第68話 【金塊の使い道・2】
そうして金塊の売却後、リーザは直ぐに金塊を使ったある物を作り始めた。
そのある物とは重要な道具の一つ、溶鉱炉の作成。
リーザはより良い物を作る為には、自分の腕の向上もそうだが溶鉱炉の改造が必要だと気付く。
そんな溶鉱炉の必要な素材に、特大サイズの金塊が必要だったリーザはずっと欲しがっていた。
「折角だから、ジンも見ていくかい? もう他の材料である程度は作っていて、金塊を設置するだけで完成なんだ」
「ああ、見ていくよ。まだ時間はあるからな」
そう言って俺はリーザと共に、店の奥への作業場へと移動して来た。
その作業場の奥に、一つだけ作りかけの溶鉱炉があった。
あれが金塊を手に入れないと作れない溶鉱炉か……。
「そこでちょっと待っててくれな、直ぐに終わるから」
確かゲームの質問コーナーで何故、溶鉱炉に特大サイズの金塊が必要なんですか? という質問がされていた。
俺もこの依頼を最初にクリアした際、溶鉱炉に何で金塊が必要なんだ? と思っていた。
なので開発者の答えに興味があり、その答えを今でも覚えている。
「特大サイズの金塊って、他の金塊とは違ってゴーレムの魔力を多く取り込んでいるんです。その力をリーザは、自分の考えた新しい溶鉱炉に使いたいと考えたんです」
それを聞いて俺は、納得した。
そもそも金塊ゴーレムの金塊は、普通の金塊と別のアイテムとして保管できる。
何故、そこを一緒にしないのか一瞬疑問に思ったが、言ってしまえば名前こそ似ているが、別物だと直ぐに理解した。
金塊ゴーレムの金塊は魔力を貯蔵されていて、普通の金はただの金。
そこを理解した俺はリーザが何故、金塊ゴーレムの金塊を欲しがっていたのか分かった。
「っし、出来た!」
頭の中で溶鉱炉について考え込んでいる間、リーザは作業をしていていつの間にか完成していた。
こんな短時間で出来るって事は、この当時から殆ど完成させていたんだな。
そう感心しながら、リーザの元へと向かった。
「それが金塊を使って作りたかったものか?」
「ああ、あたしが考えた最高の溶鉱炉だよ。早速、何か作りたいね……そうだジン、あんた何か作って欲しい物はあるか?」
「作って欲しい物か……あるぞ、滅茶苦茶欲しくてずっと我慢していた物が」
リーザの質問に俺はそう言い、自分が欲しい物を言った。
その欲しい物に対し、リーザは顔を顰めた。
「折角の新しい溶鉱炉なんだよ? 普通、剣とか盾とか防具とか、そういうのじゃないのか?」
「装備に関してはまた今度頼むとして、今はそれが欲しいんだよ」
「……まあ、あんたがそう言うなら良いけどさ」
渋々といった様子でリーザは、道具を取って来て俺が頼んだ物を作り始めた。
その様子を俺は椅子に座り、出来上がるのを楽しみに待った。
それから二時間後、リーザは立ち上がり「出来た」と発した。
「やっぱりあたしの考えは間違いなかったよ。こんな短時間で、もう出来ちまったよ。それに出来上がりも前よりも凄く良いね……凄い溶鉱炉を作っちまったよ」
リーザはそう言いながら、溶鉱炉を見上げ涙を浮かべた。
そして俺が居る事を思いだして、直ぐに涙を拭いて恥ずかしそうな顔をした。
それからリーザは、最後の仕上げとして手持ち部分に革で持ちやすく加工して、俺が頼んだものが完成した。
「これで出来上がりだよ。まさかあの溶鉱炉で初めて作るのが、これとはね……」
「別に良いだろ? 欲しかったんだから」
そう言ってリーザから受け取った頼んだ物、それは俺がずっと我慢して、クロエにも迷惑をかけた品、ツルハシだ。
何故ここまで俺がリーザのツルハシを欲しがっていたのか、それは他のツルハシとではリーザのツルハシが全く性能が違うからだ。
「しかし、本当によくできた。今まで何回か採掘道具も作って来たけど、これはこれまでの物より段違いで出来が良いね……」
「それだけ溶鉱炉が凄いんだろうよ。まっ、リーザの腕があってこそだろうけどな、見ていて感じたよ。あんな溶鉱炉、素人が使ったら逆に素材全部台無しにしてしまうだろ」
「よく見てるじゃない、ジンって言ったかしら? どうあたしの元で鍛冶の勉強してみる?」
「有難い話だけど、俺は作り手より使い手の方が合ってるから断らせてもらうよ。ただ今後はこの店を使わせてもらう事にするから、その時はよろしくな」
「あら、振られちまったね。まあ、これからよろしくね」
そう言って俺達は握手を交わし、今度は仲間と一緒に来るからといって店を出て城に帰宅した。
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