第171話 【竜王ヴェルド・3】
ヴェルド様が居なくなった後、俺とリウスはただ黙々と【瞑想】を続けていると、用事からヴェルド様が戻って来た。
「うむ、たった数時間やっただけでその成長ぶりか……これは確かに成長が楽しみじゃな」
ヴェルド様は俺とリウスの事をジッと見つめると、ニカッと笑みを浮かべながらそう言った。
ヴェルド様が居ない時間、ただひたらすに【瞑想】を続けていた俺とリウスなのだが、それだけで少し体内の魔力が上がっている感じがする。
この世界ではゲームでの【瞑想】の使い方とは、またちょっと違った使い方が出来るみたいで本当にこのスキルをとっておいて良かったと思う。
「それで親父、ジン達を放置してまで行ったって事はジン達にも関係する用事だったの?」
「うむ、我が最初から相手をしてもよいのじゃが、流石に一方的になりそうじゃと思ってのう。スカイとの戦いはもう慣れてるみたいじゃし、違う者を連れて来たんじゃ」
そうヴェルド様は言うと「こっちにくるんじゃ!」と叫ぶと、岩陰から黒髪黒目の長身の男性が現れた。
顔は整っていて、普通に人間だったら物凄いモテそうな雰囲気の人だった。
「はじめまして、ジン様。私は黒竜族の長ノアと申します。この度は、ジン様の修行相手にと竜王様から選ばれた者です。よろしくお願いします」
ノアと名乗った男性が微笑みながらそう言うと、手を差し出したので俺は手をとり「よろしくお願いします」と言い握手を交わした。
「ノアがジンの相手するの? ノアはこういうの嫌いなんじゃないの?」
「好きか嫌いかで言うと、戦うこと自体そんなに好きではありませんが。マリアンナ様の弟子には興味がありまして、竜王様が相手を探していたので私が手をあげたんです」
「……そう言えば、ノアはマリアンナの事は気に入ってたね」
スカイはノアに対してそう言うと、まあ頑張ってと応援していた。
同じドラゴン族だから、知り合い同士だろうけど、多分この距離の近い感じは友達って感じかな?
そう考えていると、早速ヴェルド様から修行をはじめるようにと言われた。
「竜王様、私は手加減をした方がよいですよね? どのくらいの力量でやればよろしいでしょうか?」
「うむ、そうじゃな……ジン。一度、お主が普通に使える魔法をいくつか出してもらってもよいか?」
「分かりました」
ヴェルド様からの指示にそう返事をした俺は、取り敢えず普段から使っている魔法をいくつか発動させた。
それらをみたノアは「ふむ……分かりました。ありがとうございます」と言うと、目を閉じて体をドラゴンに変身させた。
「それでは、ジン様。いつでもどうぞ、先手は譲りますよ」
「はい、よろしくお願いします!」
それから俺はノア相手に何試合か戦い、全ての戦いで負け続けた。
だがしかし、ノアの魔力の調整は物凄く上手く、圧倒される感じではなく良い感じに試合が出来るレベルで調整してくれている。
そうして俺が休憩に入ると、一緒に修行を受けているリウスがノアと戦いをしていた。
リウスは生まれたばかりだが、既に戦いのセンスは抜群で数試合戦っただけでノアの動きを予想して回避したり、有効打を与えていた。
「凄いね。リウスは、まだ生まれて間もないのにあんなに戦えるなんて」
「はい、本当に凄いですよ。主である俺よりも、戦いのセンスはいいと思います」
俺よりもノアとの戦いで、いい感じに動けているリウスに対して俺は若干嫉妬しながらそう口にした。
リウスの成長は嬉しいけど、自分よりも先に行くのはちょっと悔しいな……いや! 負けてられないぞ!
「リウス。交代だ! 次は俺がやる」
そう気持ちを切り替えた俺は、丁度戦いが終わったタイミングでそう言って休憩を終わりにしてリウスと交代して、ノアとの戦いを始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます