第94話 【レーヴィンの魔法教室・2】


 翌日、丁度学園が休みという事も有り、俺は早朝からレーヴィンに呼び出され訓練場へとやって来ていた。

 レーヴィンが魔法を教えるという噂は、前日には城内に噂が回っていて教えてもらいたい者達が集まり、大体訓練場にはいつもの倍近くの人が集まっていた。


「こんだけ弟子候補がいるなら、俺は要らないじゃないですか」


「数じゃない、才能じゃよ。儂はお主の才能に惹かれておるんじゃからの」


 そう満面の笑みを浮かべながらそういうレーヴィンだが、リオンが現れてムスッとした顔へと変わった。


「リオン、今日は儂が教えると言ったじゃろ」


「別に許可してません、それに父上と喧嘩しに来た訳ではありません。私もジンに魔法を教える為に来たんです。……それにまた問題を起こしたら、妻に怒られますからね」


 そうリオンは城の2階部分を見ながらそう言ったので、俺もその方向を見るとリオンとレーヴィンの奥さん達がこちらを見ていた。

 レーヴィンは自分も見られている事が分かると、リオンに向けていた敵意を消して仲を良さそうに見せる為にリオンと握手を交わした。

 尻に敷かれてる者同士、協力関係を結んだ様だな。


「それで結局、俺はどちらに教えてもらうんですか?」


「うむ、そうじゃな……ここはジンに決めてもらう方が、一番いい決め方じゃろう。そうじゃろ、リオン?」


「そうですね。それが一番公平ですね」


 レーヴィンとリオンはそう言うと、それぞれ自分達の教えようとしている事を教えてくれた。


「儂は攻撃特化の魔法を教えようと思っておる。今時の魔法は、形やら美しさを競っておるようじゃが、儂は実践向きの魔法を教えようと思っておる」


「父上はそうだと思いましたよ。私は以前にもお伝えした通り、魔力制御と魔法コントロールの上げ方を教えようと思っています」


「攻撃魔法訓練か、基礎の向上訓練ですか……だったら俺が今学ぶべき事は、攻撃特化の魔法ですね。現状、自分の魔力制御に自信が無い訳ではないので」


 熟考して決めた事をそう伝えると、レーヴィンは勝ち誇ったような顔をしてリオンは落ち込んでしまった。

 いやまあ、別にリオンの基礎訓練が嫌という訳ではないが、レーヴィンの教える攻撃魔法。

 これは弟子にならずに教えてもらえるなら、習得しておきたいと昨日寝る前に思っていた。


「ふふっ、ジンなら儂の攻撃魔法に惹かれると思っていたぞ!」


「レーヴィン様の魔法の伝説は色々と聞いてますからね。気にはなってましたよ」


「そうかそうか」


 レーヴィンは俺の言葉に嬉しそうに頷くと、リオンは悔しそうに自分が担当する者達を連れて別の場所へと移動した。

 そうしてレーヴィンに攻撃魔法を習う事になった俺は、まず最初にレーヴィンの魔法を学ぶ者達とレーヴィンの魔法を見る事になった。

 レーヴィン曰く、言葉だけでは伝わらないから、見て感じて実戦するというのがレーヴィン流の魔法の学び方だと言っていた。


「まあ、割と理解できるやり方だな、言葉だけでイメージは出来ないからな……」


 その教え方を聞いた俺は、割と理に適ったやり方だと思いながら、ゲームではどんな感じだったか思いだし、ハッとある事を思いだした。

 その瞬間、俺は出来るだけレーヴィンの視界から消えようと、魔力も薄めて周りの兵士に溶け込もうとした。

 しかし、俺が隠れる前にレーヴィンに「ジン、こっちに来るんじゃ」と呼ばれてしまった。


「……な、なんでしょうか?」


「うむ、儂の魔法は相手がいる方がより分かりやすいんじゃ、ジンなら多少儂の魔法に耐えれると思うじゃろうから相手になってくれんかの?」


「えっと、それって危なくないですか?」


「んっ? 魔法を覚えるのに、危険ではない方がおかしいと思うぞ?」


 真顔でそう言うレーヴィンに俺は溜息を吐き、「分かりました」と言ってレーヴィンの魔法の相手となる事になった。

 レーヴィンの魔法、それは基本的に攻撃魔法でそのどれもが強力な魔法。

 助っ人登場時、その強力な魔法で敵を一掃出来てレベル上げも凄く簡単になる。

 ただし逆に補助系統の魔法は得意ではない為、レーヴィン頼りで先へ先へと進むと後々痛い目にあったプレイヤーも数多くにいた。

 俺もその中の内の一人で、最初にレーヴィンを仲間にした際にその強さに使い続け、他の魔法職の仲間を育成出来てなくて詰んだ過去がある。


「お願いですから、威力は低めでお願いしますよ? 多少、防御は出来ますけどレーヴィン様の魔法を受けきるの、本当に辛いと思うんで」


「大丈夫じゃ、こう見えて儂は数多くの弟子を育てて来た実績があるからの手加減は得意じゃ!」


 そう自信満々に言うレーヴィンに対し、俺は心配に思いつつ覚悟を決めた。

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