第93話 【レーヴィンの魔法教室・1】
次に目を覚ました俺は、ふと窓の外を見ると陽が沈みかけているのが目に入った。
「うん、完全に寝てた……」
瞬時に俺は自分が予定していた時間よりも寝ていた事に気付き、ベッドから起き上がって部屋を出た。
そして食堂に向かうと、城の者達は夕食を食べていて俺もその中に入り夕食を食べた。
「ジン、起きて来たのか。ジンが起きたら、私の部屋に来て欲しいって姫様が言ってたぞ」
夕食を食べていると、顔見知りの兵士からそう言われた。
あ~、やっぱり姫様、会議の結果が気になってたか。
「ありがとうございます。後で向かいます」
兵士にそうお礼を言った俺は、目の前の料理を急いで食べて姫様の部屋に向かった。
そうして姫様の部屋に入った俺は、姫様に今日の会議の事を伝えた。
「成程ね。ある程度は聞いていたけど、そこまで酷い事になってたのね」
「俺もまさか、ここまで酷いとは思いませんでしたね。姫様と知り合って奇跡的に調査が始まったから良かったんですけど、これ調査されなかったら分からないままになってましたからね」
「そうね……ジンさんの事を見つけて良かったと、改めて今回の事を聞いて思ったわ」
正直、俺もラージニア家のやらかしは全てを覚えている訳では無かったから、今回の調査が行われて良かったと思っている。
会議で聞く限り、相当な事をやっていてよく3年後のあの時点までに隠蔽で来たなっていうレベルの物もいくつかあった。
「凄いねジン君の元家族の人達、これだけの事をしていて今まで隠せてたって……」
「ああ、俺も同じ事を思ってたよ。話し合い中にも、今までどうやって隠していたのか分からないって言ってたよ。まあ、なんだかんだあの家は侯爵で力もあるからな……」
「ええ、そうね。それにラージニア家と言えば、数多くいる貴族の中でも初期の方から国に仕えている家なのは周知の事実だから、そんな家がこんな事をしてるなんて誰も思ってなかったんでしょうね」
姫様はそう言いながら、疲れた表情で紅茶を飲み溜息を吐いた。
その後、この話題だと辛気臭いままになってしまうので、今日の学園はどうだったかの話題へと変える事にした。
「そうね。いつも通り、特に何も無かったわね。ああ、でもティアナが久しぶりに祖父に会えるから楽しみって言っていたわね」
「祖父って事は、レーヴィン様ですか?」
「ええ、レーヴィン様は基本的に領地で暮らしてるから、ティアナも会う事は少ないって言ってて会える事を凄く楽しみにしていたわね……って、どうしたのそんな顔をして」
レーヴィンの話になった俺は、寝る前の事を思いだして少し複雑な表情となった。
そしてそんな俺の顔に姫様は気づいて、なにかあったのか聞かれてレーヴィンと話した内容を伝えた。
「ジンさんを取り合って、リオンさんとレーヴィン様が争ったの?」
「私達が居ない時に凄い事が起きてたんだね……」
「いやもう本当に、勘弁してほしかった……」
二人のそんな反応に俺は、溜息を吐きながらそう言った。
「でもリオンさんに関して言えば、前からジン君に魔法を教えたいって言ってたもんね」
「ああ、一応のらりくらりと回避してリオンさんはそこまで強引に誘ってこなかったら良かったんだけど、レーヴィン様は若干強引でな……」
「レーヴィン様はそういう所があるのよね……私も昔、弟子にすると言われたけどお父様に止めないとお父様の事嫌いになるって脅して、なんとかなったのよね」
あの時は大変だったわ、と姫様は昔の事を思いだしながらそう話してくれた。
「それで、結局ジンさんはレーヴィン様の弟子になったの?」
「いえ、ユリウスさんみたいに弟子にはしないけど、アドバイスだけする形で収まりました。俺は誰かの弟子になるのは、今の所考えていないので」
「前もそんな事を言ってたわね。それって、やっぱりいつでもここから旅立てるようにって事かしら?」
「まあ、その理由が一番ですね。俺は冒険者ですから、いつかはこの地を離れる可能性もあります。その時、誰かとの繋がりがあると旅立ちがしにくいですからね」
と言ってるが、実際はただ主人公である勇者と関係が深まる者達とは出来るだけ離れていたいだけというのが本音。
助っ人キャラならまだいいけど、レーヴィンは助っ人キャラの中でも勇者を気に入ってほぼ師匠キャラのような立ち位置になっていた。
だから本当はアドバイザーとして残るのも嫌だったが、まああの選択が妥協点だったと今は思っている。
「あら、それじゃあクロエさんはどうするの? 確か、王都にご両親も居るわよね?」
「そこは大丈夫ですよ。お父さんとお母さんに話をしてて、許可貰ってるんです」
「あら、そうだったのね。羨ましいわ」
この二ヵ月の間、クロエともし旅に出ることになったらどうするという話をしていた。
元々クロエは俺が旅に出るなら付いて行くと考えていて、両親にその話をしたら俺となら何処にでも行ってくると良いと許可を貰っていた。
ただし数ヵ月に一度か、年に一度はギルドを通して手紙で生存確認くらいはするようにと言われたらしい。
俺としてはクロエの力は役立つ事は沢山あるし、今なら主人公との繋がり無いから付いてこれるなら付いてきて欲しいと思っていた。
なのでクロエが旅に同行できると聞いて俺は素直に感謝をクロエと、クロエのご両親に伝えた。
「私もその旅に一緒に行きたいわ、無理かしら?」
「無理ですね。確実に」
姫様の言葉にそう反射的に俺が答えると、姫様は拗ねた様子で「言ってみただけじゃない」と言い、頬を膨らませた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます