第67話 【金塊の使い道・1】


 クロエの家から城に戻ってきた俺は、まずシャワーで汗や汚れを落とした。

 そして着替えた後、俺とクロエは姫様の所へと向かった。

 部屋に入ると姫様は「おかえりなさい」と俺達に言い、俺達「ただいま、帰りました」と言葉を返した。


「へぇ、こんな大きな金塊をゴーレムが落とすのね。凄いのね魔物って」


「まあ、この大きさは大分珍しいですけどね。俺達もこんな大きさ出るとは思って無くて、出た時は驚きましたよ」


 金塊の大きさは、狙って大きな物を出す事は不可能だ。

 ゲームでも色々試されてたが、結局狙って金塊の大きさは変える事は出来なかった。


「金塊ゴーレム以外は、何か珍しい魔物とかは出なかったの?」


「出ませんでしたね。出たら、姫様に良いお土産話も出来たんですげとね」


「そうね~、それはまた今度の楽しみに取っておく事にするわ」


 そう姫様は言うと、テーブルの上に置いてる金塊に視線をやった。


「所で、その金塊は私に見せる為に売らなかったの?」


「それもありますけど、ちょっと使い道があるんです」


「金塊の使い道? 魔道具でも作るの?」


「いえ、魔道具ではありません。まあ物と言えば物ですけど……姫様、今ここで知りたいですか?」


 これだけ大きな金塊の使い道があると知った姫様は、その使い道に興味を示していた。

 しかし、そんな姫様に俺は笑みを浮かべ、そう挑発気味に言った。

 その挑発に対して姫様は、少し驚いた顔をして直ぐに笑みを浮かべた。


「……その顔。相当、自信があるようね。今は教えなくてもいいわよ。ただし、その隠し事はちゃんと面白い事なのよね?」


「面白いとは約束できませんが、姫様が驚くのは目に見えてます」


「へ~、そこまで言っちゃうんだ。分かったわ、もしジン君のその金塊の使い道に驚いたら私がジン君にプレゼントを渡すわ」


 そう姫様は言うと、俺は「必ず驚かせますよ」と言ってその日の報告会は終わった。

 そして姫様の部屋を出ると、クロエが心配そうな顔をして「あんな事言ってよかったの?」と聞いて来た。


「大丈夫。姫様は必ず驚くよ」


「凄い自信だね……本当に大丈夫なの? さっき使い道聞いたけど、あんなので姫様が驚くとは思えないけど……」


「ふふっ、心配しなくて大丈夫だから、クロエも楽しみにしておくと良いよ」


 心配するクロエ対し俺はそう言って、部屋に入りベッドに横になった。

 そうして俺は明日が楽しみだなと、ワクワクしながら眠りについた。

 そして翌日、学園での護衛の仕事が終わり城に帰宅した俺は、一人で王都の商店街へと訪れていた。


「ここだな、ゲームで何度も通った店だから迷う事無かったな」


 シンシアの店同様、目的の店は路地裏にあり、記憶を頼りにやってくると店に到着した。

 店の名は、ガフカの工房。

 ガフカという家系が代々やってる鍛冶屋で、ゲームでは何度も世話になった。


「誰か、居ますか~」


 俺はそんな店の扉を叩き、そう叫んだ。

 すると中から一人の女性が現れ、俺を見ると睨んできた。


「ガキが来る場所じゃない。帰りな」


「……そのガキがあんたが欲しがってる物を持ってると言ってもか?」


 出て来て早々に喧嘩腰で文句を言われた俺は、彼女の言葉に合わせてそう言い返した。

 すると彼女は、更に目を細め「あたしが欲しい物だって?」と言いながら睨んできた。


「金塊ゴーレムが落とす特大サイズの金塊。あんた欲しがってるだろ? 何年も募集してるが依頼者が見つからず、困ってるんじゃないか?」


 そう言いながら俺は【異空間ボックス】から、特大サイズの金塊を取り出した。

 そしてその金塊を目にした彼女は、口をパクパクと動かし驚き固まった。


「まさか、こんな子供があのサイズの金塊を持ってくるとはね……まさか、どこかから盗んだ物じゃないよね?」


「安心しろ、あれは昨日俺が仲間と一緒に採って来た物だ」


「そうかい、それならいいけどよ……」


 彼女の名前は、リーザ・ガフカ。

 現ガフカの工房の店主であり、世界で5本指に入る鍛冶師。

 20代にしてその功績を持つ彼女は、多くの国や鍛冶屋からスカウトされたが全て断り、家業を継ぎ店をやっている。

 そんな彼女だが少し前から、あるアイテムが欲しくて店を休業にする事になった。

 そのアイテムこそ、俺がダンジョンで手に入れた最大サイズである〝特大級〟の金塊だ。

 もっと後で手に入れる予定だったが、まさかあのダンジョンで出るとは考えもしなかった。


「それにしても、金塊の事よく知っていたね。依頼書は大分前に取り消してたのに」


「パートナー登録していて、そのパートナーの人にどんな依頼があるのか聞いていたんですよ。その時、偶々リーザさんの依頼書を見つけたんです」


「成程ね。だから、一度取り消していたあたしの依頼書を知っていたのか」


 まあ、半分は嘘なんだけどな。

 実際はリーザの依頼があると確信していて、フィーネさんに依頼書について質問をしていた。

 というのも、リーザの依頼を完全にクリアするのは今から三年後の本編での話だ。

 本来は約三年後までこの依頼は誰も達成する事は無く、偶々主人公が特大サイズの金塊を手にしてその噂を聞きつけたリーザが買い取るという流れだ。


「しかし、まあ本物の特大サイズの金塊を目にするとは思いもしなかったよ……特大サイズの金塊が前に発見されたのは、何十年も前の事だから誰も持ってこないだろうとそんな気持ちもありながら依頼を出していたからね」


「運が良かったんです。それでどうしますか、金塊買います?」


「ああ、目の前にあるのに手を引くなんて考えられないからね……あんたが良いなら、買わせて欲しい。工房の進化の為にも、是非買わせてはくれないだろうか」


 改まって頭を下げ、慣れない言葉遣いでそう言うリーザに、俺は「良いですよ」と言い金塊をリーザに売る事にした。

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