魔力の吸収速度が異常にまで高いから魔法を使っても直ぐに回復すると言われた。

 試しに魔法を使ってみろと言われた俺は、無難に使いなれても魔法を使うと確かに直ぐにその魔法分の魔力が回復した。


「……凄いですね。こんな感覚初めてですよ。魔力回復薬を飲んでないのに、魔力がほぼ一瞬で回復しました」


「人間レベルの魔力じゃと、ほぼ一瞬に感じるじゃろう? マリアンナはそれを考えて、我に修行の相手を頼んだんじゃと思うぞ、この地を使うには我の許可が無いと使え無いからの」


 そうヴェルド様は言うと、豪快に笑いスカイは恥ずかしそうな顔をしていた。

 その後もこの地での過ごし方についてヴェルド様に色々と聞いていると、俺の影からリウスが眠そうな顔をした状態で出て来た。

 【無魂獣】は基本的に主人の影の中に居るのが普通らしく、それを聞いた時に態々リウスの寝床の確保をしなくてもいいのかと少し安堵した。


「きゅ~」


 リウスは眠たそうな顔をしたまま俺の方を見ると、嬉しそうに尻尾を振ってそう鳴いた。

 そんなリウスの行動にヴェルド様は目が行くと、「そいつがジンの【無魂獣】なのか?」と聞かれた。


「あっ、すみません。はい、俺の【無魂獣】のリウスです。昨日、生まれたばかりなんです」


「ふむ……よし、丁度いいじゃろう。無魂獣】も一緒に修行を受けても良いぞ、ドラゴンでは無いが見た目はドラゴンじゃからな。今後、ジンと一緒に居るという事は何かしらで表に出る事はあるじゃろうから、その時にちゃんとドラゴンとしての威厳を出して貰わないと困るからの」


 ヴェルド様はそう言うと、コテンッと首を傾げてるリウスに「主人の為に強くなりたいか?」と問うと、リウスは首を縦に振りやる気に満ちた顔をしていた。

 昨日、スカイから聞いた話だと【無魂獣】は成長すれば、普通に言葉を発するようになると聞いた。

 今はまだ生まれたばかりだから、こちらの言葉の意味を理解するだけだけど、直ぐにでもちゃんと会話が出来るようになると言われた。

 それを聞いた俺は、リウスの成長が一つの楽しみとなっている。


「ヴェルド様、これからよろしくお願いします」


「うむ、我もマリアンナの弟子の成長が楽しみじゃ」


 その後、まずはこの地に慣れる事が先だからと言われ、俺とリウスは一緒に【瞑想】を使いこの土地に体を慣れさせる事にした。

 この土地に慣れる事で、より多くの魔力を得られるとスカイから聞いた。


「ふむ、よいスキルを持っておるの【瞑想】はこういう時の集中力を上げる時なんかに有効なスキルじゃからな、それにスキルレベルもかなり高いみたいじゃな」


「はい、元々このスキルは欲しかったので大分前にちょっと無理をして手に入れてたので俺のはレベルMAXでリウスも【瞑想】のスキルを引き継いでる状態です」


「【無魂獣】は主のスキルから自分に必要な物だけを選んで生まれてくるとマリアンナが言っていたが、リウスはちゃんと自分に必要な物を選んで生まれて来たみたいじゃな」


「きゅ~!」


 ヴェルド様に褒められたリウスは、尻尾をバンバンと地面に叩きつけて嬉しそうに反応をした。

 その後、ヴェルド様から暫く【瞑想】を続けておくようにと言われ、スカイはなにかあった時の為にと残り、ヴェルド様は用事を済ませて来ると言って去った。

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