第167話 【孵化・2】


 翌日、俺は息苦しさで目が覚めると、腹の上になにかが乗ってる感覚があり、目を開けるとそこにはなにやら丸まってる生き物が居た。


「……なんだこいつ?」


 その生き物を目で確認した俺は、理解が追い付かずそう口にするとその生き物は俺の言葉を聞いて体を動かした。

 そうして体の全体像が確認した俺は、もしかしてこいつあの卵から孵って奴なのかというのに考えが辿り着いた。


「師匠のは犬っぽい見た目だったけど、俺のはまた違う見た目だな」


「きゅ~」


「おっ、お前も眼が覚めたのか。ならそろそろ俺の腹から退いてくれるかな?」


 言葉を理解する能力はあるのか、腹に乗っていた生き物はその場から動いてくれた。

 そうして俺は体を起こして、改めてその生き物の姿を確認した。

 師匠の生き物は犬っぽい見た目だったが、俺の【無魂獣】はドラゴンの様な見た目だった。

 それと大きさも卵の大きさからは比べ物にもならない程大きな体をしていて、体長は約150㎝程有り、頑張ればフィオロなら乗せて飛べそうな程だった。

 というかこんな大きな奴が腹の上に乗ってたら、そりゃ息苦しさで起きてしまう。

 窓の外から見た感じ、まだ陽が昇り始めてるくらいの時間だ。


「んで、まあお前だけど……その見た目からして、ドラゴンっぽい能力が備わってるって思ったらいいのかな? 師匠もあまり【無魂獣】については教えてくれなかったからな……」


「きゅ、きゅ~!」


 悩みながらついそう口にすると、【無魂獣】はなにやらやる気に満ちた顔をしていたので、朝食まで時間があるから一先ず能力の確認をしようと空島へと移動した。


「っと、その前にお前のステータスを確認するか」


 そう考えは俺は【無魂獣】に対して、鑑定を使いステータスを確認した。


名 前:——

年 齢:0

種 族:無魂獣

身 分:従魔(主人:ジン)

性 別:雄

属 性:火・水・風・土・光


レベル:1

筋 力:7471

魔 力:7687

 運 :81


スキル:【火属性魔法:1】 【水属性魔法:1】【風属性魔法:1】

    【土属性魔法:1】 【光属性魔法:1】【空間魔法:1】

    【魔力強化:1】  【魔力探知:1】 【気配察知:1】

    【瞑想:1】    【魔力視:1】  【状態異常耐性:1】

固 有:【成長促進】【異空間ボックス】

能 力

称 号:ジンの従魔

加 護:魔法神の加護 


「……なんだこのステータス?」


 ステータスに関しては、レベル1の癖に既に二つとも7000オーバー。

 スキルも全部のスキルレベルが1だけど、数が異常な程あって固有能力も付いている。

 ってか、このステータス殆ど俺のと同じじゃないか?

 スキルに関しては、ドラゴンの体では使えない、というか要らないスキルは同じではないけど固有能力とかそのまんまだ。


「もしかして、魔力を通じて俺のステータスをパクっていたのか?」


 それだと色々と納得がいく、能力値に関しても今サッと自分の能力値を確認するとそのまんまだった。


「きゅ~!」


「……何とも言えないな、あれだけ頑張って来たのにお前はただ貰っただけでその能力を手にしてるって」


 魔力を与えた者のステータスをパクってるって事は、もしかして師匠のあの犬も相当強い奴なんじゃないか?

 あんな可愛い見た目してるのに、師匠と同等の力を持つ存在が居る事に気が付いた俺はブルッと体が震えた。


「師匠の【無魂獣】について今は考えるのを止めておこう……まずはお前の力を見せてもらいたいけど、やってくれるか?」


「きゅ!」


 俺のお願いに対して【無魂獣】は元気よく返事をすると、それから俺の自分の出来る事を披露してくれた。

 まず最初に見せてくれたのは魔法の力で、スキルレベル1の癖に魔力の能力値でスキルレベルが低いのをカバーしてるのか物凄い威力の魔法を放っていた。

 そして次にスピードだが、ドラゴンの見た目をしてるからそうだろうなと感じていたが背中の翼を広げ、物凄いスピードで空を飛び回った。


「魔法も物凄い強いし、移動速度も滅茶苦茶速いな……お前、本当に凄いな」


「きゅ~!」


 俺の所に戻って来た【無魂獣】に俺はそう言いながら撫でると、嬉しそうに尻尾を振って可愛らしく鳴いた。

 後、勿体ないなと感じるのはこいつの大きさ位だな。


「今の体より大きかったら、その背中に乗れたのにな……」


 そう俺はボソッと呟くと、その言葉を聞いていたのか【無魂獣】は「きゅ!」と返事をすると魔力を集め、その体が徐々に大きくなっていった。

 そして最終的には、スカイと同じ体の大きさまで大きくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る