第28話 【王家の判断・3】
翌日、ギルドに来るとフィーネさんから王城から使いの人が来てると言われ部屋に通された。
通された部屋には、黒色で統一された服装に身を包んだ長身の男性が立って待っていた。
……使いの者と聞いて、何となく想像したがやはりこの人が出て来たか。
「初めまして、ジン様。私は王家に仕えるゼフと申す者です」
「初めまして、ジンです」
ゼフ・フォン・レリイス。
王家に代々使える家系の一つで、主に〝雑用〟を担当している者達。
王家に仕える家系の中でも特殊な家系で、その実態を知る者は少なく謎に包まれているとゲームの中では一部の者達が噂していた。
俺はゲームの設定を見ている為、この人がどういった人物なのか知っている。
冷静沈着、常に落ち着いた人物。
表の王の補佐は大臣であるベルトス様、裏の補佐をそのゼフが担当している。
「王家の使いの方が何故、ギルドに来たのですか? 今日の予定では、姫様の所に行く予定はありませんでしたが」
「はい、そちらに関しての事ではなくジン様の元ご実家に関しての報告を王より伝える様に命じられ来ました」
ゼフはそう言うと、異空間から資料を取り出した。
「昨日、あの後王より〝ラージニア家を調べろ〟と命じられ、ある程度の事は調べてきましたが。私共でも判断できない箇所があり、そこをジン様にお聞きしようと思いお時間を頂きました」
「……王様はラージニア家をどうする考えなんですか?」
「今の所は、どうしようと言う事は考えておりません。ただ今後の調査結果で取り潰しも考えているとは仰っていました」
「分かりました。そこまで言われて協力しないとは言えません、俺が知ってる事は何でも話します」
王様の考えを聞いた俺はゼフに対してそう言って、ゼフからの質問を淡々と答えて行った。
その途中、俺は大きく物語が変わったなと思った。
ラージニア家は本編でジンへの行いを注意された事はあっても、王様からこのように調べられることは無かった。
ジンの母にした事も結局、ジンが調べて分かった事で毒薬を使ったなどは主人公達側は一切知らなかった。
だが今回、俺との話し合いでその点も俺はゼフに話をした。
もしかしたら、本編が始まる前にラージニア家は消える可能性も出て来た。
「……ジン様、本日お話した事は真実でしょうか?」
「真実ですよ。母の死体は既に処理されて調べる事は出来ませんが、証拠となる物は多分まだ残っていると思います」
ゲームでは見た事が無かった驚くゼフの顔に、俺は少し感動しながらそう言った。
証拠品として、家から追い出される間に手に入れた母が飲まされていた毒薬を俺は取り出して机の上に出した。
「一応、こちらが母が飲まされていた毒になります」
ゼフはその毒薬を見ると、ハッとした顔をするとその毒薬を異空間へと入れた。
その後、ゼフは「また後日、この件について報告に参ります」と言って部屋から出ていき、俺はフィーネさんの所へ話し合いが終わった事を伝えに向かった。
「ジン君、王家の人と何を話してたの?」
「ああ、俺の元実家についてだよ。俺の追い出された理由とか他にも色々とあって、再度調べる為に話を聞きに来たらしい」
「そうだったんだ。いい結果が返ってくるといいね」
「まあ、俺的にはもうどうでもいいんだけどな」
そう言った後、今日の予定についての話し合いを始めた。
「装備に関して、ジンさんとクロエさんは相当良い物を着けていますのでそのままでも大丈夫だと思いますね」
「そこら辺も考えて最初から良い物を使ってます。クロエに関しては、直ぐに装備を変えさせましたからね。良い物を使って、それに慣れてた方が後々良いですからね」
そう俺が言うと、その言葉にフィーネさんは「確かに、その方が安全面は高いですね」と言った。
「装備に関しては大丈夫ですが、薬品などの準備はどうでしょうか? 迷宮内は突然襲われたりするので、万が一の時の為の回復薬など準備していた方が安全です」
「そこに関しては前々から用意してまして、シンシアの店で回復薬系は揃えています。一応、一部ですかこんな物を用意しています」
回復薬系のアイテムを異空間から一部取り出して、俺は机の上に置いた。
「……流石、ジンさんとクロエさんですね。普通の冒険者様より考えられたアイテムの品々ですね」
「ここまで揃えてる冒険者様は、あまり居ません。流石ですね」
並べられたアイテムを見たフィーネさんとリコラさんは、そう俺達を褒める言葉を口にした。
その褒め言葉に俺は少し嬉しく感じ、クロエもニコニコと笑みを浮かべていた。
その後、話し合いで俺達の準備が完璧だと判断された俺達は許可が下り、王都から一番近い迷宮へと向かう馬車を用意してもらった。
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