第39話 【任務へむけて・1】

 ユリウスの居なくなった後、少しして執事の人が慌てた様子でやって来た。


「姫、そろそろ王妃様とのお茶のお時間です」


「あら、もうそんな時間? 分かったわ、直ぐに行くから」


 執事さんの伝達に姫様はそう言うと、俺達に「そう言う訳だから、今日はこの辺で終わりにしましょうか」と言って本日のお役目は終わった。

 この間と同じく、馬車を用意してもらっていて俺達はそれぞれの宿まで送って貰った。


「……護衛用の道具、シンシアの所でちょっと買っておくか」


 依頼に必要な道具は用意すると言っていたが、念には念を入れて自分でも一応用意しておこう。

 そう考えた俺は、シンシアの店まで直行した。


「いらっしゃい、ジン君。久しぶりね」


 店に入るとシンシアは商品の陳列をしていて、入口から入った俺にそう挨拶をした。


「久しぶり、シンシア。まだ準備中だったか?」


「大丈夫よ。たださっきお客さんが買って行ったのを補充していただけだから、それで今日はどんな用できたの?」


「護衛に使えそうな物を買いに来た。今度、護衛任務を受ける事になって道具とか向こうで用意してくれると言ってくれたが、まあ用意しておいても悪くないと思ってな」


「成程ね。ジン君って用意周到だものね」


 シンシアはそうニコニコと笑みを浮かべながら、カウンターの方へと行き「気になった物があったら言ってね」と言った。


「さて、俺が気に入る商品はあるかな……」


 ゲームの時と店に並んでる商品は大分変ってるから、全部見て回らないと欲しい物を見つける事は出来なさそうだ。

 そう思いながら、俺は店の商品を一つずつ確認して回った。

 ゲーム時代との変わりように内心驚きつつ、ある程度見終わった俺は商品をカウンターへと持って行った。


「そんなに買うの? 一つ一つ、かなり高いわよ?」


「大丈夫だ。最近は依頼も頑張ったから金はある。それに万が一、依頼で失敗する方が冒険者として致命的だからな」


「成程ね。ジン君は本当に道具には惜しみなくお金を使うわね」


「金があるのに道具がショボくて仕事に支障が来る方が悪いからな」


 シンシアの言葉にそう言いながら、俺は商品の代金を払い、支払いが終わった品を【異空間ボックス】へと入れた。

 道具の調達も終わったし、帰るか。

 そう思って店から出ようとしたら、シンシアから「あっ、ちょっと待って!」と呼び止められた。


「危ない危ない、ジン君に伝えようと思っていたことがあったのよ。ちょっと、待ってて!」


 シンシアはそう言うと、店の奥へと走り去って行った。

 そして数分後、木の小箱を2つ持って戻って来た。


「前回来た時に、ダンジョンで使える魔道具がもっと欲しいって言ってたでしょ? 私の店に魔道具を卸してくれてる友達がそれを聞いて、用意してくれたのよ」


「マジかッ! 見てもいいか?」


 確かに前回、シンシアの店に来た際、帰り際に俺は「もっといろんな魔道具が欲しいな」とシンシアに言った。

 それはゲーム時代に使っていたアイテムが無く、シンシアに言えばもしかしたら用意してくれるか? と少し期待して伝えていた。

 だがまさか、本当に店のラインナップが増えるなんて思いもしなかったぞ!


「……なあ、シンシア。この小部屋ってのは、どういった物なんだ?」


「名前の通り、部屋を出す魔道具よ。空間魔法の魔法を使って、この部屋位の部屋をその魔道具内に収納して、いつでも出し入れ可能にした品って言ってたわよ。ただし、道具の限界ギリギリで作ってて家具は数点しかおけないのが欠点って言ってたわ」


 名前にピンッと来てもしやと思って聞いたが、やはりこれはゲーム時代にダンジョン探索時に重宝した〝テント〟の上位互換の魔道具か!

 ゲームだと〝どこでも小部屋〟という名前でシンシアの店に並んでいて、入荷と同時に購入していた程、重要な道具だった。


「それとセットって訳でもないんだけど、こっちの〝魔道具キッチン〟を購入するのを彼女は勧めてたわ」


 シンシアの言葉に俺は二つ目の箱に入ってる〝魔道具キッチン〟を見て、自分の財布の中を確認した。

 ヤバいな、流石にこんな高価な物は一人で購入は決められないな。


「なあ、シンシア。明日、クロエを連れてくるから、この魔道具達残しておいてくれないか? 俺の中ではほぼ購入確定何だが、パーティー資産じゃないと、どうしても買えそうにない」


「良いわよ。ジン君にはいつもお世話になってるし」


「助かる。ありがとな」


 そう俺はシンシアにお礼を言うと、店を出て宿に帰宅した。

 帰宅後、俺は夕食まで時間があるから、護衛任務をするなら装備の手入れをしておこうと思い。

 宿の庭に移動して、手入れ用の道具と装備を出し、夕食まで装備の手入れをする事にした。

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